第7話

 次にゴブリンの大群が現れた。

 ひと目見て冷は全匹倒せると判断した。

 全匹倒すのは簡単だが、ここはあえて試してみようとひらめいた。


(2人に戦いの経験を積ませるいいチャンスだな)


「アリエル、リリスよ。今度は大群が来てる。俺と一緒に戦ってみるんだ。出来る範囲でいい、やってみな」


「わかったわ、出来る限りやってみます」


 アリエルは遂に覚悟を決める。

 持っている武器は杖であり、構えてみせた。

 聖なる光を発して神々しさに包まれた。


「よしいいぞアリエル。次はリリスも出来るだろ」


「こうなったら私も剣を出すとするか。アリエルにだけ戦わせるのも気が引けるしな」


 リリスもゴブリンが迫るのを前に魔剣を構える。

 その姿は紛れもなく魔族のオーラが発散された。

 アリエルはゴブリンに向かい杖で応戦。

 そこらの魔物との違いを見せつける必要がある。

 聖なる力でゴブリンを叩きつけると、見事に打撃はヒットした。

 しかしゴブリンはダメージがみられない。

 あっさりと反撃されて何度も逆に殴られる。

 理由としては攻撃力が1しかない。

 ゴブリンにとっては撫でられてるようなものであった。

 痛くもないし、むしろ反撃を食らう。

 それでもアリエルは体力と防御力は桁違いの高い数値を持つから死ぬことはない。

 

(大丈夫かアリエルは。やられっぱなしだな)


 もう1人のリリスも同じくゴブリンへ突進。

 魔剣とゴブリンの持つ武器が激しく重なる。

 1匹は見事に倒せた。

 だが次のゴブリンには逆にやられた。

 体力も防御力もないリリスは、僅かな攻撃でもダメージが大きいのだった。


(リリスは攻撃して倒せるな。でも直ぐにバテたか。鍛えが足りないんだな)


 2人だけに任せると無理なのが判明した。

 この状況だけ見ただけで冷は2人の能力がある程度見抜けた。

 それは豊富な経験がある冷だから見抜けたのであり、冷が突入してゴブリンの大群を相手にすることに。

 

(俺のスキルになったオメガランサーを使ってみるか。どうなるかな)


 習得したスキルを実戦で試そうと思い至った。

 やや遠目から手をかざしゴブリン目掛けて放つ。


「オメガランサー!!」


 隕石が光を発して現れる。

 ゴブリンの群れに向かって放たれた。

 地面に爆裂音が響き渡る。

 音と同時にゴブリンの群れは吹き飛んだ。

 砂ぼこりが舞う地。

 砂が消えるとゴブリンの死体の山であった。

 冷はこの結果には大変な満足度でいっぱいになる。


(実戦でも十分に威力を発揮するな。壊滅って感じだし)


 だが満足度と言う点では、そうは言ってられない者もいた。

 

「ち、ちょっと私まで殺す気?」


 アリエルが土まみれで怒り気味に言った。


「わ、悪かった。力をセーブして放ったつもりでもこの威力でして。申し訳ございません」


「お前に殺す気なくても死ぬ寸前だったぞ。次は気をつけてくれよな!」


「すまんです」


 ここは素直に謝る冷。

 それから合計すると20匹ものゴブリンを倒して素材を収集するのに成功した。

 もちろん冷は体に傷一つついてはいなく、むしろウォーミングアップ程度であったため物足りない感じであった。



柳生 冷


性別 男

種族 人族


ユニークスキル スキルストレージ 


職業 無職狂戦士バーサーカー

レベル401←100アップ


体力  809←500アップ

攻撃力 809←500アップ

防御力 809←500アップ

魔力  809←500アップ

精神力 809←500アップ

素早さ 809←500アップ


剣術レベル 299←100アップ

柔術レベル 299←100アップ

槍術レベル 299←100アップ

弓術レベル 299←100アップ

斧術レベル 299←100アップ



睡魔封じを覚えました。


[睡魔封じ]

眠りを誘う魔法に抵抗する


 新たにスキルを覚えているのを知り試したくなる冷は、クエストがしたくてうずうずしている。


(おっ、またスキルを覚えたようだぞ。きっとゴブリンを倒してる最中に覚えたんだな)


 ゴブリンを討伐し無職狂戦士のレベルが変化した。

 今回もインフレーションステータスの影響でとんでもないステータスの数値の上昇があったのを冷は確認する。

 

(うわあ、これが俺なのか。凄まじい勢いで上がっていくぞ!)


 実際に剣術などのレベルは達人をも通り越し人族の域を超えてしまった。

 すでにクエストランク1どころの数値ではない。

 どこまで上がるのか、また上限があるのかわからない冷は、自分でも驚くしかなかった。


 ギルドに帰り収集した素材をマリに交換しに行くことにした。


「そろそろ素材を入れる袋が一杯。なにせ生まれて初めてだから収集は」


 アリエルが重そうにして言った。

 

「ピルトの町に帰るとするか。これ以上は持てないだろうから、俺はまだまだやれるけどな」


 20匹分の素材はかなりの重量であり、普通はこんなに大量に集めることはないが、クエストランク1はあっという間であった。

 再び冒険者ギルドに立ち寄ると女性店員ユズハが待っていた。


「冷さん、お帰りなさい。初めてのクエストですから1匹でも成功と言えます。それにゴブリンの素材は1匹でも交換しますよ」


「20匹分あると思う。見てください」


「えっ、20匹分? こんな短時間でしかも無職なのに無理ですよそれは……あれ、20匹分ありますね。どうやって収集したの?」


 不思議で冷を見つめて質問した。


「ランク1じゃ弱すぎて準備運動にもならないさ」


「し、し、し、し、信じられないですがマリと交換します。20匹で2万マリですどうぞ。こんなことがあるなんて……」


 冷のことを単なる無職だと思っているユズハには到てい理解できない。

 冷のステータス数値を見れれば納得するのだが、もし見たらかえって衝撃を受けるので見ない方が懸命と言えた。

 アリエルとリリスのステータス数値の変化はなかった。

 ほとんど活躍してないからである。


「ありがとう。また明日も来ますんで」


「お、お待ちしております」


 2万マリ手に取りギルドを出ると、店員の女性ユズハはぼう然となった。

 どうやって短時間で収集出来たのか理解できないからで、高ランクの冒険者くらいの時間で戻って来たのは驚くしかなかった。

 金が入り気を良くした冷達は食事を取りお腹いっぱい食べた。

 3人分の料金は支払ったが大した金額ではなく心配はなかった。

 アリエルとリリスも満足した様子であるから、先ほどの収集させたストレスは消えて冷はホッとしていたのである。


(食べて笑顔が戻ってくれたようだな。ただし今後は考えないといけない。今のままではとても戦力にはならないからな。どうしたらいいものか。こうなったら最後の手段だ。俺が彼女達を鍛えて強くしてやろうかな)


 この時に冷は2人を鍛えて強くさせることを思いついた。

 これが冷にとっては、とてつもない受難であることは、まだ知る由もなかった。


「心配なのが宿屋よね。野宿するのは勘弁して。一応女神ですから」


「女神だと野宿はダメなのか?」


「女性ですから私は、当然です」


「はいはい女神様さがしますよ。ご飯も食べたことだし」


 町をうろつくと直ぐに宿屋を発見し中に入った。

 町並みは中世ヨーロッパ風である。

 よくファンタジーなゲームで見かける雰囲気そのままだ。

 店内には女性が立っていた。



[エクセリア]

性別 女

種族 人族

職業 宿屋店員




「いらっしゃいここは宿屋です。3名様ですね、1泊にしますか」


「い、い、1泊にする」


 女の子と宿屋に泊まるなどのシチュエーションは経験がなかった冷は緊張して言葉に詰まっていた。

 最強の武道家も女の子との接触はゼロであるし、おどおどするのは格好悪いし、とにかく部屋に向かうことに。

 

「3人分が用意されてる!!」


 リリスは部屋の中をみて喜びの声を出す。


「私はリリスと違って女神だから本来は城で寝泊まりすべきなの。ちょっと狭いかな」


「女神とかいっても地上じゃただの女の子だろ。我慢するんだな」


「嫌よ。狭い部屋なんて最悪」


「お前は転生の場で、贅沢な生活し過ぎだったんだよ。魔族の私からしたら、明るくていいもんだ」


「魔族だとどう違うの?」


「もっと全体的に黒くて暗い感じだった。それに毒ヘビをペットにしてた」


「嫌よそんな部屋。魔族じゃなくて良かったわ。冷はどんな部屋だったの日本ではさ?」


「日本て? 聞いたことがない地名だな。この地方ではないだろう」


 アリエルが日本ていう地名を言うとリリスは知らないのだった。


「リリスは知らないのは当然だ。日本はこの世界ではない。まあ簡単に言うと異世界だな。俺は日本と言う国で生まれて生きてきた。ある事で死んでしまいアリエルにこの世界に連れて来られたわけだ。ザックリ言うと魔王を倒せ、てことなんだけど。日本じゃ広いくらいだよこの部屋は。なにせ日本は国土が狭くて家も狭いので有名な国だったんだ。だから俺的には満足だ」


「ええっ! 異世界から来たのかお前は! 異世界転生って奴か。話には聞いたことがある。歴史上でも異世界転生で来た者が存在すると。そしてその中でも魔人や魔王並の強さを持つと。お前のあの強さの原因はそれが理由か。これで納得したよ私が負けたのは冷が転生者だからなんだと。私が負けたのも当然の結果だな」


 リリスは冷が転生者だと知り驚く。


「俺だけか。確かゴブリンにも負けただろうリリスは」


「ええっとそうだったけかな」


 ごまかそうとするリリス。


「アリエルには狭いのかもしれないが、今は我慢してくれ。個室があるだけ良いだろう」


「う〜ん我慢する」


 冷が料金を払った部屋はベッドがあり、3人が暮らすには問題はない広さであろう。


(アリエルはどんだけ贅沢な生活してたんだ)


「みんな3人で一緒に寝ればいいさ、そうだろ?」


「お前な、私と一緒に寝ようなんざ、いやらしいことでも考えてんだろ。お前は自分のベッドに寝ろよな!」


 リリスは冷と寝るのを完全拒否する。


「い、いやらしい事って、ま、まさかアレかな。無理無理無理よ絶対に」


 なぜか急に顔を赤らめるアリエル。

 冷の誘いを2人とも拒んだ形になったからには、奥の手を用意していた。


「どうしても俺と寝るのを断ると言うのかい?」


「お前と寝るなんて私をみくびるな!」


「い、い、い、嫌です」


「それならば、これでどうだ!!!!」


 嫌がる二人を前にニヤリと笑みを浮かべる。

 冷は2人の服を掴んだ。

 スパッと体からはぎ取ったのだった。


(どうなるかな)


「お前な、魔族であるこのリリスの裸を見せろと言うのか。そんなに地獄へ行きた…………」


「わ、私は女神よ。人族に裸を見せるわけな…………」


「おおお!!!!」


 二人とも簡単に服を脱いでしまったので、冷は思わず叫んでしまったのだ。

 リリスの体は褐色であり胸ははち切れそうである。

 アリエルの裸はと言うと、リリスと反対に肌は真っ白である。

 

(うわあ、こりゃすげぇぞ)


 歴史上で初めての快挙が起こった。

 人族の前で神族の者が裸で立たされるという事態は、いまだかつて一度もない事態であり、許される範囲をとうに超えていた。

 しかも冷のやりすぎはここで終わらない。


「よーし。服を脱ぐのは出来たな。次は……」


「次はだと!」


「俺と一緒にベッドに寝るんだ!!」


「お前な、やりすぎにも程があるぞ!」


「そうですわ、身分をわきまえなさい!」


 しかし超人的な速さで2人をベッドに連れこんでいた。

 冷を真ん中に右にアリエル、左にリリスが挟むような形でベッドインしたのである。

 さすがの冷もこの攻撃には参ったと言うしかない。

 最強の武道家も女の子に挟まれる攻撃には弱かったにであり、それからは朝まで楽しんだのは言うまでもない。


(一兆個ある中で最悪の異世界って言われて来たけど、こりゃ最高だぞ〜〜〜〜〜〜〜)


 翌朝になると冷はぐっすり寝ていた。

 朝まで楽しんだからであり、アリエルとリリスはその横でダウンしていた。

 いくら女神だ魔族だといっても最強の武道家の体力はその遥か上をいっていたのだった。

 予想外の体力に疲れ果てる二人を無理矢理起こすことなく冷は起き上がる。

 今日の予定を考えていた。

 クエストをするのが一番いいと思うのは、宿屋にしろ飯を食うにしろマリが必要となるからで、マリを集めるにはクエストしかないのだ。

 それに2人に戦闘経験を積ませるのもあった。

 

 少ししてアリエルとリリスが目を覚まし起きてきたのだが、二人とも胸を露出しており、冷が注意する。


「アリエル、リリス、いい胸してるな」


「えっ! ち、ちょっと冷、見ないでよもう」


 アリエルは恥ずかしそうに胸を両手で隠す。


「お、お前なあ、なに見てんだよ、あっち向けよ!」


 リリスは強がって言ってみせるが、直ぐに衣服を着てしまった。

 二人とも嫌がる素振りをしてはいるが、冷に可愛がられてしまったことに恥じらいはなかった。

 むしろ驚いていると言った方が正しい。

 冷は人族ではあるが最強の肉体を持ち魔物を簡単に倒せるわけで、その肉体にはさすがに神族も驚愕したのであった。

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