第4話

 転生して最初の大きな戦い。

 リザードマンの死体から去ろうとした時にリリスが引き止めてきた。


「お前、ここでは生きていくには金が必要なのはわかるよな」


「そりゃ金は必要だよ」


 ニートでもあった日本でもそれで大変に苦労したからわかっている。


「リザードマンが身に着けている物をぶん取ったら金になるだろう」


「なるほどな。死んだのだから取っても問題ないんだ」


 リザードマンは武器や防具を身に着けているので、冷は遠慮なく剥ぎ取った。


「冷が身に着けてみたらどう? 今着てるのって冒険者っぽくないし」


 アリエルが冷に着ることを勧める。

 冷が着ていた服は日本にいた時に着ていたカジュアルな衣服であり、確かに冒険にはとても向いてはいなかった。

 金も無くいつも同じ服を着ていたので汚れている。

 

「よし着てみよう」


[皮の鎧]

皮で作られた鎧。防御力は低いが軽くて動きやすい


[皮の靴]

皮で作られた靴。歩いていても軽くて疲れにくい


(おお! なんか冒険者って感じするぞ)


 冷は鎧と靴を装備した。

 僅かであるが防御力が上昇していたのだが、すでに柳生流の武道術において防御力は鍛えられてるため、ほとんど無視していい数値であった。


「魔物や魔人を倒すことによってお金は貯まる。私は最低レベルまで落ちてしまったので冷に頼るようだわ。だが気を付けてほしいのは魔物、魔人が生息している。魔人は魔物から派生してて特に要注意よ。今のはラッキーなことに最弱なリザードマンであったから助かったけど、他の魔人はというと尋常じゃないのもいる。さらに魔人が派生し魔王となると世界を破滅させる力を有するの。だから魔王とは接触を避けることね。死にたくなければ」


 アリエルが勝って余裕ぶってる冷に釘をさす様に言う。

 とても魔人が恐ろしいと知ってほしかったから。


「この程度の魔人なら楽勝、楽勝」


 それでも冷は笑って怖がる素振りもないのだが。


「それ程の武道術をどこで覚えた?」


 リリスが不可思議に思ったのは、リザードマンを倒した時の身のこなしであった。

 

「俺は死ぬ前に親父から柳生家に伝わる武道術を叩き込まれたから、そこらの魔物なら怖くない。リリスも俺を頼っていいぞ」


「まあ、仕方ない。お前がそう言うのだから、そう言うことにしてやろう。以後もお前が戦えばいい」


 リリスは偉そうに言いのけた。


「あなたも魔族なんでしょ。戦いは得意なはずよね。それとも魔族なのに魔物とか怖いとか?」


 疑問を持ったアリエルが言った。


「な、なにを言うか! 魔物が怖いわけないだろうが。冷が戦いたいから、思う存分戦わせてやると言っておるのだよ。私が魔物を怖がることなどあり得ない。魔族なのだしな」


「それならいいけど」


「そう言うアリエルはどうなのだ。リザードマンをみても手を出す気配は全くなかったが。これでは仲間なのかわからないではないか?」


「うっ……私は神族であるからにして、戦いたい気持ちを抑えてあるの今は。その内魔物を倒してみせよう」


「それは楽しみじゃな」


 リリスは不敵な笑みを浮かべてアリエルを見る。


リリス

性別 女

種族 魔族

職業 淫魔レベル10


体力  10

防御力 10

魔力  100

精神力 10

素早さ 10


 リリスのステータスはそれ程高くはなかった。

 それもあって冒険者ルーキーを狙い打ちしていたのである。

 中級クラスの経験を積んだ冒険者だとまともに戦えないのはわかっていたのだが、冷の様な冒険者ルーキーの枠を超えた者に出会ったのが運の無さである。

 しかしリリスの正体は魔族となっていたが、この後に冷とアリエルは正体を知り驚くことになるのであった。

 こうして冷は異世界に来てアリエルとリリスの2人と仲間となり冒険を始めることになった。


「あのね、これからのことなんだけど、最初は町に行くのがいいでしょ。町なら宿屋もあるだろうし、飲食店も揃ってるはず。生きていくのに必要な物は町に行けば足りると思うのよね」


 アリエルが今後の予定として、町に行くことを提案した。

 最初に行く所としては町は賢明といえよう。

 野宿するのもありだが、さすがに女の子2人もいて野宿はないだろう。

 いきなり仲間は分裂して終わりとなるのが目に見えている。

 

「そうだな、アリエルの言うように町を目指そう。俺もこの世界のことをもっと知りたいしな。町なら情報も入りやすいだろうから」


 冷も直ぐに賛同して出発することに。


「お前は町を知らないわけか?」


「そうだよ。ここに転生して直ぐにリリスと会ったんだから」


「そうだったのか。町なら私が知っている。案内しよう」


 リリスはこの周辺の情報は持っていた。

 どこに町があって、どれだけ冒険者がいるかは把握しており、その点では最初にリリスを仲間としたのは、ラッキーと言えた。


「それではまだお前は冒険者登録をしていないのだな。普通は最初に登録してから冒険に出るのが常識なんだけど」


「冒険者登録など知らない。必要なのかその登録は。金を払ったり取られたりするなら俺は入らないぜ。そういうの嫌いなんだよな俺は」


「金を取られることはない。逆だ。むしろ金をもらえると思っていい。冒険者は登録をしておくと魔物を倒していくとご褒美に金をもらえるって仕組みさ。冒険者はそうやって生活していってる。だから冷も登録したらいい」


「なるほど、登録しておけば金をもらえるのか。それは重要な情報だ。さっそく登録しておこう」


「やけに詳しいわねリリスは。それもそうよね冒険者を狙って金を奪っていたのでしょうから?」


「な、何を言ってるのだアリエル。それはお前の勝手な決めつけだ。だから町では私の事を黙って置くのだぞ、いいな」  


「わかったわよ」


 リリスは慌てて冒険者を襲っていた事実を否定したが、リリスに会った最初のセリフはどう聞いても盗賊まがいなセリフであったが。

 冒険者の登録をリリスから説明されて、町を探す冷達であった。

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