第3話
森の中は至って静かであった。
アリエルという神の女の子を除いて。
時間が経っても、冷への悪口は止まること知らない。
冷は軽はずみでしてしまった行為がこんな大事になるとは予想外であったが、考えてもしょうがないので忘れることにした。
少しして森の中の草木がガサっと揺れる音がした。
(誰かいるな。それも複数人いるぞ)
武道家の察知能力が作動した。
冷はいつなん時でも近づく者の気配を察知できる、察知能力を有していた。
幼い頃から寝ていても人の気配を感じるように訓練されていたからである。
アリエルは全く気づかないでいた。
「おい、誰かいるぞ……」
リリスはようやく気がつく。
「魔物かも」
草木から現れたのはアリエルの予想通り魔物であった。
だが単なる魔物ではなく、会話能力をもち知能を有する魔人であった。
魔人の中でも最も弱い魔人であって冷達は運悪く、転生して早くも魔人と遭遇してしまった。
その姿はトカゲ人間のようであり、狙い撃つように立っていた。
(うわぁ、トカゲが直立歩行してるぞ。気持ち悪いなぁ)
トカゲはリザードマンであった。
五匹で囲い込み冷達を捕らえる計画を持っていた。
五匹のリーダーが冷を見定める。
冷が異世界に来た時から臭いを嗅ぎつけて来たのであった。
魔人だけに嗅覚は人の何倍もの嗅覚を有していた。
見つけた獲物はたいていは、食ってしまうか女なら売買して金に代えて儲けるのが、日常であった。
「3人か。余裕だぜ。いい獲物を見つけたもんだ。今日はついてるぜ。ヒヒヒ」
「リーダー、しかも2人は女ですぜ。それもとびきりいい女ですぜ」
「捕えたら楽しめそうだぜ」
リザードマンは五匹で冷を取り囲んだ。
既に勝った気でいて、アリエルを捕え、その後の事を考え不適な笑みを浮かべる。
「まずは男を殺せばいい。殺っちまえ!」
リーダーの合図で部下の4匹がいっせいに冷めがけて襲ってきた。
「ヤバイぞ。魔物じゃないぞ。魔人だなこいつら。魔人リザードマンが襲ってきたぞ冷!」
「アリエルは後ろに下がってな。俺がひとりで倒すから」
「何を言ってんだ。あなたの実力じゃ無理よ冷。ここは逃げよう!」
冷に逃げようと言うも、冷は無視した。
それどころかリザードマンと戦う為にアリエルに貰ったナギナタを構える。
冷は生まれて初めての魔人との戦いである。
数は4匹もいるが、冷にはそんなのは少ない方であり、今まで世界最強の武道家と呼ばれるまで何度も経験してきたのである。
柳生流の武道術では相手が複数人いても戦える術をあみ出していた。
もちろんその術を体得しており、慌てることはなかった。
余裕で襲ってきた相手にナギナタでリザードマンの頭、肩、腰と次々と打ち放ち、気がつくと4匹は倒れて苦しんでいる。
「ぐわぁーーーー」
「何だこいつ強えーーー」
痛みでのたうち回る4匹を眺める冷はまったくの無傷である。
ほんの一瞬の出来事であった。
(見た目は強そうだけど、めっちゃ弱いな)
「なに今の! お前はハンパない強いんじゃない」
リリスは魔人相手でも冷の強さに驚きを発した。
「でもまだ一匹いる。頼む冷!」
「おれに任せな。女神ちゃん」
驚いたアリエルであるが柳生流の武道術ならばこの程度は朝飯前である。
その凄さを見たリーダーは、怖気づくしかなかった。
「キサマは何者だ! 単なる冒険者のはず。あり得ないこの強さは!」
「相手が悪かったな!!」
「ぐわぁーーーー」
結局は冷が5匹とも殺してしまった。
人間なら殺さずに済ませるのだが、魔物だし気味が悪い姿をしているのでひと思いに殺してしまったのである。
アリエルからの神物想像のナギナタの威力もあった。
冷は気づいていないがこの世界でも最高位のランクに属する武器でもあった。
「よ、よ、よくやった冷。褒めてやろう」
リリスは殺されると思っていたが、冷が勝ってしまいホッとしていた。
「こんなの余裕だよ。これが最悪の異世界ならな」
「とても強いので驚きました。助かりましたし。冷がいればとりあえず生きていけそうだわ」
アリエルは胸をなでおろした。
「つうか、弱すぎだし。俺の相手じゃないな」
柳生 冷
性別 男
種族 人族
称号
ユニークスキル
スキルストレージ
職業 無職狂戦士[バーサーカー]
レベル301←200アップ
体力 309←200アップ
攻撃力 309←200アップ
防御力 309←200アップ
魔力 309←200アップ
精神力 309←200アップ
素早さ 309←200アップ
剣術レベル199←100アップ
柔術レベル199←100アップ
槍術レベル199←100アップ
弓術レベル199←100アップ
斧術レベル199←100アップ
無職狂戦士バーサーカーのレベルが大幅に上がったのを確認する。
本人でも考えられない上昇した数値。
驚異的な速度で上昇していくので冷も驚くしかない。
(こんなに上がっていいのか)
邪眼を覚えました。
オメガランサーを覚えました。
[邪眼]
相手のステータスを閲覧する。邪眼を封じる方法もある
[オメガランサー]
破壊的な突きで敵を全滅させる。
スキルストレージが発動して新しいスキルを習得したのだった。
「無職狂戦士バーサーカーがレベル301にアップしたぞ。邪眼とオメガランサーを覚えたようだ」
オメガランサーは攻撃スキルでは高ランクに位置する破壊力のあるスキルであり、リザードマン程度なら下級魔人として扱われているが、オメガランサーを喰らえば例え上級ランクの冒険者とはいえど命はない程の威力を持っている。
「リザードマンを倒した。魔人だから大幅に上がった。邪眼てのは相手のステータスを見れる能力。最初に覚えられたのはラッキーです」
下級魔人を倒して驚くアリエル。
「2つも習得出来たぜ」
「スキルストレージは覚えだすと強力になっていくのが特徴ね。スキル欄に表示されていたでしょ」
冷のスキルストレージが早速発揮した。
幼い頃から洞察力を限界まで鍛えに鍛えにられたおかげでもあり、冷だからこそできる技である。
(この調子でどんどんと覚えていくぞ)
最強の武道術と最高位のナギナタを持ち、更に相手からスキルを学習していく冷は、今の時点で異世界ではルーキーであるが、魔物を圧倒する実力者となりつつあるのだった。
ここはあの最悪の地であり簡単に生き抜けるわけではない。
冷の活躍で喜ぶようにしてジャンプするアリエルとリリス。
2人は冷がいれば生きていけると喜ぶと冷も大いに喜んだ。
冷の喜びのポイントはアリエルとリリスとは違っていて、リザードマンを倒しても嬉しくもなかった。
蚊を殺すのと同じくらいであり、ウザイと言ったほうが合っていた。
その冷の喜びのポイントはというと。
(うわぁ、大きな胸が上下に揺れてるぞ〜〜)
とリザードマンではなくリリスの胸であった。
歴史上にもかっていない偉大なる能力を授かりながらも、考えてることは女の子と胸である。
世界最強の武道家の家系に生まれた冷、冷の先祖達が見たら何と言うだろうか。
情けないと頭を抱えるであろう。
「お前のスキル、スキルストレージってのは便利なものだな。倒せば倒すほどに強くなる仕組みなわけだ」
「その通り。俺は武術に精通してて新しいスキルを覚えることには大変に興味がある。俺に相応しいスキルだろう。では試してみよう」
早速ではあるがオメガランサーを試してみようとおもった。
誰も魔物がいない所に放ってみる。
「オメガランサー!!」
冷は手から強烈な光が立ち込めていき、巨大な光の塊、まるで隕石のような大きさ、が作られて森の中に飛ばした。
大爆発と説明したらいいだろうか、冷は自分で放ってみて衝撃の大きさに驚いて、腰を抜かしそうになった。
「うわぁ! 森が燃えちゃった」
「何これは? デッカイ穴があいてるぞ!」
「これはヤバいスキルを手に入れたもんだぜ」
森は冷のはるか先に巨大な穴、まるで隕石が落下したような形が生まれていて、アリエルとリリスも凄い威力にぼう然となっていた。
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