第2話
スキルと職業が決まり冷の気持ちは固まっていた。
「超絶ウルトラレアなスキルストレージの能力者。それでも即死しかねない。それが最悪の地よ。お願いしなんだけど、命の保証はないからね。今までに何百人と転生させてほぼ全滅、死んでしまった」
あえてアリエルは意地悪く言った。
なぜならアリエルが言う理由には異世界がとても危険な魔王や魔人がいるからである。
例えスキルストレージを持ってしても即死する可能性があるとみていた。
いや即死はまぬがれないと思った。
「俺を誰だと思ってるアリエルさんよ。俺は世界最強の武道家である冷だぞ。使いこなせない物はないのだ」
冷の実力はわかってはいたが、それでもアリエルは生きていけるかは疑問であった。
「とても最強には見えないけど」
「甘くみるなよな俺を。それよりもほとんど死んでしまったと言ったな。生き残る奴もいるってことだろ?」
「いいえ、生き残ると言うのは意味が違います。魔人が怖くなってしまい、冒険者を辞めてしまった者のことです。例えば農家に転職したり、釣り人となったりと」
「……」
アリエルは厳しく冷に言い放ったが、その話は事実であった。
実際に一兆個ある異世界転生地の中で最強レベルの難易度を転生地であり、適任者がいないのでアリエルも困っていた。
冷はまだ若く、三日で死ぬ可能性もある。
一週間もてば優秀なくらいである。
それでも冷を選んだ理由として、冷の潜在能力であった。
神の目利きから見ても恐ろしい程の潜在能力を感じたからで、この冷しか適任者はいないと思ったのだった。
「そこで冷にはもうひとつ差し上げます。異世界に転生した際に必要な武器を。初心者の冒険者では手にできない武器をね。そうしないと即死しちゃうからです。あなたは今までに武術を使う経験があったから、武器には早く馴染めると思うわ」
[神物想像]
最高位の武器、防具、道具を作り出せる能力。アリエルのみ使用可能
アリエルは両手を前にかざした。
アリエルには神物想像という能力がある。
とても危険な転生地に送る際にだけ特別に配慮してプレゼントしていた。
アリエルなりの神族としての思いやりでもある。
そうしていると手に武器が現れた。
「これが冷への私からの贈り物よ、はい」
パッとみて何のへんてつもない武器と思えた。
それを冷に手渡す。
「これは……ナギナタだ! 俺はナギナタを最も得意なんだ。よくわかったなぁ」
冷はナギナタを使い幾多の名のある武道家を倒してきた経験があった。
その経験が関係してナギナタが生み出されたのだ。
しかしそのナギナタは神物想像の武器であるからして、普通のナギナタではなく、絶対に折れないという怪物級のナギナタであったが、当の冷はまだ知らないでいた。
(なかなか良さそうなナギナタだなぁ。手にもシックリとくる。素手でも戦えるけど武器があれば、戦いに幅ができる)
「これで準備は終わりです。では異世界へと旅立ちを。魔王を倒して平和をもたらしてください。さもないと全ての異世界が消滅しかねないのです。全ては冷にかかってます」
「話はわかったけど、その魔王ってのは強いのかよ?」
「強いていう枠を超えた存在とだけは言っておきます。現在は眠っていますが」
「眠ってるなら怖くないだろ」
「違います。過去に魔王は異世界にいる勇者と言われる伝説の者が魔王と戦い、激闘の末に封印に成功した。だから死んではいなくてまた復活する恐れがあるの。それも近いうちに」
「だったらまた勇者に頼めばいい話だよな」
(俺が必要なんて嘘じゃないかよ)
「もうとっくに死んでしまいました。それに魔王はひとりだったのです。もう2人の魔王がいるのですが常にバラバラの時代に出現していた。それが今回は3人の魔王が同時に目覚めると噂されてる。そうなったら手に負えない。もうジ・エンドです。簡単に説明しましたが、要は魔王を復活させる前に止めちゃえばいいってこと。では冷、ヨロシク!」
冷の了解とは別に、ほぼ一方的に説明をした。
アリエルが説明すると異世界への扉が開いた。
後は冷が扉を通過すれば終わりである。
しかし冷は別の次元の考えをしていた。
異世界への不安などまったくなく、アリエルの事を考えていたのである。
(その言い方だと、完全にブラックバイトだよな。このまま異世界に行ったらもうアリエルには会えないよな。それはちょっともったいない。こんなに可愛い子が見れなくなる。それならば……)
冷はアリエルが大変に気に入り、寂しくなる。
なぜなら女の子とこんなにも会話したのは生まれて初めての経験。
嬉しい経験となっていて、アリエルとこのまま別れるのが寂しく思えた。
そこであり得ないような行動にでたのであるが、扉を通り過ぎるその瞬間にアリエルの腕を掴んで引っ張るという道連れ行為であった。
「えっ! 何をするのです冷!!!!」
「へへ、一緒に連れて行くぞ!!!」
なんとアリエルごと扉を通り越してしまった。
本来ならそんなことは不可能であるが、冷の武道家の俊敏さは通常の人の速さではなく目にも見えないたとえ人間だろうが神だろうが、反応すら出来ず見逃すしかなかった。
アリエルは冷の武道家の能力を甘く見過ぎていたのが、失敗の始まりだったわけで、もう転生したからには今さら後戻りは出来なかった。
扉を抜けるとそこはもう異世界の地。
(ここが異世界か。どんな風かな)
異世界に冷とアリエルは降り立っていた。
降り立っていたのだが冷は地面に尻もちをついていた。
冷の脇にはアリエルもまた尻もちをつく。
両腕で抱え込むようにしていて、胸を掴んでいたのだった。
「ちょっと冷、どこ触ってんの!!」
「あれれっ!」
アリエルは異世界に来た途端に胸をもまれたことにびっくりしていた。
だが冷が抱え込むことによって着地が和らいだのも事実であった。
「悪い悪い……貧乳だけど気持ちいいな触ると」
(うわぁ、触っちゃったぞ〜〜。貧乳て奴みたいだけど、やっぱり連れて来て正解だ!)
生まれて初めて触る女の子の胸の感触をたのしんだ。
着いた地は見た感じ森の中といった風景である。
よくあるファンタジーゲームで見る森が生い茂っていた。
「ちょっと!!!冷。何考えてんのよ!! 仮にも神族である私の大切な胸を触るなんて許せません行為です! しかも貧乳ですって!! さらに私まで連れて来て!」
森の中にアリエルの罵声がとどろいた。
「いやさ、最初は俺がひとりで不安だから居てもらうつもりでさ。慣れてきたら帰っていいよ」
冷は本心であった。
「ふざけてんじゃない。帰れるものなら帰るわ。帰れないから言ってるのです!!」
「えっ……。送る能力があるのだから帰る能力だってあるよな」
普通はそう考えるだろう。
送れるのだから帰れると。
「ない!!!」
本当になかった。
そもそも送る能力はあるが、アリエルは異世界に自ら行く必要性がなかったから、帰る能力など持ち合わせていないのである。
冷はその辺の事情を知らず起こした珍事となった。
「本当なのよ冷。つまり私は異世界に居続けるのよ。最悪だわ……なにせ一兆個ある異世界転生地の中で最も劣悪で死亡率が高く割が合わないのよここは。どうしようかしら……」
アリエルは半分泣きそうな顔になる。
ハズレくじを引いたかのように途方に暮れた。
しかしアリエルはある考えがあるからで、直ぐに平静を取り戻していた。
「慌てることはない。私は仮にも神族。そこらの冒険者とは次元が違うのだ。私のレベルは99億なのだ。これなら魔王とさえ出会わなければ死ぬこともないでしょう。ホッとしました。念のため確認してみま〜す」
アリエルは笑顔を取り戻していた。
神族は特別な存在でありレベルも99億と桁違いのレベルに達していた。
そこでアリエルはステータスを確認した。
「あれれ? おかしいわ! なんでレベル1なのよ〜」
アリエルは自らのステータスを確認し、レベルが1だと判明し慌てた。
アリエル
性別 女
種族 神族
職業 女神レベル1
ユニークスキル
神物想像
固有スキル判定
体力 1000
攻撃力 1
防御力 1
魔力 100
精神力 1
素早さ 1
がっかりと肩を落とし、もう人生の終わりといった残念がりであった。
しかしレベル1とあっても初期ステータスは人族のステータスとは比較にならないほど高い。
体力は1000あるのでまず死ぬことは考えられなかった。
(どうやらレベル1だったようだな。俺と同じだな)
「そぅかぁ〜〜〜。異世界に転移した者は必ずレベルは1から始まるのだった〜〜忘れてた最悪だわ。それも全部、冷の責任だ!!」
「いや〜〜ごめんなさい〜〜〜〜」
つまりは冷、アリエル2人ともにレベル1からの出発と決定したわけだ。
慌てるアリエルは冷に対して冷たい視線を送るも、当の本人はというと。
(帰れないてことは、この胸をまた触れるかもなあ。ラッキ〜〜〜〜)
この調子であった。
最悪の転生地。
神族を引き連れ、最強の武術と最高位の武器ナギナタをもち、晴れて冒険者スタートすることになったのであった。
冷とアリエルは異世界に着いて早々に、言い争いになった。
どちらが悪いとかそう言うレベルではなかった。
森の中にいて冷が気がかりなのは敵に遭遇すること。
いまだどんな姿でどんな攻撃をしてくるかわからない。
わからないのは、冷に恐怖を想像させた。
(化け物だったら経験ないから、手こずるだろうな。敵よりも味方の人族に先に会いたい。人に会えば情報も入るし何より不安も減るし)
「冷、何か感じるの? 敵なら魔物よ」
「ああ、何か異様な物を感じる。今までに感じたことのない異様さだ。体がソワソワしてきやがった」
冷は森の奥から異様な空気を感じていた。
常に気配をとらえることの出来る冷の能力であった。
「奥に行くのやめたら。危ないかもよ」
「大丈夫さ。俺が戦うから」
奥の茂みに入るとガサッと葉の音がした。
冷に緊張が走る。
(誰かいるぞ!)
草木をかき分けて冷の前に現れたのは数人の影。
「誰だ!」
(女の子?)
「お前こそ誰だ、冒険者か。ふふ、このリリスを知らぬとは馬鹿だったなお前ら」
現れたのはリリスとその配下の魔族であった。
冷の思っていた魔物と姿は違う。
リリスはとても可愛いい女の子であった。
髪は赤くて身長は冷よりやや小さい。
アリエルと同じくらいであろう。
ただし違うのは胸の大きさであった。
アリエルがいわゆる貧乳なのに対してリリスは大きく膨れ上がり、防具がはち切れそうな感じである。
「リリスだと、魔物か?」
(それにしても胸が大きいな。アリエルと正反対だ)
「魔物を超えた存在と言っておこう。私は魔物の中でも数少ない特別な存在。魔族のリリス。その名を聞いて怯えない者はいない。運が悪かったな冒険者よ。私は今のところ冒険者を殺そうとして森にいた。楽〜に殺してやろう」
リリスは詳しく自分を解説し冷を殺すと宣言した。
「聞いたことのない名ですけど」
冷は本当に知らなかったから素直に言った。
するとリリスは機嫌が悪くなる。
「私を侮辱すると恐れいった奴だ。先ずは手始めに私の配下の魔族と戦わせてやろう。お前らこのクソ生意気な冒険者を殺せ!」
リリスが命令すると配下の魔族達は前に出てきた。
ミニデーモン5匹であり、人の形はしているが背中から黒い羽根が生えている。
鋭い爪も持っており、接近戦でも爪を活かした戦いができた。
姿は不気味な姿で、日本では見たこともない姿。
そして魔族特有の魔力を発していた。
冷にも魔力は伝わり、生まれて初めての震えを感じた。
「大丈夫かしら。敵はいっぱいいるけど……無理よね相手は大勢いるし、強そうだし、死ぬのかしら。嫌〜死にたくない〜」
アリエルはこの時に死を悟った。
パニック状態となり辺りにわめき散らす。
「さあ〜どうかな、俺のこの世界に来ての初陣。戦ってやろう!」
(敵は5匹いる。手始めには丁度いいくらいだな)
冷はナギナタを取り出して戦闘態勢に入った。
ミニデーモンもいっせいに冷に向けて襲いかかる。
5匹の鋭い爪が襲いかかると冷は軽々とかわしてみせた。
数々の敵を退治してきた冷にとっては、この程度の攻撃は怖くない。
楽に余裕を持ってかわす。
(見た目は怖いが攻撃はさほど怖くない。5匹全員が相手でも見切れるぞ)
その後にナギナタを旋回させる。
縦、横にナギナタを振るいミニデーモンの体を斬った。
1匹目は胴体に刃を食らわすと、1撃で裂けて倒れた。
冷の異世界で最初の斬った相手となる。
振った感触は日本にいた頃と比べて変わらない。
ただ気持ち悪いと言う点が違うだけ。
冷のナギナタのさばきを目の当たりにしたミニデーモンは狼狽えた。
爪を軽々とよける身のこなしのよさ。
あまりの速さで見えなかった刃の斬れ味。
仲間がまさか人族の1人に殺されるとは、思ってもみない展開である。
「何をビビってる。たまたま当たって死んだだけだ。人族相手に怖がるのは許さん。イケ〜〜〜!」
リリスの掛け声に気持ちを立て直し、再び冷に攻撃を仕掛ける。
冒険者でも初級のレベルなら即座に殺されていただろう。
初級者を脱し魔物を倒せるレベルに達している者でさえミニデーモンを倒すのは容易ではない。
それが一度に4匹同時に襲いかかる。
冷は決して動揺はない。
慌てずに相手の動きに目を凝らし、1匹づつ斬った。
ミニデーモンはあっけなく5匹、地に伏せ死んでしまった。
冷にはかすり傷1つない。
呼吸すら乱れてもいない、完勝となった。
柳生 冷
性別 男
種族 人族
称号
ユニークスキル
スキルストレージ
職業 無職狂戦士バーサーカー
レベル101←100アップ
体力 109←100アップ
防御力 109←100アップ
魔力 109←100アップ
精神力 109←100アップ
素早さ 109←100アップ
剣術レベル99←90アップ
柔術レベル99←90アップ
槍術レベル99←90アップ
弓術レベル99←90アップ
斧術レベル99←90アップ
冷のステータスが格段に上がった。
ミニデーモンを5匹倒したのが貢献していた。
一般の冒険者ならレベル1から2が妥当だろう。
ミニデーモンの強さから多めにみても4というとこか。
4でもかなり凄い方である。
それを冷は軽く超えて100もレベルが上がったのであるから、異例といえよう。
本人も確認後には驚くしかなった。
(レベルが100も上がった。こんなに上がっていいのかな。何かの間違いじゃないのか。普通に考えておかしいよな。ゲームもしたことはあるがこんなに上がるのは見たこともない)
冷の感じたことは誰でも思う疑問である。
異常な数値の上昇。
これではゲームで言えば、いきなり後半戦のボスが倒せるくらいの勢いである。
明らかに異常と言えるバグ的な数値。
しかしこれにはちゃんと理由があった。
冷の職業である無職狂戦士バーサーカーの影響である。
この職業は歴史上で唯一、冷にしか取得出来ない職業であり、冷も誰もそのことは知らない。
冷だけに与えられた職業。
過去に存在したことが無い職業だけに実力も不明であった。
その無職狂戦士バーサーカーは初期のステータスはそれほどでもない。
むしろ低いくらいである。
だが見ての通りレベルが上がると猛烈な上がり方で数値が上昇する。
本人も驚く程に。
この職業の特徴と言っていいインフレーションステータスの凄さが開花した瞬間であった。
インフレーションステータスを獲得する者は歴史上、冷が初めてとなる。
つまりは全ての約1兆個ある異世界の全歴史を書き換えたのである。
「ううううう! よくも私の大事な配下を皆殺しにしてくてたな! 許せん、かくなるうえはこのリリスが相手になってやろう!」
配下5人をいとも簡単に殺されたリリス。
予定では冷が殺されているはずであったが、逆になってしまい怒りを露わにした。
リリスが怒りで自信の持つ最大限の魔力を限界まで放出する。
するとリリスの体から発散される魔力が冷に届く。
(こ、この気は何だ? 今までに感じたことのない気だ。用心しよう)
リリスは魔族の持つ魔力で冷を威嚇した。
そして腰にある剣を抜いて剣先を冷に定めた。
剣は明らかに普通の剣ではない。
魔力がこもった剣、魔剣と呼ばれる代物だ。
冷はリリスの動きに合わせてナギナタを構えた。
「冷、相手は魔力が高いわ!」
後方で見守る神族であるアリエル。
アリエルもリリスの魔力を感じ取っており、冷を心配する。
「俺も感じ取ったさ。でも今の俺はアリエルの知ってる俺じゃない」
「どういう意味なのそれって? まるで冷が別人みたいな言い方だけど?」
「うん、別人といって差し支えないだろうな。もはや俺はさっきの俺じゃないんんだ。説明してる時間がないけど」
アリエルはよく冷の言う意味がわからない。
しかし冷は伝える暇はない。
リリスが飛び込んで来たからである。
「では、いくぞ冒険者よ!」
「いつでもどうぞ!」
魔剣を持つリリス。
インフレーションステータス化した冷。
お互いに真っ向からぶつかる。
魔剣はナギナタと激しく重なり合うと火花を散った。
「ううう! 何だこの力は〜。お、お、押される〜〜〜!」
いい勝負だったのは、一瞬であった。
ナギナタの力に圧倒的に押されて吹き飛んでしまうリリス。
そのまま森の中に。
「あれ、ちょっと本気出し過ぎたかな俺?」
冷はかなり手加減したはずであったが、リリスの持つ能力では堪えきれず圧倒した形。
ここまで差が有るとは冷も思ってもいない。
嬉しい誤算と言える。
(どうやら俺ってヤバイくらい強くなってるぞ)
「やったわね冷! 魔族のリリスも殺したなんて、あんた凄い強いわ!」
「まあな、そう言われると照れちまうが」
貧乳ではあるが顔はアイドル波に可愛いアリエル。
マジマジと褒められ冷は照れる。
だが照れていられるのもそこまでであった。
「く〜〜〜。お前、とても強いな〜。ただの冒険者じゃないな。強過ぎる?」
森に吹き飛んたはずのリリスであった。
体が土と葉っぱで汚れてはいるが。
これでは魔族の威厳もない。
冷が大幅に手加減したのもあり生きていたのだ。
だがリリスは冷の実力を知り、戦意は無くしていた。
これ以上戦っても勝ち目はないと。
死ぬだけだとわかった。
そのあまりの強さに心が折られていた。
「おお、生きてたかよ。まだ戦う気か? これ以上戦っても無駄だけどな。どうするよ?」
「負けだ。私の完敗だ。殺すなり好きにしろ。お前に会ったのが不運だった。まさか弱い冒険者しかいないとされるこの森でこんなヤバイ冒険者にであうとはな。それとも私を殺すために冒険者ギルドが上級冒険者達を仕向けたのか? それなら納得だ」
リリスは特に駆け出しの弱いレベルの冒険者ばかりを狙って襲い、金を盗んでいた。
その噂は冒険者ギルドにも届いていて、十分注意するように冒険者には知らされていた。
だがリリスが言う上級冒険者が派遣されてはいなかった。
単に冷を上級冒険者で派遣されたのだと思い込んだのだ。
「いいや。俺は冒険者なんとかってのは知らないぜ。派遣されてもいないし。歩いて近くに町があるかなって。そしたらあんたが襲いかかってきたわけだ。弱い冒険者だけといったな。つまりリリス、あんたは弱い奴らばかり狙い打ちしてたのか。魔族のクセに情けないな。でも別に殺すつもりはない。俺は町に行きたいんだ」
(俺と会ったのが不運てわけだな。それにしてもリリスの態度がおかしいな)
冷が思った通りにリリスの態度は最初は強気であったが、現在は弱気であった。
冷に負けたのが原因であるが。
「えっ、私を殺さないと言うのか?」
「う〜ん殺さないかな。その代わり俺の仲間になれよ。仲間が欲しいと思っていたんでね」
殺さない代わりに仲間へと誘う冷。
一見すると優しい男にも見えるが、実はある理由があった。
(アリエルとは違う可愛いらしさもある。それに胸が大きいな。あの胸を触りたい)
単純に仲間にして、いやらしいことをしたいと言うこんたんであった。
「私を仲間にか。魔族を仲間に誘うとは狂った冒険者だな、名前を知りたい」
「俺は冷だ。よろしくな。これで仲間が増えた。町に連れていってくれないか。あと俺の横にいるのがアリエルだ」
「アリエルです。よくわからないけど仲間になったのね。神族としては複雑だけど、よろしく」
まさか魔族のリリスが同じ仲間になるとは思いもしなかったアリエル。
けど冷が決めたことなので反論はしなかった。
「魔族だけど、私でいいなら、よろしくな。??? お前今何て言った。聞き間違いだと思うのだけど神族とか聞こえたから」
「ええそうよ、神族です」
「はっ? 神族ですか? まさかあの神族のアリエルですか?」
リリスは驚いた様子で声を裏返した。
「知ってるようですね私を」
「知ってるもなにも、アリエルと言ったら伝説の神族だぞ。神話でしか聞いたことがないし、生きてるかさえわからない存在だ」
「生きてますが、勝手に殺さないでくださいよね。理由は聞かないで仲間になってくれれば」
そこは聞いて欲しくないところであった。
まして新たに仲間となるリリスには。
「それなら俺が神族のいた場所から連れて来たからさ。それで神族のところに戻れなくなってしまい、しょうがなく俺と冒険すると決まったんだ」
「ちょ、ちょ、ちょっと冷!! 余計なこと言わなくていいのよ!」
「だって本当のこと言っただけだろうが」
「そうだけど!」
冷は本当のことを言っただけだが、アリエルには余計なひと言であった。
「へえ〜そう言う理由があったんだ。神族って言うけど、要は帰れないんじゃただの人族だなこれじゃ」
「あんたね!」
冷と女神アリエルは新たに魔族リリスを仲間に加えた。
神族のアリエルにとっては魔族は、お世辞にも仲の良い相手とは言えないが、ケンカすることもないと思うことにした。
そこからピルトの町を目指していくことに。
無事に到着出来るとは思えない展開であった。
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