第4話 目を見て話す人

一緒に帰るときも、教室で話すときも、ふと廊下で話すときも

どんな時も目が合う。


帰り道、あまりに話に夢中になりすぎて立ち止まって話し出したり、自転車を押して歩いているのに無理やりこちらを向くせいでバランスを崩していたりして少し笑ってた。

最後はいつも家の前で話すから、いつだって私に向いてくれたけど。


教室で話していたときに、ふと気づいた。

目を合わせてくれるだけでなくて、いつも体ごとこちらに向いてくれる人だ。



机に肘をついて眠そうに話していたのに、興が乗って目が覚めたてきたら足まで完全にこちらをむいて座りなおす。

授業が始まる合図、先生が教室に入ってきても私のほうを向いて話し続けるのだけはいろいろと心臓を刺激してくるのでやめてほしい。

そのくせ授業が始まると寝る姿勢に入るものだから、いつ先生がこちらに向かってくるのかとなぜか私が怖かった。

少しつついただけでは起きなくて、大きな声を出すわけにはいかなくて

結局、ちらちらと様子をうかがいながらなるべくきれいにノートをとる。


案の定先生に起こされて、ぽやぽやした顔で、ささやくように名前を呼びながら「なんで起こしてくれなかったの」って言われたのは忘れない。

起こそうとしたし、なんならきっとそのうち言ってくるであろう「ノート見せて」のためだけに少しでもきれいにノートをとっていたんだ。

言わなかったけど。


授業終わったら目が覚めて、またこちらを向いて話が始まる。

眠そうな顔でふにゃっと笑いながら、名前を呼ばれて


起きない君が悪いんだ。




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雨が来なきゃいいのに 輝 三毛 @Wisteria_mike

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