第21話 スカイステーション

翌日朝『今日はベイカー主任の娘さんに会ってくるよ。』私は妻に告げた。

『休日じゃなかったの?』と、妻

『科学院に入るようにスカウトしに、行ってくるよ。』と、私

『ローラの娘のメアリーちゃん…早いものね。あんなに可愛かった子が大学を卒業したのね。』と、妻

『知ってる?首席で卒業したんだ。』と、私

『それでアマンダ総長から、お声が、かかったの?』と、妻。興味津々の様子。

『いや、そういうことじゃなくて卒業論文を読んで…』と、私

『それって、あなたの仕事じゃないの?』と、妻

妻の指摘はいつも的をついていて、何も言い返せない。

『そうことだよね…』と、私

『しっかりしなさいよ。』と、妻

『行ってきます。』私は、玄関をパタンと閉めた。

『施錠します。』“カシャ”とドアが閉まった。

私は胸ポケットに手を入れた。

思考「メアリー・ベイカーさんの住んでいるザイオンは3ブロック先か…」私

私は多機能眼鏡を掛けると、眼の前に現れたタッチレスパネルに表示された、多機能メニューをスクロールして“飛行モード”を選んで指先でタップする。

“飛行可能”とタッチレスパネルに表示がでると3Dハンドルが実像として、現れた。

3Dハンドルを握り、地面を蹴飛ばし空中に舞い上がる。

思考「うまく機能しているな…噴射している感じに仕上がって入るな。」私

3Dハンドルのスロットルを調整しながらハンドルを傾け、モニターのナビゲーションを見ながら、スカイステーション目指して飛行していると、接近を知らせるアラート表示が出て、向こうから飛んでくる女性を表示している。

思考「ここはレディファーストだな…」私

私は3Dハンドルのスロットルを緩めると“減速・待避”表示が出て、空中でホバーリングしている。

しばらく待って入ると、向こう側で軽く会釈されたので、3Dハンドルから左手を離して、手で“どうぞ”促した。

すれ違いざまに、会釈されたので会釈して返した。

スカイステーションの上まで飛んで、3Dハンドルをたたむと“飛行モード解除”表示が出て、“ストン”と白い床に降り立った。

多機能眼鏡を胸ポケットに入れた。

周りを見渡すと自分一人、静まりかえったステーション。

思考「あれ?そうか!今日は、お休みだったか。」私

スカイステーションでしばらく待っていると『ザイオン行き到着します。』アナウンスが流れた。

継ぎ目のない、たまごを押しつぶしたような形の乗り物が“フワリ”と空中で停止して、半円の突起部分から何本も脚が出てきて、3本の足先がひろがってから、音もなく降り立った。

継ぎ目が無かった壁が開いて、中から真横に出始めた板が、階段状に次々折れ曲がり、スカイステーションの床数ミリ上で“ピタリ”と止まった。

私は歩いて中に入ると人はまばらだった。

席に座り窓から景色を眺めた。

しばらくすると『席に着いてください。離陸します。』アナウンスが流れる。

階段が収納されて入口が閉まり、継ぎ目が視えなくなった。

“フワリ”と空中に浮き上がると、音もなく飛行し始めた。

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浮遊惑星 ゾンビやす @yasuzonbi0708

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