第19話 メアリーとの再会

時は流れ…メアリーは科学大学の卒業式を迎えていた。

今日はいつものメアリーと違い、そわそわしている。

それもそのはず、憧れのアマンダに総代として対面することになったからだ。

メアリーは内向的な性格で、研究に没頭すると何日も大学の研究室で寝泊まりして髪はボサボサのままでも平気で、異性に全く興味がない。

今日のメアリーは可愛かった。

兄のジャスティンが『メアリーって女の子だったの?』と、からかってくる。

『今日は特別な日なの。』と、メアリー

ジャスティンは、まじまじとメアリーを見る。

『総代に選ばれたから、アマンダ総長に会えるの。』嬉しそうに話すメアリー

『それは凄いな!』と、ジャスティン

メアリーはジャスティンをじっと見て…『お兄ちゃんには絶対音感があるし、凄い才能がある。お母さんに遠慮しなくてもいいと思うわ。』と、メアリー

『独学で楽器を扱えるなんて凄いし、いきなりピアノ音楽祭で2位なんて普通じゃないと思うの。』と、メアリー

科学院の研究所に勤める母は何世代も人工冬眠をしてこなかったベイカー家の出身で、代々科学院に人生を捧げることが全てという、厳格な教えを、ジャスティンとメアリーの幼少の頃からずっと、2人に教え込んできた。

『メアリーには母さんの優秀な遺伝子を受け継いでくれて良かったと思っているよ。』と、ジャスティン

『俺のことは好きにするよ。』と、ジャスティン

メアリーは背が高く細身で大学の制服が似合っている。

伝統の大学の帽子を被る。

『母さんは今朝も帰ってこれないけど、きっと喜んでるよ。』と、ジャスティン

『…うん。』メアリーはうなずく。

『じゃあ兄さん行くね。』メアリーは言いながら、家を出た。

メアリーが大学の大講堂の門をくぐると男子生徒が振り向いた。

『メアリー先輩可愛い。』ヒソヒソ声で話している。

憧れのアマンダに対面する緊張からか、男子生徒の視線や後輩女子生徒の会話など聞こえないといった感じだ。

『ここよ。メアリー。』先生が手招きしながら呼んだ。

『あっ、ハイ。』と、メアリー

『アマンダ・カーライト初代先導者の訓話の間、ここで待機。いいわね。』と、先生

『ハイ。』メアリーが緊張した面持ちで返事を返す。

大講堂の門からアマンダが現れると、全員一斉に振り返った。

アマンダが入ってくるのを生徒達は見守り、アマンダの足音だけが聞こえてくる。

講堂内は張り詰めた空気になった。

アマンダは教壇に立ち、一礼した。

『科学大学卒業おめでとうございます。』『我ら同志の最高位の大学課程で学んだことを糧に更に発展させてください。』

『過去6,700年間、様々な困難を乗り越えるために、先人達は深く物事を捉えて精力善用してきました。』

『皆さんは自他共栄できるθ星人の未来を背負っています。』アマンダは周りを見てから一呼吸して『ちょっと堅苦しかったかしら?』にっこり笑った。

『人工冬眠から目覚めた第一期生は、見るもの全てが驚くほど新しかったでしょう?』と、アマンダ

すると、会場の空気が和らいだ。

『これから何をすべきなのか?自分で考えぬいて選択したことの結果が分かるのは自分だけです。それには一生涯かかることも覚悟して取り組んでください。』と、アマンダ

すると拍手が会場内にひろがった。

『卒業証書の授与、生徒代表』と、アナウンス

『メアリー・ベイカー。』と、アナウンス

メアリーは『ハイ!』立ち上がり生徒の間を颯爽と歩む。

憧れのアマンダの前で立ち止まって真っ直ぐ見るメアリー。

思考「お久しぶりね。メアリー」アマンダ

思考「うれしい!」メアリー

『メアリー・ベイカー貴殿は優秀な成績で卒業したことを、ここに証明する。』アマンダはメアリーに卒業証書を手渡す。

『頑張ったわねメアリー。』アマンダはメアリーにだけ聞こえる小声で話しかけた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る