第18話 総長室

『観測の結果、将来ブラックホールの増大するスピードが減速する可能性があります。ある、どこかの時点で宇宙の膨張が弱くなると、我々のいる宇宙空間はポケット宇宙になり、その後急激なエントロピーの増大傾向が続けば、140億から180億年後には、蒸発して銀河は陽子崩壊によって跡形もなく消えふせてしまいます。』

銀河団の4次元シュミレーション画像を見ながら、私(ジャック・デイビット)の説明をピーターとアマンダが聴いている。

『かなり深刻なのは人口問題です…現在11億人ですが、人工惑星の収容人数は50億人程度です。』私は画像の予想グラフを映し出した。

『あと250年くらいで収容人数満杯になるのね。』アマンダが肩を落とす。

『人工惑星建造してから自然環境サイクルが起動するまで、更に3,000年もかかっているのに…』と、ピーター

『人工惑星コアの材料も破壊尽くされて、なかなか回収もできない。』と、私

『あいつらが戦争を止めなかったから!』くやしがるピーター

『人工冬眠でやり過ごすしかないの?』心配そうに聞くアマンダ。

『深淵の宇宙まで探し回って、コアの材料が残っていたら、いいのですが…』と、私

『いくらワープ航法でも無駄だよね。』と、ピーターが言いだす。

『何が?』と、私

『この銀河団から離れれば、全く何も存在しない宇宙空間にとり残されるだけだよね?』と、ピーター

思考「虚無の空間しかない…か。」ピーター

思考「この銀河団からは出られない…神でもないかぎり。」私

『神なら何が出来るの?』アマンダが私に向かって聞いてきた。

『ブラックホールに飛び込んで異空間に出ることなんて、出来っこないです。』私は当たり前のことを二人に話した。

『それは出来ないの?』ピーターが聞き返してきた。

『ブラックホールと言っても事象の境界線を超えた時点で重力井戸につかまれば、光さえも脱出不可能になることは、ご存知ですよね。』私は二人に話した。

『もちろん知っているわ。』と、アマンダ

『重力井戸で押しつぶされて、バラバラの原子になって異空間に出ることになります。』私は説明文した。

『重力井戸で押しつぶされなくする方法はないの?』と、アマンダ

『科学院で相当な時間をかけて研究しても答えを出せません。』私はアマンダに答えた。

『あと、十数万年もしたら、宇宙の増大傾向がピークを迎えて減速する可能性があります。脱出可能な状態は、あと数万年という可能性があります。』私は話しながら、二人の目線を外した。

『仮にワームホールを通過できたとしても、そこが生存者可能な宇宙か、どうかは全く分からない。』と、私

3人は窓辺に立ち、遠くまで見える海を眺めた。

空には雲が浮かび、ピンと張ったヨットの帆が行き先を決めていた。

『平和な世界も残り時間が少ないのね。』残念そうに話すアマンダ

また、3人に沈黙の時間が鳴かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る