コックちゃん「少しクックしてみようかと思いまして」
月影 弧夜見
第1話
「……で、この俺に何のようだ?
よもや貴様が、こんなところにまで来るとはな」
西大陸、そのどこかにある森の中。
その巨木の立ち並ぶ、自然の楽園の真っ只中にて、己が実力の研鑽を深め続けている刀士が一人。
名はイデア。イデア・セイバー。
つい1年と少し前、人類の宿敵たる『魔王』を倒した救世主たる『白』という少年の兄にあたる青年であった。
そんなイデアの下に訪れたのは、羽を広げし女の姿。
人間……のように振る舞い、人間のような立ち姿をし……しかしてその存在は異様だった。
その頭に通った、1本の水色の線。頭上にて回るは、欠けた幾何学模様の円環。
そして何より、その背より広げし、白鳥の如く白い翅。
まさにそれは、人間と似通いながらも『ヒトではない』という、歪なる存在感を植え付ける姿であった。
……それで。
「……だから、この俺様に何のようだと聞いているんだ。
躾がなってないようだな、アレンのヤツは」
アレンは、『白』の本名である。アレン・セイバー。セイバーという姓で、イデアと白は繋がっているのだ。
『別に、マスターがどうだの、というのは、今回関係はございません』
コックは淡々と言葉を続ける。ここで言う『マスター』とは、コックの主であり、イデアの弟の『白』のことだ。
「じゃあ、尚更何のようだ。この俺に、貴様が頼ることなどあるのか?」
『ええもちろん。それはあります。大アリです。
まさかこの
「それはそうだ。だがな、妙に貴様に関しては信用ならんのだ。
胡散臭いにおいこそすれば、貴様からはどこか異質な臭いもするんだよ。
……そもそも機巧天使とは何だ? 貴様はこの1000年間何をしていた? 貴様のマスターとは何だ? 貴様の背後にある『機甲帝国軍』とは何だ?
その全ての謎が明かされてもいないのに、俺に貴様を信用しろだと?……ふん、できるわけがないだろう、そんなもの。信用するのはアレンのような馬鹿だけだ」
『マスターを侮辱した……ことは、とりあえずは置いておきましょう。
……しかし、その謎が何なのか———それは私にも分からない部分が多いのです。
何せ、1年前の大穴の対決にて、記憶を無くしてしまった身…………一部の記憶は別記憶端末によるバックアップで取り戻しつつはあるものの……
……とは言え、やはり
……で、今回はそんなことを話しに来たわけではなく』
とは言え、イデアのコックを見つめる厳しい視線は変わらないままであった。どこまでも不信感を持たれているのは変わらないようだ。
『……イデア様。イデア・セイバー様。
この度は貴方に、お願いしたいことがあってお伺いしました』
「ほう」
『どうか、どうかこの
…………最高の……ちょこの作り方を教えてもらいたいのですっっ!!!!』
「———は?」
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