第3話:魔法創造-前編-
マルケルは、あの後、先生により自分の部屋に案内された。
「そうは言ったもののなぁ…。」
マルケルは、あくまでも次席。首席に勝つためにはそれ相応の努力が必要だ。学校の怠慢にはルールがある。まず、怠慢を志願した者は、自分の学年の順位を賭ける必要がある。順位が下の者が上の者に勝った場合、上の者の位を奪うことができ、上の者は、その一個下の位に落とされる。逆に上の者が下の者に勝った場合は、下の者は、自分と対戦相手の位の差分、位を下げる。今回の場合は、カルムが首席、マルケルが次席のため、マルケルが負けると、次席(2)-首席(1)の1個分位が下がるため、3位になってしまう。それでは、組織の指導者になることが今よりも更に難しくなる。また、負けた者は、6ヶ月怠慢をすることを許されず、むやみやたらに怠慢をすることができない。マルケルは、溜め息をつきながらベッドの上に寝転んだ。ただ今回カルムに勝つことができればカルムは自分の仲間。即ち、組織作成の一歩に繋がるということだ。今回の怠慢、絶対に勝たなければならない。戦略等を色々考えたかったが、明日から授業が始まるということもあり、始業時間の8:00に寮の1年教室に集合なので、1時間前の7:00にアラームをセットして、寝床についた。
✣ ✣ ✣
7:00。アラーム通りにマルケルは、寝床から出て、身支度を済ませた。部屋を出る際に外が何やら騒がしいと思ったら、俺の隣の部屋に住んでいる首席を一目見ようと大量の女子達が群がっていたのが原因だった。もうカルムとマルケルが怠慢をすることは、クラム寮1年全員に広がっており、マルケルの顔を見るだけでも
「あいつが首席に喧嘩売った奴だってよ…。」
とひそひそ囁かれた。1年教室では、各生徒に1人ずつ席が用意されており、ナイフとフォークがそこには並べられていた。すると、前の方から手を叩く音が聞こえ、
「静粛に。」
と空間を貫き通すような低い女性の声が耳に入った。生徒達は、皆静まり返る。前を向くとそこには1人の女性が立っていた。
「クラム寮1年生の皆様、おはようございます。これから、卒業するまで貴殿方の担任を勤めることとなった、フェルマ・ロルカです。よろしくお願いします。」
(あれが、俺達の担任か…。)
「これから授業が始まる訳ですが、皆様にはまず、食事をしていただきます。朝御飯です。8:20までには食べ終わること。お願いしますね。」
そう言うと、フェルマは、自分の懐から出した、キューブを振り、生徒達の机に向けて、魔法を放った。すると、マルケルを含め生徒達の机の上に皿が発生し、その上には目玉焼きやソーセージ、トースト等が乗っていた。生徒達は、各々「いただきます」と言って、ご飯を食べ進めた。ご飯も食べ終わり、フェルマの魔法によって机の上の食器が片付けられると、机と椅子の位置が変わり、黒板を前とした席の配置になった。黒板にはチョークで文字が書かれており、"新たな魔法の取得"と書かれていた。
「それではこれから基礎魔法学の授業を行います。私は、貴殿方クラム寮1年生の担任、兼、魔法学担当のフェルマ・ロルカです。これから皆様には新たな魔法を取得して貰います。」
生徒達がざわつき始めた。[新たな魔法を取得]と聞くと、ワクワクする。
「はい。皆様静粛に。新たな魔法の取得は種類によりますが意外と簡単です。まずどの様な魔法を使いたいか決めます。その魔法と似た魔法を図書室で探し、材料を買ったり、探して入手したりしてください。」
(意外と簡単そうだな…。)
「ですが、人によって取得できる魔法が変わってきます。例えば…。」
そう言うと、フェルマは、自分の鞄から分厚い本を取り出した。本には"魔法生成の手段"と書かれていた。
「こちらの魔法生成の手段という本では、どの様になんの魔法が生成できるか。またその条件について書かれています。」
フェルマは、本の中のある1つのページを生徒に見せる。
「こちらの基本魔法という欄は、誰でも生成可能です。ここに書いてある材料を購入、又は採取すれば、それを調合し、完成したものを飲むことによって、魔法を覚えることができます。」
そして、フェルマは、別のページを開いた。
「こちらは、応用魔法です。ここに記入されている魔法は、限られた者しか作ることができません。そもそもの家系の魔法によって、作れるかどうかが異なってきたりするものもあれば、何かを経験することによって生成が可能になる魔法などもあります。基本魔法に比べれば、作ったり、習得したりするのは難しくなりますが、物凄い大きな魔法を作ることも可能です。本来は、皆様に魔法の調合をして貰いますが、それを習うのは、来週から。今日だけは、私に材料を持ってきて貰えば作りますので、その時は私に話し掛けてください。」
(成程。面白そうだ。)
「それでは、皆様に明日までの課題を言います。魔法を最低1つ作り、取得してください。私は、今日の19:00まで調合室で待機しておきます。また、今日の授業はこの授業以外ありませんので、心置きなく校舎を出て魔法の材料などを見つけるために校舎の庭や外の森などを探索をしてください。取得した魔法の量、難易度、珍しさを元に最高10点を内申点として差し上げます。昼御飯は、12:00。晩御飯は、18:00です。その時間にはこの教室で座っているように。」
そう言うと、フェルマは荷物をまとめ、調合室へと向かっていった。マルケルも荷物をまとめ、図書室へと向かった。
✣ ✣ ✣
図書室は、神聖な空気に包まれている。そんな空間がマルケル…いや、男は嫌いだ。溜め息をついて、窓側付近の席に鞄を置き、魔法生成系の本を探した。カテゴライズに[魔法生成]という所があったので、簡単に見つけることができた。"魔法生成の手段"は、もう既に貸し出しされていたので、適当に手に取った"魔法創造基礎応用"を読むことにした。実はマルケルにはもう既に作りたい魔法がある。それは、
魔法発生の確率を増やす魔法
だ。そもそもマルケルの魔法は全てが
名前
効果
自分が発生する魔法の確率を+10%増やすことが可能。
調合材料
クベルの実50g、ハルバム草2枚、ペルソの実70g
「これだ…!これを完成することができれば…!首席に勝てるかもしれないぞ!」
マルケルは、本を図書室の机に開いた状態で置いたまま、駆け足で学園の庭へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます