第3話 商店街の書店

 大学からの帰り京介きょうすけは商店街の書店に立ち寄った。大学で同じ学部の久木哲也ひさきてつやが何か本を読んでいる。

 京介が声を掛けると、少し気まずそうに微笑む。何を読んでいるんだろうと思って見てみると世界の不思議なものを特集したような本を読んでいた。

「へえ、そういうの興味あるんだ」

「まあね。面白いじゃない。え、と、神谷かみや君だよね」

「京介でいいよ」

「じゃあ、京介って呼ばせてもらうよ。僕のことも哲也って呼んでくれよ。サークルではそう呼ばれてるんだ」

「そうなんだ、じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。なんか、哲也って頭いいから、そういうの全然信じないのかと思ってたよ」

「そうなの、京介は、まったく興味ないの」

「まあ、あんまり興味ないかな」


「まあ、興味ないやつは興味ないよな。僕の知ってる先輩がこういうの好きでさ。その先輩に誘われて、そういうサークルに入ってるの。いろいろ調べたりして結構面白いよ」


「え、うちの大学のサークル?」


「そうそう、サークルは、まあうちの大学なんだけど、そういうの好きな人のつながりは大学の中だけじゃなくて、一般の外部の人とかの研究会ともつながってるんだよ。その先輩は同じ大学の化学科なんだけどね」

「へえ、女子もいるの?」

「そうだね。まあまあいるよ」

「へえ」

「ところで、京介はなんか部活とかサークルとかやってるの?」

「いや、特にやってないよ」

「一度、来てみない? 別に、これ勧誘じゃないけど」

 そんなやり取りをして、結局、次の土曜日の昼、学食でということになった。


 久木哲也とは、今まであまり話をしたことがなかったが、こうして話してみると思っていたより話しやすいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る