第8話 真実の音

丸軸さんは「そんなことがこの家で起こっていたんですね。でも、鳥の声と関係ない気がします。前の住民も幻聴かもしれないですが、鳥の声がしていたって話でしたし」


そうしてふと携帯を机の上に置いた。


「前に録音したんです」そう言いボタンを押す。


21時ごろに撮影したという動画だった。


「ヒィーヒィー」


確かにブランコが揺れている音にも聞こえる。私的には金管楽器で高音を奏でているように聞こえた。


「これは風鳴りじゃないっすね」


佐賀さんは言う。


「金属が擦れる音かもしれませんが、よくわからないですごめんなさい」


腑に落ちないようで再生を繰り返している。


彼はふと郡谷さんに言う。「そういえば設計図を見てどうでしょうか。何か不審な点がありますか?」


すると郡谷さんは設計図の一角を厚い指で丸くなぞった。


「ここのぉ長さの数字をみてください」


一階と二階の横の長さと屋根裏の横の長さが大きく違った。つまり、彼は屋根裏の壁の奥にまだ空間があるというのだ。


「なるほど~そこから音がしているのならそこを開ければ音の正体が分かりますね」


だんだんと辻褄が合ってきた。


彼が「榛原さ~ん」と呼ぶも榛原さんの姿はない。


「あぁ榛原さんならお腹が痛いってトイレに行きましたよ」丸軸さんはお洒落な器を置きながら言った。


「というか、屋根裏の奥に部屋があるなら開けてみましょうよ」


丸軸さんと郡谷さん、そして私とソラさんの四人で屋根裏に行くことにした。今は階段も普通になっていた。


佐賀さんと瀬能さんは一階で待っているとのことだった。


屋根裏に着いた。


大人4人がギリギリ入れるような場所だったが、埃は無くきれいだった。


「じゃあ、開けていいでぇすかい」


手には小さいノコギリを握りしめている。


「いや何でそんなのもっているんですか」


丸軸さんと私は一緒に笑った。


職業病だという郡谷さんは壁を綺麗に切り出した。


中には……


中には木片やゴミが散乱していた。


光を入れると


「ヒィーヒィー」


動画で聞いた音がした。実際に聞くとまた違う。


「ドッドッドッドッドッドッドッドッ」


階段を登る音がした。


「水溜くん! 分かった。俺分かったよ」


子供のようにはしゃぐ佐賀さんは私たちを見ると「ニカッ」と笑った。


音の正体。


それはトラツグミという鳥だった。広葉樹林に生息するが、林の多い公園でも観察することが出来るそうで、夜中に森の中でこの鳴き声を出すため、鵺や鵺鳥と呼ばれて気持ち悪がられていたそうだ。


はしゃぐ彼とは裏腹に郡谷さんと丸軸さんはいろいろと話をしていた。


「とりあえず、みんなを集めましょう郡谷さんも今は抑えてください」


ソラさんが宥めるようにして一階へと降りて行った。

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