第5話 家について
あれから一週間私はいつも通り第一スタジオの第ニブースでソラさんと今日の予定を話していた。
「今日は前回の続きをまず話します。大工さんが来ているそうなのでその方をまず呼んでもらってそこから」って聞いてますか。
「うん」とうなずく彼に私は「ちゃんと聞いてください」と言う。
「聞いてるよ」という彼は何かをしている。なにしてるんですか?
と質問をしてもラジオで使うからと集中しているようだ。覗いてみると何かの設計図なのだろうか間取り図を描いていた。
ラジオで視覚は使わないでしょとため息を出す。
気づくと0時になり、タイトルコールが終わっていた。
「……」
彼は今も絵を描いている。
「はー」とため息をつき「えーと。皆さーん今晩は。えー毎週金曜日の夜にお届けする完全アドリブラジオの『人間クエスト』が始まりました。
進行を務めさせていただくのは今絵を描くのに夢中な新海芸能事務所タレントの水溜ソラくんと駒込放送アナウンサーの川端美羽です」と言ってやった。
最初の挨拶もしないってどんだけ自由なんですか。と早々に叱る。
「あーこんばんはソラくんです」と笑う彼は物見遊山をしているようだ。私はまた、ため息をつく。
とりあえず今日のゲストですと大工の郡谷さんを呼んだ。私の横に座った彼はThe職人と言った風貌だ。
「えぇーよぉうしくお願いしぃますぅ」彼の訛った言霊も一層職人だという事を際立たせた。
早速で悪いのですが、と彼は書記した地図を見せた。
私が聞く前に彼は言う。「ゴミ箱泥棒さんとすこしラジオ外で話して家を訪ねたんですよ。その時に見た間取りを書きました」
郡谷さんは「ほー」と目を丸くした。「君、間取り図作成の仕事とかしてたんですかぁ?」
「いえ、初めて書きました。ですが、前にある女の子から地図の書き方や地形図の書き方を本格的に教わったので」彼は遠くを見るように笑う。
「いやーぁ。初めてでこんなに上手なら職業にできますよぉ」しわを増やしながら笑う郡谷さんはとても優しそうだった。
「まぁ、ギリギリまで書いていたんですが。まぁその話は置いておいて、本題に行きます」
そういい、彼は話を整理した。
先週のラジオのお便りコーナーでごみ箱泥棒さんから「事故物件に住んでいるが、最近になり、ラップ音やキーキーという音がする」とお便りをいただきました。今は夏なのでオカルトチックの良いお題なわけです。
そして、僕の友達で音の研究をしている佐賀さんに電話をして聞くと野生動物説が濃厚だと話をしてくださいました。
そして大工さんである郡谷さんをお呼びして一応間取り的にはおかしな点はないかを調べようと思いました。
彼の書いた地図を見ながら頷いている郡谷さんは「いやーこの家っていつ建設されたか分かりますかぁ」その問いに彼は「築五年だそうです」と言い。写真や新しい間取り図を見せた。
「この写真はこの前の水曜日に取りました。そして、この間取り図は作られた時だそうです。いまの間取りと見比べてみるとこことこことここが違うんです」
そういい指を刺した場所はお風呂場とトイレの場所、二階に続く階段、二階の部屋の窓の三か所だった。
「まぁ五年はちょっと早いと思いますけんどぉ。ライフスタイルなどによって変えることはありますからねぇ」
郡谷さんは言う。お風呂場とトイレの場所が普通は逆の場所の方がいいと思うんです。
確かにそうだ。
トイレの場所はまるで多機能トイレのように広かった。だが、お風呂場はまるでシャワー室のように小さい作りだった。
続けて言う。
この階段も何なんですか。踊り場が多すぎる。確かに建築基準法で階段の高さが4mごとに踊り場を設ける必要があるが、これ多分2ⅿごとにあるだろう。
だから西側の場所がすべて階段になっていた。普通は螺旋状にしたりして階段の場所を減らすと思うが、こんなに長い階段は初めて見た。
最後にと言った。
まあ、二階の窓がないという家はあるが、ここまでない家は初めて見た。あるとしてもこんなに小さな窓だ。一般的な家は13~16箇所だろうが、この家の二階はちゃんとした窓が4か所しかない。
一階は一般的な窓の数だが、二階だけがおかしいのだ。
私は「この変な家で動物の大量虐殺が起こったんですよね」なんて確認する。
その問いに対して彼は言った。
「実はその住人は二人目なんだ。事故物件を見られるサイトで検索すると『首吊り自殺』をしたと書いてあった」
私たちは納得がいった。まあ、変な間取りだが、こんな広い家が動物の大量虐殺なだけでこんなにも安くなるなんて思っていなかったからである。
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