第4話 記録の懐古
321の合図で彼がはい。皆さん今晩はー。
毎週金曜日の夜にお届けする完全アドリブラジオ「人間クエスト」が始まりましたー。進行を務めさせていただきます。新海芸能事務所タレントの水溜ソラと言う。
私は「はっ」として駒込放送アナウンサーの川端美羽です。と慌てた。
「川端さんどうしたの」なんて彼っぽくない言葉が私の耳に届いた。いや腑に落ちないっていうか。「どゆこと」と眉間にしわを寄せる彼に説明をする。
姉は首をくくったって台が必要じゃないですか。でも台が無かった。つまり、あの子が、「殺した」私が言う前に彼が話す。
続けて、僕たちが話していたのってお姉さんだったんだ。全部あの子がやったんだ。姉の書いたであろう遺書は、地図はあの子が書いていた。で、4年前に殺された妹がラジオ番組に送ろうとした。
このはがきは確かに今から四年前の物だった。
でもなんで、と私が訊く。
「あの子は後悔してる。4人いるんだ。
一人は嫉妬深い子。Aとする。
妹を殺したあの子。
二人目はこのはがきを出した子だ。正義感が強い子だ。Bとしよう。
Bは4年間妹を殺したことを警官や親に言おうとしている子だ。
僕はあの日の夜にこの子からすべて聞いた。
三人目の子はCとしよう。
Cは3年前から出てきた子だ。
山にお宝が埋まっていると思っている男の子だ。
最後の子は同様にDとする。
Dは何も知らない僕たちと話していたあの子だ。自分を妹だと思っている。」私は何の話をしているか分からなかった。
「多重人格だよ」彼が言った瞬間、靄が消えた。
Aである彼女は両親が可愛がっていた妹を殺した。子供ながらの嫉妬だ。
最初は些細なことから始まった。それが悪化していき殺してしまったらしい。
そして妹がはがきをラジオ番組に送って相談しようとしていたことを知る。
Bがはがきをラジオ番組に送ろうとするもAが良いこと思いついたと4年間かけて準備を始めた。
1年後Cという人格が誕生する。
そこでAはCを使い妹を探していることにしようと考えた。
そして、2年後Dという人格が出てくる。AにとってもBにとっても好都合だった。
Dは自分を妹だと思い込んでいた。だから、姉が遺書を残したという設定で僕たちにはがきと手紙を送ったんだ。
そうしてまんまと騙された。21歳の少女Aにまんまと僕たちは騙されたんだ。
Bは僕に言ったんだ。「あの子は終わりを見失っています。だから、あなたが妹を見つけて彼女にもう終わりだよって教えてあげてください。
お願いします。彼女も妹が見つかったら、私の問題が解けたら自首してやるって言ってました。あの子を救ってください」って。
彼は上を見上げて「ふー」と息を吐いた。
なんか切なくなりますねと私は溜息をつく。
「ガチャ」
流石にアドリブ過ぎるわとスタッフが入ってきた。「あっ今ラジオ本番じゃん」とすぐに本題に戻る。
ソラさんが「いやーまるで映画ですよこれ書籍化できちゃうことが起きましたねー」と話し始めた。
「はっ」気づきと私は寝ていた。
あーあの事件からもう一年かそう考えて背伸びをした。
あの後あの子は自首した。今ではもう多重人格は無くなったらしい。刑務所で罪を償っているとソラさんが笑っていた。
あの人もあの人だ。
時計を見ると5時を過ぎていた。
急いで外に出る。
朝陽は私の顔を美しく照らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます