第2話 お便りコーナー
今宵も疲労がたまる。
「よくこの番組今の今まで続いてますね」そう言うと彼は笑いながら
「よけーなお世話っすねー」と言い続けて「で、オカルトですってオカルト。お化けー」と両手を垂らし、緩霊のポーズで私を見る。
私もお便りに目を通して言う。「キーキー音がするって首つってる音じゃないんですか」急なホラー回と驚く彼に原因なんだと思いますか?と問う。
「あははは川端さんお化けとか信じてるんだー」と茶化すので恒例の言い合いが始まった。
「ともかく」とソラさんは電話をかけ始めた。あーもしもしと話を始める彼に今放送中ですよと呆れる。でもやはり面白い人だなと思った。
佐賀さんお時間だいじょぶっすかと少し話し、マイクに近づけた。「これもう聞こえてる感じ」と問う彼は誰なのだろうか。
私が目をぱちぱちしているとソラさんが「いま俺、ラジオ番組やってるんすけど、佐賀さん聞いてました?」と聞く。
佐賀さんはさっきまで日本民族学のオノマトペを探して実験してたんだと笑う。
なにそれと彼が訊く。
完全に二人のラジオになってしまったとため息をつく傍ら佐賀さんが言う。
桃太郎って知ってるだろうそこに出てくるオノマトペ、『どんぶらこ』これは桃が川から流れてくる時の音として書かれている。
古擬音全集には重みのある物体が水の流れに乗って浮き沈みする様子。またその様。なんて書かれてたんだ。おもしろいだろー
私はもうハチャメチャだと思った。
すげーでもよくわかんねーやでもさ方言のオノマトペとかを探してみれば。もっと面白くなりそうじゃねとソラさんが言うので「そうなんだよ青森県の方言では『つんぶら』なんていってさ、岩手県ではさ」とテンションが上がってしまった。
「ストーップ。ストップです。ストップ」と抑止して「ソラさんなんで呼んだんですか?もうそろそろ次の頭取りゲームは良いんですか」と聞く。
二人がごめんと謝り、ソラさんが説明をする。「まず佐賀さんに電話をした経緯を手短に説明します。
今日のお便りを選んだらちょうど夏っぽい話でして、一人暮らしをしているゴミ箱泥棒さんが一週間前から夜寝ているとキーキーとブランコが揺れるみたいな音がするらしいんですね。
他にもたたく音やラップ音などがするそうで、天井裏を見たけど動物もいない。そこで音について研究している佐賀さんを呼んだんすよー」
「なるほど」と電話からパソコンを打ち込む音がする。調べているのだろう。
研究者としてオカルトチックな話は大好きですよと言い続けて「まず、天井裏を見たと言っていたことから上から音がするという事になりますね。
で、最初はブランコと言っていたから鉄などが錆びて擦れる音だと思ったんですけど。そう考えれば道路の標識などじゃないかという考えが出来るから。この説は却下。
同様に外からの音ではないと言えます。そうするとたぶん風鳴りか、野生動物です。僕なりには野生動物だと思います。風鳴りはヒーヒーとなるからです。
しかもたたく音って動物が歩いているんじゃないですか?あとはラップ音です。これも同様だと思います。あとは建築の設計問題です。大工さんに聞けば一発だと思いますよ。」
機械から大工という言葉を聞いて俺はビールを飲む動作を止めた。あぁ来週の放送に俺は大工やってますって手紙送るかと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます