週末旅行

マッチゃ

2人きりで

久しぶりに2人で旅行に来た。初めて出会ったあの公園に。僕はここで君へ告白して、君は僕を受け入れてくれて。それからはよく2人で週末に旅行に行ったんだ。

周りに高い建物がもうないせいなのか、やけに肌寒い風が吹く中、僕らは1本のろうそくで暖まっていた。


「こういうのも趣きがあっていいね。」


と君が言う。たしかにそうだ。火の揺らめき1つだって、君となら特別なものに変わるんだ。


「そういえば今日は土曜日だったね。ほんとうに久しぶりの週末旅行だ。」


と僕が言う。


「そういえばあんなことがあってから曜日なんて気にしてなかったな。」


あの日、地球に隕石が落ちたあの瞬間、僕らの星は見るも無惨な姿に変わってしまった。奇跡的に僕らはほとんど無傷で助かった。しかしほとんどの建物は崩れ、なんとか原型を保とうとしているものも、壁や天井に穴が開いていて、きれいな星空が壁紙のように貼り付いている。他に助かった人は、いまのところ1人も見ていない。


「やっぱり昔なじみの土地って分かるもんだね。こんなに酷い状態になっちゃっても…。ねぇあっち見て。昔、私達含めた幼馴染達で遊んだすべり台があった場所だよ。」


「ほんとだ。焼けちゃってるけど、土台になってたコンクリートがかろうじて残ってる。」


強がりだ。君の目にはうっすらと、でもしっかりと涙が落ちた跡があった。


「昔のことを思い出すのが辛いなら、どこか遠くへ行ってみないか。もしかしたら僕ら以外にも助かった人がいるかもしれない。」


「ううん。ここでいいの。いつ最後が来ちゃうか分からないしね。それに昔の事を思い出してると心が温かくなるの。」


「そうか。なら昔の事をいっぱい話そう。きっと楽しい終末旅行になる。」


「…うん。」


僕らの頭上には前よりずっとたくさんの星がきらきらと輝いていた。そんな景色を君はゆっくりと眺めていた。

                 おわり

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週末旅行 マッチゃ @mattya352

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