第4話 宗教

 教授は四聖の名を黒板に書いた。キリスト・釈迦・孔子・ソクラテスと。キリストはキリスト教を広め、釈迦は仏教を広めて宗教学として学ばれている。孔子は儒教を広めて倫理学として学ばれてきた。ソクラテスは哲学として学ばれている。


「四聖が説いたものは、宗教や倫理や哲学として、この世の中に残ったわけですが、その歴史の中の要求によって生まれてきたものでした。

 宗教にも様々なものがあります。主だった宗教を割合でみると、キリスト教が約25億1千万人(31.2%)、イスラム教が約20億7千万人(25.8%)、ヒンドゥー教が約11億9千万人(14.8%)、仏教が約5億1千万人(6.4%)、ユダヤ教が約1500万人(0.2%)、その他の宗教が約4億4千万人(5.5%)、無宗教が約12億8千万人(16%)となっています。

 世界的にはキリスト教が三分の一を占めています。しかし、日本においてキリスト教は、一割にも満たないものです。それは、日本の風土に合わないからでしょう。日本では昔から、人間が神になり得たのです。しかし、キリスト教では唯一神として、神の子キリストしか認めていないのです。


 キリスト教では人間を『罪』と捉え、仏教では人間を『苦』と捉えました。キリスト教では、その答えとして唯一神への信仰だったわけです。そして、仏教の答えは悟りがあるわけです。


 この唯一神ですが、ユダヤ教とキリスト教そしてイスラム教は同一と考えられます。それは、ユダヤ教の旧約聖書に出てくるヤハウェ、キリスト教の新約聖書に出てくるキリスト、イスラム教のコーランに出てくるアッラーの神についてであります。つまり、これらの宗教にとっての聖典は、時代と場所の違いこそあれ、同一の神の同一の啓示の異なった形と考えられるのです。


 ユダヤ教は、創世記、出エジプト記、レビ記申命、詩篇、イザヤ書などからなる旧約聖書しか認めていません。


 キリスト教は、イエスの言行を福音書として弟子たちによって記録(マルコ、マタイ、ルカ、ヨハネ福音書としてある)され、これにパウロら弟子の書簡(『ローマ人への手紙』などがある)や宣教活動の模様を記録したものからなる新約聖書と旧約聖書を合わせて認めています。


 イスラム教は、コーランだけを認めています。しかし、コーランの中は旧約聖書や福音書などから取り入れた箇所が多くあります。しかし、イエスの復活は認めていません。そして、コーランでは神が人類に授けた啓示が全体で140とされ、これらの経典のうちで最も神聖なものはモーゼに下された五書、ダビデへの詩篇、イエスへの福音書とムハンマドのコーランの四種と説いています。


 これらからも三宗教は、旧約聖書の唯一神から出発していると考えられます。


 この旧約聖書は、西暦紀元前1100年頃から紀元前150年頃までの約1000年という長い期間をかけて、改訂改編され続けたものです。そして、紀元後118年に最終的なユダヤ教聖典としてまとめられたわけです。

 この間、ユダヤの国民は敗戦の絶望の中で、実存的な信仰を反省し、徹底して神に帰る信仰運動を始めたのでした。その結果として、紀元前500年に、厳しくもおごそかな神信仰を持つ文書で旧約聖書の最初から書き換えられたのでした」

と、教授は講義した。



 私は、信仰を持たないため、旧約聖書や新約聖書に書かれている事が、嘘か本当かぐらいの興味でしかなかった。それが、どうしても唯一神を必要とする民衆に支えられて、今日に至った力強さに驚いている。

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