第4話
翌朝、俺は店の入り口のドアについているベルが鳴ったことに気が付き一回の店に降りてきたのだが―—
「人間、我の翼が傷んでしまったのだ。何か直すものを売っていたりはせぬか?」
「は、はは。いらっしゃいませ……」
初めてお店にやってきたお客さんはドラゴンでした。
まさかドラゴンだとは思わないじゃないですか。それもレッサードラゴンやハイドラゴンなんかの劣等種とは格の違う、伝説レベルの
苦笑いしかできなかった。王様とか人間なら接客したことあるけどドラゴンなんて接客したことだったの一度もない。
「ん、ああすまんすまん驚かせたな」
俺がどうしようか迷っていると、俺の前にいたドラゴンはハッとした声を漏らし、みるみると人間の女性の姿へと変化していった。
「人化魔法……初めて見た」
「ふふん、だろう? そこらのトカゲじゃ出来ん芸当だからな」
トカゲて……一応街一個消し飛ぶレベルの魔物なんですが。
それにしてもこのドラゴン、一体何者だろうか。俺の知識の中にはさっきの見た目のユニークドラゴンなんていないと思うのだが。
「あのー失礼な事お聞きするんですが、一体あなたは誰ですか?」
「我か、我は空龍ウラノス。星海の龍だ」
聞いたことがない。しかし見た目からただの
「と、まあ言ってもわからないだろうがな。なんせ我は永遠と星海を漂う存在だからな。今回はたまたま我が守護するこの地に降り立ったに過ぎない」
うーんいまいち内容が掴めない。
今回はたまたま守護していたこの地に傷んだ翼を癒すために来たとだけで、いつもは空より上の星海を飛び続けていたために今まで人に知られていなかったということだろうか?
多少は理解できたが、話のスケールがデカすぎる……
「そ、そうなんですね。ではなぜ街ではなく私の店に?」
とりあえずなぜ俺の店にやってきたかが気になった。ちょっと行ったところには街もあり、多くの人がいるというのに。
「それはただお主の魔力が純粋だったからに決まっておろう。街にも多少綺麗なものがおったがほとんどが霞んだ色をしておった」
「魔力が純粋?」
とりあえずドラゴンのことを理解するのは完成に諦めて会話に専念することにした。
「魔力は植物の光合成や物の燃焼など様々な自然現象によって生み出されるのは知っておるな?」
「はい。それは教わりました」
魔法学校で教わったことがある。
光合成や燃焼、蒸発など自然のさまざまな事象によって魔力が生み出されること。そしてその生み出された魔力には色があり、生み出され方によって火の魔力や水の魔力などに分類される。そんな感じだったはずだ。
「では生物がどのように色のついた魔力を取り込むか知っておるか?」
「それは確か魔法の解明できていない大きな謎の一つですよね」
魔力の取り込み方、禁忌とまで呼ばれる魔法の研究テーマだ。調べ方も何もかもがわかっておらず、多くの人々が研究しているはずなのに成果の一つも出ていない。
「そうなのか? 人間のことはよく分からぬ。しかし分からないなら説明してやろう」
「わかるんですか!?」
「当たり前だ、始祖龍だぞ」
始祖龍とかいう単語が聞こえたがここでは無視しよう。
ちなみに始祖龍というのは世界誕生の瞬間に生まれた五体の龍のことである。
いろいろ衝撃すぎて今までの人生が薄く感じてきてしまいそうだ。
「ものすごく簡単に説明するのならば、生物が体に色のついた魔力を取り込む時、体の組織に色を抜かれる。そしてその色が全て抜け切った魔力こそ純粋な魔力というのだが、通常の生物は特定の色が抜けない事が多くてな、その抜けきれなかった魔力の色こそ、その人物の得意とする魔法属性となるわけだ」
「なるほど……そうすると魔法の謎だと言われてきたさまざまな事に納得がいく」
ギリギリだが理解する事ができた。つまり俺はかなり特別な存在というわけだ。もしかすると俺の魔力を錬金する力もこの純粋な魔力というものがある事によってできる芸当なのかもしれない。
「と、こんなところだ。理解してもらえたな」
「一応はですがね」
理解したと言っても純粋な魔力の事だけだ。それ以外は理解するのを諦めてしまった。
「それで翼を癒す薬なんかはあるか?」
「多分あると思いますが、回復魔法などで直せないんですか?」
「傷んだものは回復魔法の範囲外でな、わざわざ欠損させると飛べずに星海に飲み込まれてしまうし一度地に降り立つしかなかたのだ」
そうだったのか、よくわからない魔法の知識を得てしまった。
言われてみれば確かにドラゴンは鱗を剥がすと自然と生えるまで生えてこないらしいし、回復魔法はかなり限定されたものなのかもしれない。
「魔法にも不便なところはあるんですね」
「ああ全くだ。あやつ制作がだるいなど言って途中から適当になってあったからな」
「すみません立ち話なんて、ぜひ中に入ってください」
絶対にスルーだ。絶対何か人間が踏み込んではいけない領域の話しをしていた。
俺は人の姿をしたドラゴンをついに店の中に入れてしまった。多分人類初なのではないだろうか。
「ん、ああ感謝する」
「いえいえ、種族は違えどお客さんという事に変わりはありませんから……お、あったあった」
店の奥に見つけたのは小さな小瓶と、その中に入ったハチミツのようにドロドロとした液体だった。
確かこれが髪などを癒す薬になったはず。多分翼にも使えるだろう。
「本当か!? 翼を出すから塗ってはくれぬか?」
「わかりました。では一度外に来てください」
流石に店の中であんな立派な翼なんて広げられたら大変なことになる。俺たちは一度店の外へと足を運んだ。
◆◆
「ここなら多分大丈夫でしょう」
「じゃあ翼だけ出すぞ」
俺たちは街と家の間の草原にやってきていた。
多分ここなら何にも邪魔されずに薬を塗布できるはずだ。
「ほっ」
「おお……」
ふわっという風の感覚と共に、出てきた星空のような翼に思わず声が漏れた。
ドラゴンの姿の時よりは少し小さいだろうか。それでも店の中では狭いほどの大きさだ。
「では塗りますねー」
「よろしく頼む」
俺は液を手に出せる分だけ出すと、その綺麗な翼に触れる。
すごい、ドラゴンの翼は全て膜だと思っていたのだが、とっても細かい羽がびっしりと隙間なく付けられていた。
そんな翼にべちゃべちゃとハチミツのようにドロドロした液体を薄く伸ばすように塗る。
なぜか完成した美しい絵に絵の具を思いっきりかけてるような罪悪感に襲われた。
「冷たくて気持ちがいいな」
「それならよかったです」
よかった、不快とかそういう感覚ではないようだ。
俺は一安心しつつ、液を翼に塗り続けた。
「やっと塗り終わった……!」
「感謝するぞ! それでこれはいつまで乾かせばいいのだ?」
そうだった。この薬乾くまで時間がかかるんだった。それに乾くまで布にくるんでおかないといけないし、さらにはこの薬は一ヶ月間毎日塗らないといけないんだった。
圧倒的に薬が足りない。仕方ない、家に帰ったら死ぬ気で作るしかないか。
「布にくるんで三時間程ですかね。それと、一ヶ月間毎日同じ作業を繰り返さないといけないんですが、帰る家はありますか?」
一ヶ月間飛ぶ事ができないため、家がないときついはずだ。ここは守護地とか言っていたような気がするし家くらいあると思うのだが。多分。
「ないぞ?」
「無いんですか?」
「そりゃ元々星海を飛ぶドラゴンだからな」
「そうですか……」
「お主の家に一ヶ月間住ませてもらえぬか?」
「……わかりました」
なかった。そして我が家に一ヶ月間ドラゴンが住む方になった。
*あとがき
面白い話を書くというのは難しいものですね。私の場合だとどうしても話が迷子になったり文章力の低さが露呈してしまうような文ばっかになってしまいます。
しかしそんな作品でも読んでいただきありがとうございます。
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