第二十二話 故国との交渉

 アルタクス様が「絶妙な人選だ」と言った理由が分かりました。


 これがもしも、ローウィン王国から派遣されてきたのがベルマイヤー以外の人物であったなら、私はあの追放事件の事を思い出して怒りを再燃させていたでしょう。これは使者が旧知の人物、国王陛下の側近の方や友人だと思っていた令嬢や、あるいは私のお父様であっても同様です。私は怒り狂い、アルタクス様に故国の使者を捕らえるように願ったかも知れません。そこまでいかなくても、接見の際に怒りを爆発させて使者を詰ったでしょう。隣国であるローウィン王国との関係はめちゃくちゃになってしまいます。


 しかし、相手がベルマイヤー。故国にいる頃にはまだ小さな子供で、私に「ねーさま」と懐いてくれていた彼であれば、私は何の恨みもないどころか懐かしさしか感じません。怒りの湧きようがないのです。そして随員の二人も私と面識のない人物でした。完璧です。流石はお父様の人選です。


 ひとしきり再会を喜んだ後、私達は向かい合って着席して話をしました。ベルマイヤーも使者らしい真面目な顔をして座って、私に理路整然と事情の説明をしてくれましたよ。


 まず、あの追放事件の後日談を聞きました。全て初耳でしたね。お父様が私を救うために奮闘して、あと少しで帝都に呼び戻せる所までいっていたという事を聞いて私は自分の短慮を嘆きました。後ほんの少し修道院で我慢していれば、私は王都に復帰して、王族や私を嘲った者に対して復讐が出来たのです。もちろん、帝国に来たからこそアルタクス様に出会えて今があるのですが、それはそれ、これはこれです。


 その後、怒り狂ったお父様がケルゼン様を修道院にぶち込み、国王陛下を幽閉し、事実上の国王になったと聞いた時は私は声を上げて笑いましたよ。いい気味です。流石はお父様です。ついでにあの女もどこかの修道院に送ったそうですけど、それでは手ぬるいですね。あれも売り飛ばして奴隷に落としてしまえば良かったのです。


 お父様は私の行方を必死で探しましたけど、つい最近まで私の行方は杳として行方が知れなかったのだそうですね。それが最近、国境に近接する土地の領主(エルムンドの事でしょう)から情報が齎され、レルーブ帝国の皇妃になったのが他ならぬ私であると知ったのだそうです。お父様は驚きのあまり椅子から転げ落ちたそうですよ。


 それで、結婚披露宴に招待されたのを機会に使者を送り込む事にしたのですが、私の性格をよくご存じのお父様は、これしか無いという人選としてベルマイヤーを送り込んできたというわけです。


「父上はカロリーネ姉様がご無事だと分かって大変喜んでいらっしゃいます。そして姉様が怒っているのは当然だと仰いました。姉様は怒ると怖いから、何とか誤解を解いて怒りを収めてくれるよう、私にくれぐれも頼んでいましたよ」


 元はと言えば、国王陛下の要請で私を王太子の婚約者にしてしまったのが間違いだったとも言っているそうです。そうですね。あんな愚かなケルゼン様に私は相応しくありません。私はアルタクス様のような偉大な方にこそ相応しいのです。


 詳しい説明を受けて、ようやく私は納得しました。少なくともお父様への怒りと恨みは解消出来ましたよ。なにしろ怒りのあまりそれまで辛抱強く仕えていた国王陛下を幽閉して王太子殿下を追放したのですもの。私への強い愛情を感じて私は胸が温かくなりましたよ。


「父上は『カロリーネが帰ってくるなら歓迎するが、おそらくそれは望まぬし夫の皇帝陛下も許すまいから望まぬ。帝国で幸せに暮らす事を祈っている』と仰っていましたよ」


 ……もちろん、私は帝国を離れて故国に帰る気などありませんが、そうなると遙かに遠いローウィン王国です。そう簡単には行かれないのですから、お父様とはもう二度とお会い出来ないということになるでしょう。ついさっきまでは違う意味で再会を願っていましたが、誤解が解けた今では愛するお父様に会えないのは寂しくて思わず私は涙を拭いました。


 事情の説明が終わると、ベルマイヤーは私とアルタクス様に言いました。


「ローウィン王国としてはこの先も偉大な隣国たるレルーブ王国とは今まで通りの関係を維持したいと思っております。姉様にもお力添えを頂ければ幸いです」


 それはもう、と言おうとした瞬間、アルタクス様の手が私の腿を軽く叩きました。思わず彼の事を見上げると、少し首を横に振るのが見えました。確かに、こういう外交上の判断を私がするのは越権行為でしょう。私はソファーに座り直しました。


「……今まで通りか。それが本音かな? ご使者殿」


 アルタクス様はベルマイヤーを少しきつい視線で睨みました。私としては幼い弟にはちょっと厳しすぎる態度なのではないかとハラハラしてしまいましたが、ベルマイヤーは恐れるでもなく微笑んだままでアルタクス様を見上げています。


「どういう事でしょうか?」


「ふむ。普通、娘が隣国の皇妃になったのであれば、それを縁として我が帝国との関係を深めようと考えても良いのではないか? なにしろ、エルケティア侯爵は我が妻の父親。つまり私の義理の父になったのだからな」


 言われてみればそうかもしれません。娘が隣国の大帝国の皇妃になったなんてまたとないチャンスであると言えなくはありません。外戚として帝国の内政に干渉することも可能になるかもしれないのです。


 それなのに、やや敵対関係、という位の両国の関係を維持したいというのは随分遠慮がちだと言えなくもありません。


「我が父のお考えは私などには計り知れません」


「ふむ。君にも関係があることだと思うがな。我が義弟よ。君が王になるにはどうしなければならないか、を考えればいい」


 私は戸惑いました。ベルマイヤーが王に? どういう事でしょう?


「君の父上、エルケティア侯爵は王族の血を引く。王になる資格はあると言えるが、実際にはそれだけでは王になるには不足だ。だから今でも国王を生かして自分は摂政として全権を握るに留めている訳だな」


 確かに我が家はローウィン王家から分かれた家ですし、何度か王女が降嫁してきた歴史もあるようですから、王族の血を引く事は確かです。しかし、王族としては認められていませんから王にはなれません。それにしてもアルタクス様が随分とローウィン王国の内情に詳しい気がするのですが?


「しかしエルケティア侯爵は王太子を追放、国王を幽閉までしてしまっている。今更王族に権力を返したら王族からの報復が怖い。それで、侯爵は自分の息子。つまり君を国王にする道を模索しているのだ」


 お父様がご自分で国王になってしまったら、簒奪者の汚名を被ってしまいます。しかし曲がりなりにも王族の血を引く息子を王位に押し上げる分には、国内外からの反発は少なかろうと考えているのでしょう。悪くない判断だと思います。今更あの無能な王族に権力を返しても王国の滅びを早めるだけでしょうからね。


「で、そのためにエルケティア侯爵は神聖帝国のお墨付きを欲しがっているのだ」


 西方の諸王国は北方にある神聖帝国を盟主として仰いでいます。これはかつて聖地を目指して大遠征軍が興された時からの伝統ですね。神聖帝国の皇帝はローウィン王国も含む西方式の大女神教の最高司教が兼ねていますので、宗教的な裏付けを西方諸国の国王に与えているのです。つまり、西方世界では神聖帝国の皇帝兼最高司教が認めないと、国王として認められないのですよ。


 ですので、お父様は神聖帝国と交渉して、ベルマイヤーを王として認めるよう求めているのでしょう。そうすれば近隣各国(王族と血縁関係である場合が多いです)もローウィン王国の王位継承問題に介入出来なくなるでしょうからね。


 しかしアルタクス様、よくそんな西方の事情をご存じですね? 私がお教えした覚えはないので、ご自分で何らかの方法で学習なさったのでしょうけど。私が感心していると、アルタクス様はジッとベルマイヤーを睨みました。


 ベルマイヤーの方は相変わらず微笑んでアルタクス様から目を逸らしません。アルタクス様は真剣なお顔をなさると結構怖いのですよ。それなのに目を逸らさないベルマイヤーは結構胆力があるのだな、と思いました。


「どうだね。ベルマイヤー。そのお墨付き、私が与えてやろうか」


 私は驚愕しましたね。そ、それは……。


「私が義理の兄として、帝国の皇帝として、君を王位に押し上げてやろう。後ろ盾として、神聖帝国の皇帝などにひけは取らぬと思うが? 如何?」


 確かに我が帝国は、神聖帝国に勝るとも劣らぬ強国です。位置関係的にもローウィン王国の後ろ盾としては十分でしょう。


 しかしながら、西方世界において神聖帝国が宗主国の位置を保っているのは、神聖帝国皇帝が宗教的な権威も兼ね備えているからです。つまり、神聖帝国に刃向かうと皇帝から「破門」を宣告され、その瞬間からその王は神に選ばれた王としての資格を失ってしまうのです。そうなると西方の各国はその王を王と認めず、その国は交易からも弾かれ、場合によっては周辺の国から攻撃を受けてしまうことになります。


 ですから、簡単には神聖帝国との関係を断ち切る事が出来ないのです。断ち切るには宗教的な関係、経済的な関係、そして軍事的な関係をも断ち切る覚悟が必要になります。神聖帝国がローウィン王国に与えている、それら全てを我が帝国が保障しなければならないという事になります。


 そこまで考えて私は青くなりました。……ま、まさか……。


「何もかも、我が帝国が保証しよう。ローウィン王国に神聖帝国の者どもが手出し出来ぬように、私がこの手で守ってやろう」


 つまり、ローウィン王国の併合、あるいは保護国化です。ベルマイヤーの王位を保証するとすれば後者でしょうか。とにかく、ローウィン王国を西方世界から切り取って、帝国の勢力下に組み入れるという事です。これはそういう宣言なのでした。


「どうだ? 悪い話ではあるまい? 義弟殿?」


 アルタクス様の言葉に、ベルマイヤーはただ微笑んでいました。驚きに硬直しているのかもしれません。そ、それはまだ成人したばかりの彼には判断が付きかねることでしょうからね。こんな事を突然言われても彼も戸惑うばかりでしょう。私は思わず助け船を出そうとしましたが、さりとて何を言って上げたら良いのかと悩んでしまいます。


 しかし、しばらくの沈黙の後、ベルマイヤーが口を開きました。


「そのお話にはちょっと難点があると思います。偉大なる皇帝陛下」


 ベルマイヤーは麗しくまだ愛らしい顔をふんわり微笑ませたまま言いました。


「ほう? どのような難点だ? 聞こう」


「まず、我が王国と帝国の宗教の違いです。同じ大女神様を崇めているとはいえ、王国と帝国では信じ方が違います。そして我が王国の民はほとんどが西方式の信じ方をしていて、帝国式、東方式の信じ方をしていると異端として糾弾されます。我が王国の国王も当然西方式の信者でなければなりません」


 私の懸念した通りの事をベルマイヤーが言いました。しかしまだ幼く見える彼が、怖い顔をしているアルタクス様に向けてこれを整然と説明したことに私は内心驚きます。これは、この弟は私が考えているよりも度胸もあって賢いのではないでしょうか。流石は私の弟です。


「我が国は既に、国王陛下を幽閉している事で神聖帝国や周辺の各国からの心証を害しています。これ以上それが悪化すると、神聖帝国の皇帝に破門されて我が国は周辺諸国から爪弾きにされて、孤立してしまいます。もしも陛下の後ろ盾を得ても同じ事です。我が国は神聖帝国の影響下にある諸国に囲まれているのですから」


 その通りです。交易を断たれ、神聖帝国とその従属国家に一斉に侵攻されたらローウィン王国はひとたまりもありません。そう簡単に神聖帝国から我が帝国に後ろ盾を乗り換える訳にはいかないのです。


 ベルマイヤーの言葉に、アルタクス様は感心したように頷きました。


「なるほど、年齢の割には正確な分析だ。流石はカロリーネの弟だな」


 しかし、アルタクス様はそこで覇気の溢れる表情でニヤッと笑いました。私でも背筋がゾクッとする微笑みです。流石にベルマイヤーの頬が引き攣りました。


「しかし、問題無いな。何もかも問題ない。結局は『先か後か』の違いでしかないからな」


「……どういうことでしょうか」


 ベルマイヤーが慎重な態度で質問をします。嫌な予感がすると顔に書いてあります。


「ふむ。つまり、ここで我が帝国に下らなければ、ローウィン王国は数年中にこの世から消えてなくなる」


 私もベルマイヤーも仰天しました。声も出せません。アメジスト色の瞳を爛々と輝かせて笑うアルタクス様を見詰めるしかありませんでした。


「もちろん、王国だけではなく神聖帝国もこの世から消してやるつもりだ。だから、遅かれ早かれローウィン王国の領地は我が帝国の内になる。先か後かの違いとはそういう意味だ」


 ……アルタクス様が西方遠征の野望を持っている事は、実は私は以前から気が付いていました。まだハーレムで二人で暮らしていた頃、彼からそのような話を聞いた事が確かにあります。その時は「では私も連れて行って下さいませ。そうしたら故国に復讐出来ますから」と私も無邪気に言っていたものです。なにしろ当時は鳥籠の皇子とその寵姫の女奴隷の戯言です。現実になるとはまったく思っていませんでした。


 しかしアルタクス様は本気だったのです。皇帝になられてからも西方遠征の構想を持ち続けて、それを具体化すべく考えて動いていたに違いありません。


 ベルマイヤーは真っ青な顔色になってしまいましたが、アルタクス様から一切目を離しませんでした。さすがに笑顔は浮かべられず、無表情でアルタクス様に質問をするのですから本当に大した胆力です。随行の二人の男性などは大きく口を開けて失神寸前の有様ですから。


「西方遠征ですか? 何代か前の帝国の皇帝がそれを企み、我が国を始めとする西方諸国の抵抗で断念を余儀なくされた事をお忘れですか?」


 そうです。アルタクス様のお祖父様もお父様も、西方遠征軍を興したものの、ローウィン王国を始めとする西方諸国の強い抵抗を受けて、結局は断念したという経緯があります。


 しかしアルタクス様は鼻で笑いました。


「そんな百年近く前の事は関係がないな。この百年で帝国は強大に、帝国軍は精強になっている。対して、神聖帝国はどうかな?」


 ……西方諸国は、この百年ばかり西方世界内部で戦争ばかりしています。おかげで国土は荒廃して、王の権威は弱まるばかりです。ローウィン王家がエルケティア侯爵家に経済的に依存するようになってしまったのも、近隣の国との小競り合いで王室予算が底を突いたからです。神聖帝国も内紛で大変な事になっているとは聞いています。


 それに比べて、帝国はこの百年で着々と発展していました。交易の富を蓄え、人々の交流は活発で、そして帝国はその軍事力で東に南に拡大を続けているのです。今や確実に西方の神聖帝国よりも帝国の方が強勢でしょう。


「今の帝国の実力なら、少なくともローウィン王国など鎧袖一触。問題にもならぬ。それにローウィン王国は周辺諸国との関係が良くないと言ったな? 帝国の侵攻があった時に、果たして百年前と同じように神聖帝国や周辺諸国が救援をしてくれるのか?」


 お父様は国王陛下を幽閉して実権を握った事で、王家と血縁関係にある周辺諸国の王家との関係が悪くなっているのでしょう。その状態で帝国の侵攻を受けた場合、神聖帝国がローウィン王国の救援を、周辺諸国に命じても応じてくれない可能性が十分にあります。


「もしも君が私の後援を断るのなら、私は実力で蹂躙してローウィン王国を奪い取るだけのこと。先か後かというのはそういう事だ」


 つまりベルマイヤーがアルタクス様の提案を受け入れて、アルタクス様の後ろ盾で即位すればそれはそれで良し。ローウィン王国は帝国の保護国になり事実上帝国に併合される事になります。


 もしもベルマイヤーが断れば、アルタクス様は実力でローウィン王国を滅ぼして併合するだけ。


 どちらに転んでもアルタクス様は構わないと仰っているのです。


 その自信溢れる言葉と態度に、私の心はときめきました。さすがはアルタクス様。私の最愛の夫です! 欲しいものは奪い取り、邪魔するものは踏み潰す。そういう覇気ある姿こそ帝国の皇帝に相応しいものです。そうです。兄君に帝位を譲って大人しくハーレムに引き籠もっていたあの遠慮がちなアルタクス様はもういません。大帝国の皇帝として、彼も立派に成長なさっているのです。


 アルタクス様の言葉に、ベルマイヤーは暫く固まっていましたが、やがて何故かニコッと可愛く笑いました。


「なるほど。陛下のお心は分かりました。しかし、宗教の問題はどうします? ローウィン王国の民の全てに改宗を強制する事は出来ませんでしょう? それとも、皆殺しするおつもりで?」


 ベルマイヤーの言葉に、私は虚を突かれました。そうですね。そう言えば、西方世界では西方式大女神教徒以外の者は王族から庶民に至るまで一人もいません。異端として糾弾され、土地を追われてしまうからです。西方ではそれが常識なのです。ですけど。


「君は知らぬのかも知れぬが、帝国では宗教は基本的に自由だ。何処の何の神を信じようが問題にはならぬ。ただ、公職に就くことは出来なくなるがな」


 そうなのです。帝国内部には西方式大女神教徒の他、遙か東の珍妙な偶像を拝む宗教の民もいれば、太陽を本尊として崇める者達もいて、その神殿すら帝都には沢山建っています。帝都視察の時に西方式大女神教の神殿を見付けたときには驚きましたね。


「ローウィン王国を保護国にする場合、君の改宗も求めぬ。併合する場合は、まぁ、言う必要は無いな」


 その場合は王族は国を追われるのですから、改宗を云々する必要はありませんね。


 ベルマイヤーは驚いた様に目を見開き、そして何故か面白そうにクスクスと笑っています。そして私の方を見て言いました。


「なるほどなるほど。姉様ほどの人が見初めるわけですね。凄い方だ」


 そして、彼は真剣な、鋭い視線をアルタクス様に向けました。ややもすると無礼なほど怖い視線でしたね。


「では、それはよろしいでしょう。しかし、私が義兄様に従ったと知れた途端、ローウィン王国には諸国からの軍勢が流れ込む事になるでしょう。そうした時、帝国はどのように我が国を護って下さるおつもりか?」


 それくらいローウィン王国は危機的状況なのだということでしょう。お父様が手練手管を使って何とか諸国からの干渉を退けているのでしょうね。それが、帝国の保護を受けてベルマイヤーが即位したなどということになれば、神聖帝国はすぐにベルマイヤーを破門して、諸国はベルマイヤーを異教徒として一気にローウィン王国に攻め込んで来る事でしょう。


 それをローウィン王国一国で防衛することは出来ません。帝国の助けが必要です。その保証が成されない限り、ベルマイヤー、ローウィン王国としては迂闊にアルタクス様に従属するとは言えないでしょうね。


 ベルマイヤーの言葉に、アルタクス様は我が意を得たというように、満足そうに頷きました。


「大丈夫だ。とっくに西征の準備は出来ておる。ローウィン王国が城門を開けば、帝国は王国をただ通過してそのまま西へ、北へ侵攻するだろう。半年もあれば神聖帝国の帝都ヴィーリンは炎上してこの世から消え去るであろうよ」


 自信に満ちたアルタクス様の言葉に、私はもう胸が一杯になり目が潤みました。それに対してベルマイヤーは微笑みながら顔中に汗を浮かべていましたね。

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