第二十一話 結婚披露宴

 私は皇妃になって宮廷での政治にも精力的に取り組んではいましたが、本業である「妻」の役目も忘れてはいませんでした。


 妻の役割は「家」の管轄です。特に私の場合はハーレムの管轄を意味します。


 ハーレムの統括こそ皇妃である私の第一業務なのです。ですから、私はどんなに政務が忙しくなっても何日かに一回は出仕しない日を作って、ハーレムの諸問題を解決する日に当てました。


 結婚して一年くらいが経過した段階で、ハーレムには夫人が三人、寵姫が二十人いました。夫人はアレジューム、クワンシャール、ルチュルクで変わりありません。寵姫はかなり増えていますね。ただ、寵姫とは言っても寵愛の程度には差があって、一回だけ閨に入っただけでその後は寵愛されていない者もいれば、アルタクス様が気に入って何度も閨に入れる者まで様々でした。


 これはシャーレを献上してきた貴族の顔を立てて、一応寵姫として扱わなければならないから、アルタクス様に手を付けて頂くという事があるからですね。有力な大貴族から献上されたシャーレを放置すると、アルタクス様とその貴族の関係が悪くなってしまいます。


 この場合、私が第一夫人としてハーレムから出ず、大貴族と直接会わない立場であれば、そういう配慮はアルタクス様ご自身がしなければならないのですが、皇妃である私は大貴族と直接接見しますので、彼らの希望を自分で汲むことが出来てしまいます。政治的に重要な貴族はどうしても疎かには扱えません。


 一応義理で、という感じで閨に入れても、それで妊娠してお子が生まれる事が無いわけではありません。生まれなくても最低限の配慮はしたと言えますから、それでアルタクス様とその貴族の関係が悪くなる事はありませんでしょう。


 私がサルニージャを出産してすぐ、アレジュームの懐妊が発覚して、その後無事に女の子を産みました。アルタクス様の初めての女児です。私もアルタクス様も大喜びしましたよ。彼女は私の次にアルタクス様の寵愛が深いシャーレです。事件の事もありますから、彼女が子を産めて私もホッとしました。


 その他に、寵姫が二人妊娠しました。キルリーヴェとレンツェンです。この内キルリーヴェは私の最側近の一人ですが、レンツェンは大貴族への配慮として寵姫に上げたシャーレです。アルタクス様はお気に召したようで、何度か閨に入れていました。勿論ですけど私に服従を誓っていますので、子がもしも男の子でも問題はありませんでしょう。


 私の愛児サルニージャはすくすくと育っていまして、もうトテトテと歩きます。可愛くて仕方がありませんが、私は忙しくて朝夕に少し顔を見るのが精々です。勿論、乳母のクリュープがしっかり見てくれていますから心配は無いのですが、寂しいですね。私が。


 ハーレムの統制は三夫人に任せておけばほぼ問題無いと言えますけど、細かな問題はどうしても発生します。特に問題になりやすいのは序列問題でした。


 シャーレの序列に関わる問題はハーレムが続く限り避けられない問題でしょうね。実際先帝の三夫人、クムケレメ、ユシマーム、マビルーザ様の頃から、この三人の中で、誰が一番上かの争いがあったといいます。三人は仲自体は良かったのですけど、それはそれ、これはこれです。


 皇帝陛下が黄金の廊下を通ってハーレムにお入りになる時に、入ったところにある広間で女官以上のシャーレ、大体百人くらいは一斉に平伏します。この時、入り口に一番近い所にいるシャーレが最上位の者であるという暗黙の了解があるのです。


 特に陛下がお入りになった時に左にいる夫人が「お帰りなさいませ」と最初に言い、他の者が唱和します。この最初のご挨拶をする者が、シャーレの中では最上位の者とされていまして、私が皇妃として抜けた後はアレジュームが務めています。


 アレジュームへのアルタクス様からの寵愛は深いですし、娘もいてその娘をアルタクス様はずいぶん可愛がっています。ですからこの地位は揺るぎません。しかしながらその次、アレジュームの正面、つまり陛下がお入りになった時に右に座る夫人については争いが絶えませんでした。夫人の残り二人は茶色い髪のクワンシャールと銀髪のルチュルクです。


 この二人は大変仲が悪く、この場所を巡って争っているのです。悪い事に二人ともお子を授かっておらず、キルリーヴェとレンツェンの妊娠で地位が自分の地位が怪しくなっていると感じているようです。つまり、夫人の三番目の地位である事が確定してしまうと、妊娠した二人の寵姫のどちらかに夫人の地位を奪われるのではないかと恐れているのでしょう。


 確かに、もしもキルリーヴェとレンツェンのどちらか、あるいは二人共が皇子を産むような事がありますと、子の無い二人の夫人はかなり地位が怪しくなってきます。夫人は職位ですのでそう簡単にすげ替える事は出来ませんが、夫人よりも寵愛された寵姫の方がハーレムで大きな権力を握る事も大いにあり得ます。


 実際、特にレンツェンは妊娠発覚後にかなりハーレム内での勢力を拡大したようです。自分付きの女官の人数を増やし、下働きにまで褒美をばらまいて、自分の支持者を増やしているそうですね。


 ただ、これはある意味仕方がない面もあって、それまでそれほど地位の高い寵姫でなかったレンツェンは、女官も少なく支持者もいませんでした。それがいきなり妊娠して、身辺が寂しいことに不安を感じたのでしょう。実際、かつてはハーレムの中で、地位が低いのにお子を授かった寵姫に対して夫人や格上の寵姫から過酷な虐めが行われた事があるといいます。自分と胎の子を守るために必死で味方を増やしているのでしょう。それが逆に、下剋上を狙っていると夫人達に警戒されているのですが。


 もう一人の妊娠した寵姫であるキルリーヴェは、賢く知識もあって私の秘書役として宮廷に連れ出して重宝していたのに、妊娠されてしまって困りました。まさか妊婦を宮廷でこき使うわけにはいきません。その代わり、性格も安定して人望もあるキルリーヴェに、私はハーレムの問題解決に動いてもらうことにしました。お腹の子が安定してからですけどね。


 お子を授かった寵姫は特別な存在になります。皇子でも産めば「皇子の母」として更に特別な存在になるのです。キルリーヴェはそういう立場を利用して、ハーレム内のシャーレ同士の争いの仲裁に掛かりました。


 まずは夫人、争うクワンシャールとルチュルクの仲裁をしました。元々、キルリーヴェは私の側近で、夫人とは近しい関係です。キルリーヴェが夫人の地位を狙うような性格ではないことを二人は知っていますし、キルリーヴェの知性に一目おいてもいますから、彼女の言う事には夫人二人も耳を傾けたようです。


「皇帝陛下も皇妃様も、お二人の忠誠と献身をご存じですから、お二人から夫人の地位を奪うような事は考えていません。ですけど、お二人の争いが続くようならどうなるか分かりませんよ」


 夫人二人は納得して一応は仲直りしたようです。続けてキルリーヴェはレンツェンの元にも行って彼女を叱りました。


「貴女がそのようにシャーレの関係を掻き回すなら、皇妃様に言ってお子だけ残して貴女は嘆きの宮殿に入ってもらうと皇妃様は言っていますよ」


 レンツェンは反発したようです。彼女はかなり気が強い女性ですからね。アルタクス様がご寵愛なさるシャーレは意思表示がはっきりした者が多いのです。それとやはり妊娠して不安で気が高ぶってもいるのでしょう。


 結局、キルリーヴェでは説得仕切れず、私は直接レンツェンと会って彼女を宥めなければなりませんでした。さすがに私に直接叱られて彼女はシュンとなっていました。ただ私は、子を無事に産めば彼女を寵姫の序列の上位にして、必ず私が守るので不安に思うことはないと伝えました。なにしろ彼女の子はアルタクス様のお子。つまりは皇妃である私の子でもあるのです。無事に産んでもらわなければなりません。


 このような序列争いは頻繁に起こり、私は悩まされましたけど、これはハーレムという競争社会の宿命というしかありませんでしたから、ハーレムの管理者たる皇妃としてはこれも仕事だと思って取り組むしかありませんでしたね。


  ◇◇◇


 結婚して一年後、私とアルタクス様の結婚披露宴が開かれました。今更ですが。仕方ないのです。準備に一年掛ってしまったのですよ。


 なにしろ盛大な祝宴なのです。帝国全体から太守が集まり、近隣各国から祝賀の使節が派遣され、聖地から最高司教が来て下さり、遙かに遠い東の帝国や北方の神聖帝国からまで使節団がやってきましたからね。


 帝都や帝国の主要都市では祝祭が七日に渡って行われ、そこでは料理や酒が無料で振る舞われるそうです。贈られる祝いの品で帝宮の倉庫は溢れかえり、帝宮はいつもの倍以上の来客でごった返しました。


 もちろん私も大変でしたよ。披露宴の式次第を覚えて、ドレスの仮縫いをして。お祝いに来る貴族の相手をして、それに加えていつも通りの政務もおろそかに出来ません。披露宴の直前には過労で寝込んだくらいです。


 いよいよ披露宴の日、私は正装である七色のドレスに身を包み、皇妃冠を被って内廷から外廷の大広間に出ました。ちょっとした庭園なみの広さがある広間を人が埋め尽くしています。それどころか、人の群れは建物をはみ出して前庭にまで及んでいるようです。


 それどころか前庭に続く門の向こう、既にそこは帝宮外なのですが、そこまでびっしりと人が埋め尽くしていたようですね。私とやはり正装を纏ったアルタクス様、そして私が抱き上げているサルニージャが広間に入場しますと、そのとんでもない数の人間(帝宮に入れるのですからみな庶民ではありません)が一斉に平伏しました。ザーッと音を立ててです。その迫力に私は頬が引き攣り、サルニージャも驚いて目を丸くしています。


「ご結婚おめでとうございます!  皇帝陛下! 皇妃様! おお大女神よ! お力を持って聖なる一族たるお二人とそのお子を護りたまえ! 帝国に光あれ!」


 全員が平伏したまま一斉に私たちに祝福の言葉を贈ります。ビリビリと空気が震えましたよ。サルニージャが泣かなくて良かったです。この子は肝が太いのか、あまり泣かないのですよ。


 私とアルタクス様は皇帝のソファーに並んで座りました。サルニージャは乳母のクリュープに任せて控室に下がらせました。


 なにしろこれから主だった大貴族の挨拶をここで延々と受ける予定なのです。大貴族は贈り物をこれ見よがしに見せ付けて私たちに捧げ、長々と祝いの言葉を贈ってくれます。それが百何十人です。午前の礼拝を挟んで延々と続きます。こんなの、幼児に付き合わせたら病気になってしまいます。


 私だって動き難い正装で身動きもせず座り、微笑みながら全員に労いと感謝の言葉を掛けなければならないのですから大変でした。礼拝の時間にこっそり食事をしてトイレを済ませ、午後の半ばまで頑張りましたよ。


 挨拶が終わると、そのまま祝宴が行われます。この際には広間に大貴族か宮廷に使える官僚と軍人だけが残ります。それでも二百人は超えていましたね。料理と酒が出され、皆の前に並べられます。この時は伝統的な床に座っての飲食になります。


 楽師たちが呼ばれ華やかで楽しげな音楽が奏でられます。ただし、ここにいるのは全員男性です。このような場には女性は出ないものだからですね。皇妃である私は唯一の例外です。


 この時、儀式として一杯の大杯を全員で回し呑むという儀式があります。両手で持つような大杯に満たされたワインを、出席者全員で回し呑むのです。もちろん、本当に呑むのではなく(二百人以上ですから本当に呑んだらとても足りません)口を付けるフリだけをする儀礼です。


 同じように大皿から料理を取り分ける儀式もあって、この場合は本当にちょっとずつ料理を皿から取りますから、この場合は水瓶のような大皿から取り分ける事になります。


 皇帝、皇妃と全員が同じ杯から呑み、同じ皿の料理を食べることには、血肉を分けるという意味合いがあるのだそうで、これによって皇帝と貴族達の間に擬似家族的な連帯感を持たせるのがこの儀式の目的なのだそうです。


 このような儀式は、帝国を創設した民族から受け継がれた伝統だという事ですね。西方には無い風習です。


 初日はこの挨拶と祝宴で終わりました。もちろん、披露宴は一日では終わりません。翌日はまた大広間で、今度は外国からの来賓の挨拶を受けます。


 帝国に関わりのある国、無い国も取り混ぜて、何十カ国もの国から祝賀の使節がやってきていました。


 目玉は海と砂漠を超えた、たどり着くまでに千日も掛かるという東の大帝国からの使節でした。絹で出来た見慣れないけど見事な衣服に身を包んだ者達が'平伏して、東の帝国の皇帝からの親書を差し出しました。アルタクス様が開いたその書状には、私でさえ見たことのない文字が、妙に太くそれでいて流量な線を描き出す筆記具で記されていました。


 言葉も通じず読めもしませんけど、通訳の官僚曰く、東の帝国は西の国の王の結婚を認め祝賀するという内容だそうです。東の帝国は自分達以外の国王は王として格下扱いするらしいのです。


 アルタクス様も私も気にせず使節に遠路遥々やって来た礼と褒美の品を贈りました。他所の国には他所の国の都合というのがあるものなので無礼だと思っても一々気にしません。


 北の神聖帝国の皇帝からも使節が来ていましたね。この国は西方世界の大国の一つで、帝国とは何度も干戈を交えてきた間柄です。どちらかといえば我が帝国の方が強い国ですので、神聖帝国はかなり我が帝国に敵愾心を持っていると聞いています。


 それでも皇帝の結婚に使節を送って祝意を奏上するのが外交というものなのでしょう。アルタクス様も私も何食わぬ顔をして祝意を受けましたよ。


 そんな風に何ヶ国かの使節と謁見しました後、次の使節の国の名前を聞いて私は流石に緊張しましたね。


「次、ローウィン王国の者達でございます」


 そうです。私の故国です。私を追放し、私が奴隷身分に落ちるきっかけを作った国です。私はお陰で最愛のアルタクス様に出会えて溺愛されて、皇妃にまでなりましたけど、それはそれ、これはこれです。恨みは忘れませんよ。


 ローウィン王国の使節は五人。そのうち二人は護衛の騎士のようでした。二人は初老の男性です。見覚えは……、多分無いと思いますけど、よく分かりません。そういえば私が王国にいたのはもう七年くらい前なのです。


 最後の一人は少年でした。? 位置関係からして、あの少年が使節団の最高位なのだと思います。だとすると、かなりの高位の貴族、あるいは王族なのではないかと思われますね。


 ですけど、重要な隣国である帝国のご機嫌伺いに高位貴族でも年若い者を送り込んでくる意図が分かりません。そして、ローウィン王国にはあんな年代の王族はいらっしゃらない筈です。王家唯一の男子がケルゼン様だったのですから。


 キラキラ輝くサラサラな金髪に、王国人らしい白い頬。顔立ちは凛々しく、大きな緑色の瞳は麗しいです。美少年です。類まれな、という形容詞を付けても不適当にはあたらないでしょう。年齢は恐らく十代前半。それだと私に見覚えがなくても仕方がありませんね。交流のなかった年代の子でしょうから。


 すると、私の隣でアルタクス様が身動ぎしました。そして呟きます。


「似ているな」


「はい? 誰にですか?」


「似ている。君にそっくりだ」


 言われて、私は改めて少年を見直します。金髪にエメラルド色の瞳。その顔立ち。……私にはどことなく私のお父様の面影があるように感じます。私はお父様に似ていると言われた事がありますから……。


 それで私は気が付きました。私に似ていて、お父様の面影がある少年。こ、心当たりがあります!


 私の七つ下の弟。私が王国を追放された時にはまだ六歳だった弟が私にはいます。


 愕然と私が見下ろす先で、少年は王国式に跪きました。


「初めてレループ帝国皇帝陛下並びに皇妃様に御意を得ます。ローウィン王国より国王陛下の名代として参りました、ベルマイヤー・エルケティア次期侯爵と申します。以後お見知りおきを」


 ま、間違いありません! ベルです! 私の可愛い可愛い弟ではありませんか! あまりのことに私は取り乱し、思わず立ち上がりそうになってアルタクス様に太ももを抑えられて我に返りました。


「間違いないか?」


 アルタクス様が厳しい表情で尋ねます、私は頷きました。


「それはもう。間違いありません。弟です!」


「……そうか。絶妙な人選だな。流石だ。カロリーネ。後で話す時間を作るから、ここでは待て」


 ……確かに、ここ皇妃が飛び出して隣国の使節と抱き合って再会を喜んだりすれば、来賓の各国の使節から本国に一斉に伝わってしまいます。ローウィン王国と帝国が密接な同盟を結んだ証拠と見做され、西方王国の間に激震が走る事でしょう。


 神聖帝国も黙っているとは思えません。そういう影響の大きさを考えれば、ここは自重すべきでした。私は必死に真顔を作り儀礼的な対応だけを心掛けました。


 この日も各国からの来賓の挨拶を受けたら、帝国式の歓待を致します。ただ、国内の者ではないので、結束を深めるためにする杯の回し呑みや料理の取り分けは致しません。ベルマイヤーも王国の風習にはない、床にあぐらをかいての飲食を笑顔でこなしていましたね。私が追放された時には本当に小さな子供でしたのに、成長したものです。もう成人しているのですものね。


 その日は話す機会はありませんでしたが、翌日、主要な国の使節を招いての接見が行われました。この時も東の帝国や神聖帝国から始まり、それほど大きくない上に友好国でないローウィン王国の順番は随分後でした。


 そしてようやくローウィン王国の使節の接見の順番になりました。アルタクス様と一緒に私がワクワクしながら待っていますと「ローウィン王国の方々が参られました」と入り口で宦官が告げました。


 許可を出すと、扉が開いて入って参りました。金髪の美少年が先頭で三人のローウィン王国の使節が入室してきます。そして私とアルタクス様の前で跪きました。そして挨拶の口上を述べました。


 私はもう待ちきれません。アルタクス様を横目で伺うと、彼は苦笑したような表情で頷きました。


「……ベル?」


 私が呼びかけると、頭を下げていたベルマイヤーがビクッと震えました。


「ベルなのね?」


「……本当に、カロリーネ姉様なのですか?」


 ベルマイヤーの声は震えています。私はウンウンと頷きながら言いました。


「ええ。カロリーネですよ。お姉ちゃんですよ?」


 ベルマイヤーがゆっくりと頭を上げました。顔色が真っ赤になっています。目が潤んでいます。


「本当に、本当に姉様なのですか?」


「ええ。そうですよ。可愛いベル!」


「カロリーネ姉様!」


 ついに耐えきれなくなった私はベルマイヤーに飛び付きました。ベルマイヤーも同時に私の胸に飛び込みます。


「カロリーネ姉様! 会いたかった!」


「ええ、ええ。会いたかったわ! 私も会いたかった! ベルマイヤー!」


 私の目からも涙が溢れます。私とベルマイヤーは歓喜の涙を流しながら、お互いの名前を確認するように、何度も何度も呼び合ったのでした。


 私が王都を追放されて以来、実に七年ぶりの姉弟の再会でした。

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