第5話 駆くんとゆかいな幼馴染ロリ5
「敗北を知りたい」
「勝ちヒロインを地で行く! ヒロインの鑑だね~」
「二戦とも野蛮人みてぇな攻撃だったが」
「超かぁいいメイド服で相殺だよ!」
「可愛いをかぁいいって言う奴は野蛮だぞ」
「嘘だッッッッッッッッッ」
「ツの量刃牙かよ」
そういえば、とつくしが疑問符を浮かべる。
「駆くんは魔法とか剣とか使わないの? 見たいな~」
「あ~……」
駆と友也が顔を見合わせる。駆はアホっぽい顔のままだったが、友也の方は更に心労の祟った顔に変わっていた。
「こいつはな……」
「僕はダンジョン内では何もできないのだ☆」
「え、どゆこと?」
「う~ん。よくわかんないんだけど、僕ダンジョン内で魔法とか武器とか何も出せないんだよね~。後なぜか攻撃も通らないんだ。おかしいよね。想像力は思春期ランキングトップレベルのはずなのに」
「実に無意味なランキングだな」
「それでどうやって戦ってるの……?」
「そもそも魔物が僕に攻撃してこないんだよ~。友ちゃんと一緒に入っても僕だけスルーされるし」
「魔物に仲間だと思われてんだなと、最近は思うようになった。字余り」
「酷い!?」
「でも探索者の爆発とかに巻き込まれて死ぬ時はあるよ~」
「良いことが何もない……」
探索者って言うのはダンジョンに入る人たちの総称的な奴だ、と友也が補足する。ついでに何か言いたそうな顔をしていたが、同時に言うべきか迷っているようでもあった。
どうせつまらないツッコミだろう、変に考え込んだツッコミはつまらないぞと心内で小馬鹿にしたつくしは、一つの疑問に辿り着いた。
「じゃあなんで駆くんはダンジョンに入ってるの? せっかくファンタジーなバトルが楽しめるのに、つまんなくない?」
「全然~! 安全圏から、友達が必死の形相で戦ってるのを見るのは気持ち良いよ! 至近距離の野球観戦みたいで!」
「危険思想のクズだ!?」
「ガヤ担クソ無能と呼ぶと良い」
「そうする」
「照れるな~」
「どの単語から照れる要素を発掘したんだ……?」
そこでくんくんと駆が鼻を動かす。
「向こうから転移陣の匂いがする!」
「陣の上で焼肉でもしてんのか」
「転移陣って匂いするんだ……」
「しねーわ。ドサクサに紛れて駆を嗅ぐなアホ」
「叩き潰すよ?」
「なんでお前は俺に対して野蛮なんだよ」
駆には、ダンジョン内の生物を含め、一切の構造物に対して干渉ができない。干渉ができないと言うのは文字通りで、攻撃はもとより掘削などもなぜか駆が行うとできないのである。
その代償なのか、駆はダンジョン内にある物や陣の位置を察知できる能力があった。便利な能力ではあるが、干渉不可の代償にしてはあまりに軽い。友也に言わせれば無駄な時短、とのことだ。
「だからあいつは探索担当、俺はその他担当ってことだ……」
「ふーん。まあアルファオスとベータ未満のペアの宿命ってとこだね。搾取上等!」
「喧嘩売ってんのかテメェ」
「事実だよ!?!?!?!」
「こいつ駆が絡むとただでさえ低い知能が更に下がるんだよな」
「むしろ上がってない? 見る目ないね」
「単語選択や配慮の知能が著しく下がってんだよ」
元からか。と呟いた友也に対し、つくしの正拳(想像力パワー込み)が後頭部に炸裂。発射された無反動砲の如く友也がすっ飛んでいく。
「うぐおおああああぁぁ!!!」
「やっほ~友ちゃん、そんなに急いで来なくても」
「これが能動的な行動に見えンのかメクラァ!」
頭からダラダラと血を流しながら友也が絶叫する。が、ダンジョンではよくあることなので駆は気にしない。
後ろからとてとてと、つくしも追いついてきた。
「てかさ~、これボス部屋っぽいよ」
「ふむ」
「血が消えてる……?! ってほんとだ、転移陣の真ん中に『ここ、ボス』って書いてある」
「このダンジョンはガキが作ったのか」
躊躇なく進もうとした駆と友也に驚き、つくしが待ったをかける。それもそのはずだ。二人とも着の身着のまま、買い物にでも行くかのような気分でボス戦に挑もうとしていたからで、今回が初ダンジョンのつくしが驚くのも無理はない。
「大丈夫だよ~、何回か死ねば攻略法も見つかるって」
「まぁ気楽にしろ」
「本当に死が軽すぎる……!」
「気楽に死ねるなんて最高じゃねぇかァ……」
「ノリノリだね~友ちゃん」
「……この狂喜の笑みを浮かべる男は、どうしてシャバで生きていられるの?」
「ほら、ダンジョンのボス戦なんてR-TY◯Eみたいなもんだしさ、どのくらいサクッと死ねるかで見るのが難易度把握は一番なんだよ~」
「ダンジョンって死にゲーなんだ……」
「ってこった。ほら行くぞ」
かるーく唆されるまま転移陣に乗るつくし。律儀に三人が乗ったのを確認すると、チーンと音が鳴り、『上へ参ります』と陣が喋った。同時に視界が揺らぎ、漫画で見るような上昇の線が視界を埋める。
「何今の?」
「そりゃエレベーターガールじゃない?」
「昭和の遺物じゃん?! ダンジョンはレガシーなの?」
「文化の肥溜めだね~」
「全てのダンジョン学者に謝罪しろ」
「あるよね~、無意味な学問」
「新規の既得権益だな、滅びるべき」
「友也くんは何の味方なの?!」
「正義の味方だ」
「キメ顔キモ」
「このロリ……!!」
そこでチチチttチチtttチtチチィン!!!!とMAD動画の編集のような雑な連打音が鳴り、浮遊感が収まる。
「この転移陣大丈夫? バグってない? 帰れるの?」
「使い捨てなのかもね~」
「開始地点が変わると覚えゲーの前提壊れちゃうよ!?」
「……なんか、ヤベーのいるぞ」
「え゛」
「お~!」
真逆の反応。
転移先は、地こそ整備された固い土のようなありがちなものだったが、地平線並みにだだっ広い。壁が見えない。ついでに天井も見えない。
そして目の前にいるのは、
『ドラゴオオオオオオオオン!』
『ケルベロオオオオオオオオオオス!!!!』
『ライオォン!!!!!!!』
『フニャアアアアアアアア!!!!』
二十ほどの怖そうな形相を備えたドラゴンもどきだった。
「最後のやつスペイン語版フタエじゃねーか」
「やっぱ神業繰り出すのかな~」
「イヨオオイ!」
「二人とも何のんきなこと言ってんの!? これさっきのケルベロスの比じゃないよ!? なんか……圧がすごい!」
「劣化ノブさんか」
三人、いや駆を除く二人を敵とみなしたのか、ドラゴン二十面相が全ての顔でブレスをチャージする。
「二人とも来るよ~! チャージ二十回ノーオプションバトル!」
「こっちにはボーグも防具もねぇぞ!」
「友ちゃん。ダジャレはサムい」
「突然シラフになるんじゃねえシバキ倒すぞ」
チャージが終了し、放たれる寸前のかめ◯め波のようになる。
これには対処可能なイメージが湧かないのか、その場でわたわたとするつくし。
「うわああ来るううう!」
「大丈夫つくしちゃん、何とかなるよ多分」
「どどどど どーすんの どーすんのーーーっ!!!!」
「あざと顔とあざとポーズをキメた!?」
「この女実は余裕綽々だろ」
避ける素振りも見せない三人のもとへ、容赦なく二十のブレスが襲いかかった。
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