第4話 駆くんとゆかいな幼馴染ロリ4

「流石つくしちゃん! 今ので経験値が百億万ポイントくらい入ったよ!」

「入るとどうなるの?」

「自己顕示欲が満たされる」

「悟った顔で低俗なことを抜かすな」

「んー、でもわたし強くなった気がするよ!」


 ふんす、つくしが力こぶを作る。しかし、残念なことにこぶらしきものは全く見当たらない。


「うん。ぷにぷにだね。半袖のメイド服から覗く二の腕の感触はまるでマシュマロン」

「つまり攻撃プレイヤーにダメージが……? あぁ、逮捕ってことか……」

「ちょっとぉ! わたしだって筋肉あるもん!」

「いやこの柔らかさはおっぱいと変わらないね」

「じゃあ確かめてみて?!?!」

「おい脱ぐなアバズレ!」

「いや……おっぱいじゃない! 二の腕には突起がないからおっぱいじゃない!」

「二の腕に突起あったらただの吹き出物だろ」


 その時、焼き払われた魔物の奥から人間の声が聞こえる。


「お前らー、何バカなこと言ってんだぁ」


 自らの横幅よりも大きなリュック(用途不明)を背負った色黒スキンヘッドのイケおじが姿を表す。声は低く、ちょうどいい具合に渋い。


「お!? ヒデオじゃ~ん! 何? 瑞希ちゃんくれるの?」

「お前みたいなボケにやる娘があるかァ! って、今日は女子連れか」

「あ、どうも、星崎つくしです」

「あぁ星崎さんとこの。東京に戻ってくるって話は聞いてたよ。覚えてるかな? 俺は鹿島秀夫だ」

「あー。はい、えっと、はい!」

「隠せてないぞ低知能」

「……ま、五年前より更に色黒スキンヘッドになったからな。わからなくても仕方がない」

「そんなに黒くなってねーだろ。人種ごと変わったのかよ」

「ま~僕らはヒデオと週三で顔を合わせる仲だし、小さな差の積み重ねなら気づかないもんだよ。もしかしたら……このおっさんは実は……黒炭なのかもね」

「そんな新生物は早く学会に発表して監獄にでも入れとけ」

「いや、お前らなぁ。もたもたしてる場合じゃねえんだって。俺は八十八階から来たんだが、あそこのドラゴンはやべぇ。一撃で俺のリュックが一個焼き消された」

「身代わりグッズだったのかそれ……?」


 すると、鹿島が出てきた奥の方からうめき声のような重低音が聞こえてくる。これがゲームであれば、強敵の登場かと身構えるところだ。


「あれ? さっきズラから――」

「ザラな」

「禿げがズラに反応しても手遅れだろうが」

「何を言う! これはスキンヘッドであって、決してハゲ隠しではない! 決して!」

「ん? てかさ、ザラはヒデオと和解したんじゃないの?」

「いや、ザラは俺の下半身を消し飛ばしたドラゴンだが、このドラゴンは俺のリュックを焼き消したドラゴンだ」

「狭い範囲に二体もいたらダメだろドラゴン! モ◯ハンかよ」

「どっちのドラゴンが強いの?」

「そうだな――」


 言いかけたところで、ピンポイントで鹿島目がけて熱線が飛んでくる。ザラのブレスともつくしの火砕流とも異なる、妙にSF臭い色彩のビームだ。

 そしてその熱線に全身をくまなく焼かれ、鹿島は断末魔と共に蒸発した。


「ほがあああああああああああああ!!!!」

「ヒデオ~?」

「黒いから熱を吸収しやすいのかもしれねぇな」

「緊張感どこ?!」


 目の前で人間が焼き消えたことに動揺するつくし。だが駆と友也を見ると、そこには心配も同情も何もなかった。


「え、だって死んじゃっただけだよ? すぐ入口にリスポンするって」

「この階まで上がってくんのは面倒だろうけどな」

「う~んここのダンジョン世界は人の命が軽いなぁ……」

「それが世界最大の娯楽場所たる所以だよ☆」

「脳みそ空っぽの奴が言うと逆に胡散臭ぇな」


 しかし三人が談笑していても、それを黙って見過ごすドラゴンではない。敵即殺がダンジョンのNPCこと魔物&モンスターズの役割なのである。


「そういえば魔物とモンスターって何が違うの?」

「何も違わないよ~。魔物っぽいやつは魔物、モンスターっぽいやつはモンスターってみんな言ってる~」

「どゆこと……モンスターの方がなんか強そうだけど」

「大体そういう認識だな」

「表記ゆれが修正されないまま取り返しがつかなくなった現場みたい……」


 待ちかねたドラゴンが『ゴアアアアアアアア!!』と怒りの咆哮と共にSF熱ビームを再び放つ。

 それに対し、つくしがドヤ顔で対峙する。


「人語を解さないモブ敵は去れ!!!!」

「唐突なラスボス化?!」


 つくしが大きな盾を空中に展開し、ビームを正面から受け止める。数秒の押し合いの後、つくしの盾が勝った。


「どんなもんだ! えへん!」

「いや~流石すぎるよつくしちゃん。この盾、デザインが千年の盾だね」

「つまりあのビームの攻撃力は三千以下か」

「次! 右手に盾を左手に剣を~!!!!」


 ビームを吐ききり硬直を見せるドラゴンに、ウィィンと盾を横向きにして紙飛行機のように飛ばす。


『ゴアアアア……』

「命中! 撲殺! 大喝采!」

「なるほどね~。これは右手に盾を左手に剣をで攻守を入れ替えたビッグ・シールド・ガードナーの攻撃ってわけか~!」

「わたしあんなにムキムキじゃないよ!」

「なんでお前らリアル遊◯王やってんの? 闇のゲームなの?」


 顔面に盾がめり込んだドラゴンはどうやら体力が0になったらしく、緩慢な速度で地に落ちそのまま消滅した。

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