第3話 駆くんとゆかいな幼馴染ロリ3

「いや、流石に文字数的に新ヒロイン登場は早くない?」

「そうだよ! わたしの可愛さがまだ全然書かれてないのに!」

「ミニスカツインテロリメイドは一枚絵で充分伝わるだろ」

「この作品に絵はつかないよ?」

「ならこの際AI出力で!!!! 呪文! 呪文!」


 やいやいと騒ぐ三人。ちなみにコケにされた腹いせに友也は五回ほどマッチョに暴力を加えてみたものの、微動だにしなかったため諦めて戻ってきている。


『貴殿ら、よろしいかな?』

「いつでもオッケ~」

「何がだ」

『不躾な頼み事と言うのは理解している。しかし、どうしても姫の行方が心配で……』

「う~~~ん」

「いつになく悩んでるな。どうせくだらんことだろうが」

「そりゃ悩むよ! 隣にこんなスーパー美少女がいるのに、姫ラベルのついた女なんて言語道断だもん! わたし負けちゃうよ!」

「コイツもくだらんな」

『頼まれては、頂けないだろうか』


 神妙な声を出すマッチョ。実際は腕組み仁王立ちのままなのだが。


「ん~、姫さんって美少女?」

『異世界の姫ですぞ!!!!!! 美少女でなければ死罪である!!!!!!!!』

「この不敬罪全裸はここで死刑にしろ」

「お! やっぱ美少女か~! よし決定! 探すよおっさん!」

『なんと!! ありがたい……やはり貴殿に頼んで正解であったな……そうだ、姫は金髪ストレートの清楚系、高学歴高年収、身長はそちらの幼女殿より七センチ高い』

「誰が幼女だとコラァ!」

「仮にも従者っぽい口ぶりのやつが、主に出会い系サイトみてぇなタグ付けすんなや!」

「やった~! 金持ち~! しかも色々教え込めそうな箱入り娘~!」

「え、駆くん何を教え込む気!?!? アレとかソレとか!?」

「そりゃもちろん、子作りのAから子作りのZまで懇切丁寧にね」

「子作りを二十六分割してきたら保健体育も仰天だわ」

「ずるい~~~! 先にわたしに教え込んでよ~~~~!」

『感謝する、カケル殿』


 ドラゴンの首がずいと下がり、感謝の意を示す。良いってことよ~、と謎のドヤ顔をする駆。


「ところで姫さんの名前は?」

『#%$”:・<^|}¥だ』

「Pardon?」

『#%$”:・<^|}¥、である』

「Oh,sorry.I can't speak English.」

「お前耳腐ってんのか。英語の欠片もねーわ」

『ふむ……やはり名は伝えられぬか……』

「前にも誰かに伝えたの?」

『あぁ。妙にシンパシーを感じる者に出会ってな。カシマ・ヒデオと言うのだが、その者にも捜索を依頼した』

「ヒデオか~!」

「鹿島のおっさんもあんたと一戦交えたのか」

『うむ。下半身を消し飛ばした後にシンパシーを感じてな』

「致命傷を与えてから気づいても遅えだろ」

「二人とも、鹿島さん? とは知り合いなの?」

「まぁ俺たちみたいな何でも屋の何でも屋みたいなもんだな。一家に一台あると便利だ」

「娘の瑞希ちゃんがチョー可愛いんだよ~」

「ほう。覚えたぞ。またデ◯ノート対象が増えたな……」


 そこで、ぽう、とマッチョが淡い光に包まれ始める。どうやらダンジョン内に顕現していられる時間には制限があるようだった。


『私は次、いつ来られるかわからぬ。姫様を、何卒……』

「任せて~、僕美少女と美女は絶対守るから!」

「多様性が怒り狂うぞ」

『私の名は、ザラ。名を伝えれば姫様は全て理解してくださるだろう』

「お前の名は普通に言えるのかよ」

「ざら ̄?」

「台詞にアクセント記号を付けるな」

『いいや、「ザ/ラ」だ。私のアクセントは「阿呆 ̄」ではなく「馬/鹿」で覚えてくれ』

「小学生未満の語彙力……!」

「なるほど、アスランね」


 低レベルな台詞を最後に、ザラは光に包まれて消えた。

 後にはドームのようにだだっ広い平地(なぜか程よく明るい)だけが残されている。


「むむっ、奥に多数の魔物の気配を感じる!」

「なぜか目が光ってんだから馬鹿でも見りゃわかるわ」

「え、どうしよう?! 襲ってくるのかな?! 襲われちゃうのかな?!?! いやーん!!」

「お前は何の感情なんだよ」


 駆たちの視線に気づいたのか、奥から人型の魔物、ゴブリンとかコボルトとかオークとかに該当しそうなそこら辺の連中がわらわらと出てくる。五十体はいるだろうか。集団で殺気立って向こうから現れる様子は、試合前のラグビー部辺りを彷彿とさせる。


「モンスタァ……モンス……モォンスタァ……」

「ゴブリン……ゴブゥ……ゴブリンッッ!!」

「オォーク……」

「コボルト」

「マモノオオオオオオオオオオオ!!!!!」


 魔物が重低音で威嚇する。その形相は今にも殺すぞと言わんばかりだ。


「ねぇ、素人質問で恐縮なんだけど、モンスターの鳴き声ってモンスターなの?」

「本当の素人はその枕詞で質問しねーんだ」

「う~ん、まぁモンスターや魔物にも色々あるし、ここの皆はそういう感じなんじゃない?」

「へぇ……なんか合コンで鼻息荒く自己紹介してる人たちみたいでキモい……」

「お前高一だよな……?」


 友也が疑問符を浮かべている隙に、そそくさと駆がつくしの後ろに逃げる。


「いけ! つくしちゃん! すごい魔法!」

「括りが雑すぎる!! 魔法とか初日で使えるものなの?! ほら、こういう現代ダンジョン系の作品ってスキルとかステータスとかレベル9999みたいなのあるんじゃないの?! 小学生男子思考レベルの!」

「何言ってんだつくし、ここは現実だぞ。スキルもステータスもレベルもない。そうやって何かを数字や文字で可視化しないと安心できないと言うのは二〇一〇年代以降を象徴するSNS時代の悪しき習性だ。可視化できるものなど、所詮はその程度の意味しか持たない。重要なのは内的な指向性の把握であり――」

「あー今そういうの良いから!!!! オークがオォーク! って言いながら来てるから! もう駆くんでいいや、わたしどうすればいいの!?」

「う~ん」


 駆が真剣な表情で考え込む。そしてグーサインと共に言う。


「撃てば、撃てる!」

「聞いて損したああああ」

「ほらつくしちゃん、何でも良いから適当にイメージして唱えて!」

「えーっとぉ…………火砕流!!!!!!!!!!」

「初回から思考に殺意が漲りすぎだろ」


 つくしの怒号に合わせて等身大の魔法陣が現れ、そこから灼灼とした溶岩が姿を見せたかと思えば、魔物の大群に向かって凄まじい速度で噴出していった。

 組まれた隊列に向かって火砕流が直撃し、前から後まで綺麗に焼き殺していく。


「ゴブウウウウウウウウ!!!!」

「オォーーーーークッッッッッッッッッ!!!!」

「コボルト」


 そして諸々の断末魔を上げ、全ての魔物は焼滅した。

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