第14話 夢の話



 ――約一年後。



 目を覚ました俺の目に知らない天井が映る。腕には細い管が繋がれていて、少し痛い。窓から差し込む光は眩しく、生きていることを実感する。


(俺、なんでここに……)


 するとそこにマオがやって来た。


「タクト! 目を覚ましたのね!」


 変わらないマオに安心した俺はふと「夢をみていた」と呟いた。

 「どんな?」とマオが訊くので、「マオがお姫様で俺が王子様になっている夢」と応えた。

 マオは興味深そうに「それで?」と促す。俺はそれに応えて「マオが魔物に連れ去られて、俺が冒険に出た」と言った。


「私って……」

「マオは俺の愛した人に良く似ている。それに、名前も同じなんだ」

「……」

「そして最終決戦。夢の中ではなぜかマオの声が聞こえた。私はここにいる、助けてと。確かに聞こえた」

「不思議ね。私も似たような夢をみたわ」

「マオもか」


 ふとマオは視線をそらし、「ところでこれ、廊下でおじいさんからもらったのよ。タクト、あなたにだって。この本、開いてみたけど、少しも読めない。タクトは読める?」と本を俺に渡した。


「こ、これは上級魔法の“ラスト・ミラー”についての本だ。魔法学校に在籍していた時、なぜかこの魔法だけ習わなかった。それに関連書物も処分されていた。なぜそれがここに……?」


「おじいさんが言ってたわ。愛する人の声が聞こえし時、汝はこれを使わんって」


「愛する人の声が聞こえし時、……か」


 そして、本を読み進めること約一時間。ようやくその本を読み終えた俺は、「まあ、向こうの世界にはもう戻れそうにないがな」とマオに聞こえるように言った。すると、「あるわよ」と意味ありげに応えた。


「えっ? 冗談はよせよ」

「こうするの」


 マオは唇を俺の唇に重ね合わせた。

 次の瞬間、まばゆい光が広がり、辺り一面を真っ白におおった。



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