第9話 桜の花びら



 ピンポーン! ピンポーン!


(ん? 誰だこんな朝早くに)


 ピンポン! ピンポン! ピンポン!


「うるっさいっ!」


 俺は痛みがひいた体を布団から起こし、立ち上がる。そして、玄関に行き覗き穴から外の様子をうかがう。するとそこにはタイガがいた。俺はドアを開けると「どうした、タイガ」と言った。すると、「タイガ先輩だろ? 以後気をつけろよ。これ、栄養ドリンク。やるよ」とタイガは返した。

 タイガは俺に栄養ドリンクを渡すと、「オレ、これから仕事だから」と言って、その場を立ち去っていった。


 俺は栄養ドリンクを一気に飲みほし、カーテンを開け、窓を開ける。視界には、タイガがコンビニに入っていくのが映る。


 しばらく窓から外を眺めていると、ひらりひらりと桜の花びらが俺の部屋に迷い込んできた。俺はその桃色の花びらを、外に逃がしてやった。

 アパートの庭にある大きな一本の桜の木は、桃色で彩られ、春らしい雰囲気を醸し出している。まだ、少し寒い季節。しかし、俺の心はどこかポカポカと暖かくなっていた。


 桜の木を眺めていると再び、ピンポーン! と音がなった。


「今度は誰だよ」


 ドアを開けると、そこにはマオがいて、「タクト、おはよう。体の調子はどう?」と訊くので、俺は「まあまあかな。とりあえず、動けるようにはなった」と応えた。


 するとマオは笑顔を作り、「じゃ、今日から仕事、よろしくね!」と言う。「えっ。まだ体が本調子じゃないんだが」と返したが、「仕事している間に本調子になるわよ」と言われた。

 マオは、「じゃ、コンビニ裏の事務所で待ってるから」と言って、コンビニに戻っていった。


 俺はマオが買ってくれた服に着替え、戸締まりをし、コンビニに向かった。



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