第6話 不気味な予感



 マオについていき、たどり着いたのは、洋服の量販店だった。


「ここ、安い割になかなか質がいいのよ」

「は、はあ」

「さ、好きなものを選んでいいわよ」

「俺はこの格好が気に入っているのだが」

「これから働いてもらうのよ。それじゃ動きにくいじゃない」

「……。お金……お金はどうする? 俺は持ってないぞ」

「んー給料前払いでってことにしたいけど、ここは私がおごるわ。感謝しなさい」

「そ、そうか。あ、ありがとな」

「あのね、一応私はオーナーなんだけど? 言葉を選びなさいよね」

「すみません、オーナー」


 俺が敬語を使うと、マオは笑って「やっぱり敬語は仕事の時だけでいいわ。それに普段はマオって呼んでいいわよ」と言った。マオの笑った顔を見ると、なんだか恥ずかしくなってきた。


「服、マオが選んでくれ」

「えっ。いいの」

「ああ。この世界のことは俺よりマオの方が詳しいからな」

「そう。じゃ、選ばせてもらうわね」

「頼む」


 俺はその店でサイズを測り、試着をした。マオは時々「うんうん」と納得しながら、カゴに洋服を入れていく。色はどちらかと言えば地味で目立たないものを選んでいる。どちらかと言えば地味な色の方が好きなので少し安心した。


 一時間ほど選んだ結果、カゴはいっぱいになり、マオは満足そう。レジに向かい、会計を終わらせたマオは、「約二万円の出費ね。タクトにはしっかり働いてもらわないとね」と俺に話しかけてくる。それに対して俺は「わかりましたよ」と返した。


「それじゃ、アパートに案内するわね。もう暗いから、はぐれないようについてきてね」

「わかったよ」


 店を出た俺達は、暗い夜道を歩いていく。

 その夜道には、微かな月明かりが不気味に差し込んでいた。



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