第4話 万引き未遂犯!?
「さて、どうしたものか……」
広い公園を隅々まで探したが、じいさんを見つけることはできなかった。それに、あの家らしき建物も消えている。
しばらくその場で立ち尽くしていると、夕日が公園に差し込んできた。
俺は公園に設置してある時計を見て、「もうこんな時間か……」と呟く。そして、ぐーっと腹がなっている。
「腹が空いたな。確かこの辺にコンビニという便利な店があったはず」
地図を取り出し、情報を読み取る。地図によると、確かにこの近くににコンビニがあるみたいだ。俺は少し足早にそのコンビニに向かった。
「いらっしゃいませー」
初めてコンビニというところにきた俺は、歓迎の挨拶に、軽く会釈をする。
(軽く会釈をしたけれど、これでいいのか)
入店した俺はカゴを持ち、手当たり次第に美味しそうなものをカゴの中に入れていく。
(ハンバーグ弁当にからあげ弁当、クリームパンなどの菓子パンに飲み物。良し、これぐらいでいいか)
いっぱいになったカゴを持ち、店を出ようとすると、「お客さん! 会計! 会計がまだですよ!」と大きな声で止められた。すぐさま店員が駆け寄り、「お金、払って下さい」と言った。しかし俺は「いつもは顔パスなんだが」と応えた。
「お客さん、冗談は止めて下さいよ」
(しまった。向こうの世界にいた時の癖が出てしまった。ここは別世界。今はこちらの住民。ここは大人しく……)
ふと視線を店員の顔に向けると驚いた。そこにタイガがいたのだ。
「ん? もしかして……タイガ?」
「なぜオレの名前を知っている?」
「俺達は固く結ばれた戦友じゃないか! 忘れるわけないだろ!」
「オレはお前のことは知らんぞ」
「俺だよ俺! タクトだ! 覚えてるだろ!?」
「……知らん」
「……」
「お客さん、お金払わないのなら、警察呼ぶから」
「金? 金ならここに」
向こうの世界でもしものために持ち歩いていた金が真っ白な紙くずになり、硬貨は石ころになっていた。
「はあー。お客さん、ちょっと後ろにきてくれる」
俺はタイガの後についていき、事務所に案内された。
「店長、万引き未遂を捕まえました」
机でパソコンを操作している女性が、こちらを向く。そして椅子から立ち上がり、こちらに向かってくる。その顔は近付いてくる度に、はっきりと視界に写る。
「ミ、ミユキ!?」
ゴツンッ!
タイガの拳が俺の頭にヒットした。
「店長だ! 言葉に気をつけろ!」
ミユキはクスクスと笑いながらも冷静に「私は店長のミユキ」と言った。俺は「俺はタクト! 覚えて……ないか……」と落ち込む。
「防犯カメラで事情は確認したわ。もうすぐ警察がくるから、大人しくしてなさい」
俺はガックリと肩を落とし、促された椅子に腰をおろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます