第3話 優れた学習能力



「じいさん、周辺の案内を頼みたいんだが」


「周辺の案内? この老いぼれにはそんな体力はない。それにお前さんはまず、基本的な読み書きができるようになることが必要じゃ。この近くに学習用図書館がある。まずはそこに行ってみるといい」


 じいさんは疲れた表情でそう言うと、重い腰を上げて歩きだした。俺は黙ってじいさんについていく。




 五分くらいだろうか、学習用図書館に着くとじいさんは、「ゆっくりと勉強するがいい、タクト」と言って、来た道を戻っていった。俺は、「じいさん、ありがとう!」と言って、学習用図書館に入る。


(じいさん、なぜ俺の名前を? まだ話してない気がするが……)


 ウィーン。

(自動で扉が開くとは、なかなかすごいな)


 中は少し暖房が効いていて、少し寒い外と比べると快適である。

 そして早速俺は、司書に訊いてみた。


「基本的な読み書きができるようになるには、どの本を読めばいいですか?」

「基本的な読み書き……ですか? それでしたら、漢字の本をおすすめします。小学生向けの本から読めば、段階的に理解できるようになるでしょう」


 渡された数冊の本をペラペラとめくる。

(これなら読めそうだ)


「ちなみにこちらはひらがな表です。必要な時にお使い下さい」

「ありがとうございます」


 机に向かい、一冊一冊丁寧に読んでいく。

(漢字というのは、部首やつくりなどで構成されていると。そして、音読みがあり、訓読みがある。漢字とは、なかなか深いものだなあ)


 一冊一冊丁寧に読んだのに、かかった時間は約一時間。


(易しい本だったのかな。次の本を司書にお願いしてみよう)


「すみません。中学生向けの漢字の本をお願いします」

「こちらです」


 次に渡された数冊の本は、中学生向けの漢字の本。それに加え、高校生向けの漢字の本も渡された。


「これらを読めれば、日常生活に支障はないでしょう」

「わかりました。読んでみます」


 俺は再び机に向かい、それらの本を丁寧に読み進めた。一文字一文字丁寧に読み、そして理解するように努めた。

 渡された本を全て読み終えるのに、約二時間かかり、小学生向けの本と合わせて、約三時間かかった。司書には「読むのが早いですね」と言われた。俺の魔法学習で培った理解力は衰えていないらしい。向こうの世界ではもう少し本を読むのが早いのだが。

 とりあえず、基本的な読み書きは修得したはず。俺は改めて地図を開く。すると、位置関係がスラスラと頭の中に入ってくる。


(す、すごい! これで一安心)


 司書にお礼を言って、学習用図書館を出て、公園に向かう。

 じいさんにもう一度会いたかったのだが、なぜかそこにじいさんの姿はなかった。



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