第2話 ここはどこだ



 チュン、チュン。


(鳥? 鳥の鳴き声がなぜ聞こえるんだ? 俺はさっきまで……)


 身体中に痛みを感じながら身を起こし、目を開く。するとそこには、身に覚えのない光景が広がっていた。


「こ、ここは……。ここはどこだぁぁぁぁぁあ!」


(ま、まずはフィールドの認識をしなければ……)

「空間よ、我に従え! “ディープ・サーチ”!」


 ……。


「ん? 何も起きない……」


 俺は再び手をかざし、「空間よ、我に従え! “ディープ・サーチ”!」と唱えた。しかし俺は、周りの空間を認識することはできなかった。

 そこに、「もしや、迷い人かな?」と老人に訊ねられた。それに俺は、「は、はあ」と応えた。


(と、とにかく、この空間を認識しなければ……。しかし、どうやって? 魔法は使えないみたいだし……)


「ここは別世界じゃよ。お前さんのいた世界とは全然作りが違う」

 しわくちゃの顔をもごもごと動かしながら、その老人は言った。


「じいさん! 何か知ってるのか!?」

「ほっほっほっ。まあ、ついて来なさい」


 案内されたのはダンボールを基本にブルーシートを被せた家らしきところだった。内部は散らかっていて、俺には何が何やらわからない。


「ほれ、この周辺の地図じゃ。大事に使ってくれよ」

「地図? 原始的過ぎないか? 魔法を使えば一発で……。あ、魔法は使えないんだったな」


 仕方なく地図を眺めたが、文字が読めない。地図を上から見たり、下から見たりしたが全く読めない。


「じいさん、読めないんだが」

「言葉は話せるのに不思議よのう。まあ、書き取りの練習をすれば、すぐに読み書きができるようになるじゃろう。とりあえず、ここは公園じゃ。覚えておけ」

「こうえん? ああ、公園ね」

「公園はみんなのものじゃ。だからわしも住まわせてもらってる。場所によっては規制されているが、ここは今のところは大丈夫」

「なんか大変そうだな、じいさん」

「お前さんもな。……。飯、おごってやろう。どれがいい」


 じいさんは円柱状の箱をみっつ取り出し、俺に訊く。俺は文字が読めないので、感覚的に赤い色の箱を選んだ。


「お前さん、勇気あるのう」

「は、はあ」


 じいさんは四角い箱の上にやかんを置く。そして次の瞬間。ボッ! 四角い箱から火が出た。


「! じいさん! “ファイア”は使えるのか!?」

「いいや。これはガスコンロと言って、ガスで火をおこす機械じゃ」

「そ、そうか」

「ちなみにこのやかんの中の水は、“ウォーター”の魔法で出したのではなく、あそこにある水飲み場からくんできたものじゃ」


「やっぱりこの世界では魔法が使えないんだな」

「その通り。お前さんといると退屈せんわ。」

「あまり嬉しくない言葉だな」


 ヒューッ!


 やかんが音を立てて水が沸騰したのを知らせてくれる。


「ほれ、もう水が沸騰した」

 じいさんはガスコンロの火を止めると、円柱状の箱に熱湯を注ぎ始めた。そして、ふたつの円柱状の箱に割り箸を乗せる。


「3分待つんじゃ」

「3分も待つのか!」

「いいから黙って待つんじゃ」


 ――3分後。


 じいさんは蓋を外し、割り箸で麺をすする。

「お前さんも食べなさい」

「い、いただきます」

 俺は蓋を外し、割り箸で麺すする。

「! ケホッケホッ! 辛い!」

(じいさん、勇気あるってそういうことか。しかし、辛い! 美味い!)


「無理はするな。いらないならわしがもらうが?」

「いや、これは俺がいただく!」


 じいさんの説明によると、これはカップラーメンというものでだいたいのものが3分でできあがるらしい。そして、色々な味があるらしい。向こうの世界では、こういうものはないので少し感動した。

 カップラーメンを食べ終わった俺は、じいさんに周辺の案内を頼んだ。



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