第10話 副作用
最近は、後宮内で毒殺が流行りだしていたらしい。龍厳皇帝は、いくら手を打っても一向に収束しないそれらの事件を危惧し、占いの力を頼ったのだった――。
「答。それでしたら占う必要もありません。犯人はこの宦官ですよ」
私でない私が指さした宦官は、少年のような若い宦官の
「そんなわけないだろう!」
こんどは足で地面を叩き、怒りを露わにする。若いが故に、感情の起伏が激しいようだ。
「虚。果たして本当にそう言い切れるでしょうか。疑わしい人物を処罰しても事件が収まらないということは、裏を返せば意外な人物が犯人と言えるでしょう」
「意外な人物ってだけで犯人にされてたまるか!」
「真。先ほど、我の顔を拝んだことがあると言っていましたね。それは本当ですか? 余はあなたの顔に見覚えはないですし、本当は我の占いの力を恐れて、偽者にしてしまおうと企んでいたのではないですか。あのときは、あの場にいたほとんどんの者が我を偽物と疑っていました。そんな状況下で、あえて他者を誘導しようとする人物など、犯人以外、考えられない行動ですよ」
「よし! その者を捕えよ」
低く威厳のある声だった。龍厳皇帝の命により、景陽は刑部の者たちに捕えられ、何処かへ連行されてしまった。
「一生恨んでやる。覚えておけ~」
景陽の声が耳に残った。
これって、私と一緒じゃない?
<快。ハーッ、すっきりしました。なので、体はお返しします>
(本当に景陽が犯人なのか?)
<否。そんなの知りません。ただ、我を偽物扱いしたのが気に入らなかったからにすぎません>
(それは駄目でしょう)
<疑。少しは驚いたらどうですか。普通、頭の中だけで会話は成立しないのですよ>
(そ、そうだった。これってなんなんだ?)
<真。平たく言えば『死の接吻』の副作用のようなものです。今まで干渉はしてきませんでしたが、お前が見てきたものはすべて我も見ていたのです。今回はかなりの力を使ってしまいましたのでしばらく干渉できないと思います>
(ちょ、そんな説明、信じられると思う?)
返事はなかった。
偽物でありながら、偽物疑惑を回避することはできたが、面倒ごとが増えてしまった。毒見役である華鈴の護衛と、麗鳳のとばっちりを受けて刑部に連行されてしまった景陽の救出だ。
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次回予告
まさかの百合展開!? こうご期待。
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