第22話 置き手紙

 こんな事態になったのは私のせいだ。

 

 沈んだ気持ちで、月華宮に戻ると、門の前で見知らぬ宦官に声をかけられ書状を渡された。


「がっはっはっー。また、とんでもない事態になったなー」


 書状の内容を確認した天鷹が笑い飛ばす。


 ここで深刻な顔をされるよりはよっぽどよい。正直助かったし、涙もでそうになった――厳つい顔を見て、涙は引っ込んだ。


 私はこの沈んだ気持ちをなんとかしようと、大好きなお菓子作りを始めたのだった。


(こんなときは双皮奶ミルクプリンに限る)


 

 できあがったお菓子をみんなに配り終えたころ、幻龍が返ってきた。



(ちゃんと聞かないと……)




 ◇◇◇




 私は、夜の後宮を全力疾走していた。ときより物陰に隠れる。長年染みついた癖はもうなおらない。


 幻龍に隠しごをされたことが、こんなにも私を嫌な気持ちにさせるなんて知らなかった。このまま彼と話し続けていたら、私の知らない嫌な部分がもっと見えてしまそうで怖くなった。だから広間を飛びだした。


(この感情っていったい……)


 それからしばらくの間、意味もなく走り続けた。


 庭園では、宦官と妃の密会(逢引き)を覗き見たが以前のような興味は湧かなかった。仕方なく月華宮に戻ると――すでに幻龍の姿はなかった。



 代わりに一枚の置き手紙が、半分に折られて部屋の扉の隙間に挟まっていた。


 上質な白い紙で手触りがよかった。



『極秘任務につき真実を言うことができなかった。それでも、適当な理由を言って誤魔化そうとしたことは事実。そのことを恥じる。すまなかった――幻龍』



 私は手紙を前にして首を傾げた――よ、読めん。


(いったいなんて書いてあるんだ? 幻龍)




 追放まであと4日。




――――――――――――――――――――




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 次回予告


 紫霞と景陽に意外な接点が!? こうご期待。

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