第19話 クリスマスイブ
2094年12月24日。
病院からの帰り道、ジョンはショッピングセンターに寄って欲しいと剛に頼んだ。
「お義父さん、ショッピングセンターに寄って欲しいのですが」
「どうしたんだ、急に」
「エリーにクリスマスプレゼントを贈りたくて」
「そう言えば、明日はクリスマスだな」
「ええ。お願いできますか?」
「そういうことなら」
剛は行き先を音声入力し、車はショッピングセンターへと向かい始めた。
「ところで何をプレゼントするんだ?」
「ロボットの作製キットですね」
「ジョン、エリーは女の子なんだ。ぬいぐるみがちょうどいい」
「将来のためですよ。ロボットの知識の習得は早ければ早い方がいいのです」
「そんなもんか?」
「ええ」
ショッピングセンターに着いたジョンは真っ先にロボット専門店に向かった。エリーでも作れそうな簡単で手ごろなものを選びレジへ。無人のレジでジョンは日本語に少し迷ったが、なんとか電子マネーでの支払いを済ませた。
「ネットショップでも良かったのですが、直に見て買う方がやっぱりいいですね。特にこういうものは」
「んー。ロボットはあまり詳しくないんだよなぁ。ロボットってそんなに面白いものなの?」
「ええ、ロボットはとても興味深いものです。ロボットは人間の役に立ってくれるし、将来人間には無くてはならないものになるでしょう。現在でもロボットはとても重要な存在ですし――」
「ところで、それでエリーは喜ぶのか?」
「もちろん!」
ジョンの妙に自信ありげな態度に剛は少し引いたが、エリーに対する強い愛情を感じ、安心することができた。
「生まれてくる子のプレゼントは買ったのか?」
「いいえ。それは無事に生まれてくる日まで取っておきます」
「そうか……。名前は考えたか?」
「日本人らしい名前がいいなと思っていまして、司(つかさ)がいいなと思っています」
「司」
「司は物事を司るという意味がありまして、世界のリーダーに成長して欲しいという願いがあります」
「うむ。いい名前だな。マリーには伝えたのか?」
「はい。男の子であれば司でいいとのことです」
「そうか。無事に生まれてくれるといいな」
「はい」
ショッピングセンターから剛の家に移動中、ジョンは常にうきうきしながら楽しそうに窓の外の流れる白い雪景色を眺めていた。
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