番外編3 夢




 夜、ジョンはシャワーを浴びに浴室に向かった。その途中、サラに出会った。

「サラ、君も泊まりかい?」

「ええ、そうよ。ジョンも?」

「ああ、気づいたら外が真っ暗でね」

 肩までかかる髪をタオルで乾かしているサラからシャンプーのいい匂いがした。

「あまり無理しないで」

 サラはそう言うと、宿直室に入り、カギをしめた。

 ジョンはサラのシャンプーの残り香に「何のシャンプーを使っているのだろう」と疑問が浮かんだ。しかしすぐに、「まあ、関係無いか」と思い改めた。

 ジョンは浴室に入ると、服を脱ぎ、シャワーを浴びる。体を洗い、髪をシャンプーで洗った。

 体に付いた水滴をタオルで良く拭き、新しい服に着替える。パジャマでも良かったのだが、明日も仕事で忙しいので、そのまま仕事のできる服装にした。

「疲れた」

 簡易ベッドに横になるとジョンはそう言った。


 夜中、ジョンは夢をみた。


 人間とほとんど区別のできないロボットが大量に生産されている。表情も豊かで、人間のクローンのようだった。

 工場長は言う。

「ロボットがわれわれの未来を築く」

 ジョンは黙っていた。確かにそうだとは頷けなかった。

 ベルトコンベアーの上を流れるその大量のロボットは、まるで軍隊のようにも見えた。


 Emergency! Emergency!


 工場内に警報が流れた。


 This plant may be hacked. We are stopping energy.


 工場内の電源が落ちた。工場長は「最近不届き者が多くてね」とため息をついた。

 その場には工場長とジョンしかいないはずだが、不意に後ろから肩を叩かれた。ジョンが振り向くと銃口が額を狙っていた。薄暗い中ではっきりとしないが、やはり、ぼんやりと銃の形が浮かんでくる。

「や、やめ――」


 ジョンが夢から覚めると、サラのいる宿直室からクラシック音楽が壁を通して聴こえていた。防音設備の乏しい宿直室周辺はやたら音が響く。

「あの夢はいったい何だったんだ」

 ジョンは頭を抱えた。そしてひどく汗をかいているのを認識した。

「もう一度とシャワーを浴びるか……」

 ジョンは立ち上がると、浴室へと向かった。

 ジョンが部屋を出た後、その部屋には当然の如く、クラシック音楽が響いていた。



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