第8話 後輩1



 開発室に戻ると、先ほどの後輩がサラと話し合っていた。

「もうやってられませんよ。10日連続出勤だし、この前なんて1ヶ月も休みなしで出勤ですよ。もう無理です」

「君がつらいのは分かるわ。でもチームとして最後まで協力して欲しいと思う」

「しかし……」

「明日は休んでいいわ。その次の日も君の判断に任せる。来るか来ないかは君しだいよ」

「……わかりました」

 後輩とサラの会話を立ち聞きしていたジョンは、その会話が終わると後輩に「俺達はいつでも待っている。俺達は君に期待している」と伝えた。その後輩は少しうつむきながら開発室を出ていった。

 ジョンは自分のデスクに戻ると、コンピューターのスリープ画面を解除した。コードが無数に記述されている画面にカーソルを動かし、クリック。続きを記述し始めた。

 カタカタカタカタカタカタカタカタ。

 キーボードを叩く音が開発室に響く。ある社員はその音はまるでシンフォニーのようだと、またある社員は雑音でしかないと言う。だがジョンはキーボードを叩く音をそのように思ったことはなかった。ただ音は音と割りきっていた。

 集中して取り組むジョンに終業の鐘がなった。

「もう少し。区切りのいいところまでやるか」

 指を休めることもなく、コードを記述し続ける。


「今日はこのくらいにしよう」

 ジョンが時間を確認すると22時を過ぎていた。

「もうこんな時間か。明日も忙しいから今日は泊まりだな」

 会社に泊まることにしたジョンは、マリーにメールを送った。


 “今日は会社に泊まる”


 するとすぐに「体に気をつけて」と返信がきた。そこにはエリーの可愛い写真が添えられていて、ジョンはエリーの姿に癒されるのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る