第5話 再会と未来への警告



 1ヶ月後、ジョンはうきうきしながらケーキをテーブルへと運ぶ。そのイチゴのショートケーキのクリームが不注意で手に付いた。ジョンはそれを舐め「うん、美味しい」と言った。

 準備ができるとジョンはエリーを抱くマリーをテーブルへ促し、椅子に座らせた。

「美味しそうなケーキ!」

「高かったんだ。美味しいに決まっている。さ、食べよう」

 マリーが一口食べると、ついでエリーも手を伸ばす。まだ幼いながらも、これが食べ物だと認識しているようだ。が、赤子はなんでも口に入れるとジョンは雑誌から知識を得ていたので、「これはまだ理解していないな」と思うところもあった。

「あぅ~、う、あ、あぅ~」

 まだ言葉を話せないエリーは何かを必死に訴える。マリーはケーキのクリームをエリーの口に運んだ。

「きゃっ~、あ、あぅ~」

 笑顔で喜ぶエリーはまた手を伸ばす。

「後は大きくなってからにしましょうね」

 マリーはエリーに哺乳瓶をくわえさせると、背中を軽く叩きながら子守唄を歌う。

 そこにインターホンが鳴った。

「きっとサラだ。ちょっと見てくる」

 ジョンはサラを家の中へと招く。エリーと初対面したサラは「可愛い! エリーはマリー先輩に似ているわ! とても可愛い!」と大きな声で言った。そして頬にやわらかく触れる。

「これ、エリーにプレゼント」

 サラは思い出したように、プレゼントをジョンに渡した。プレゼントを確認すると、赤ちゃん用の靴下が入っていた。

「ありがとう、エリーに良く似合うよ」

「どういたしまして」

 マリーがエリーを寝かしつけるためにベビーベッドに向かった。するとサラは曇った表情になり、ジョンに「こんなときに申し訳ないんだけど、明日から仕事が忙しくなりそうよ」と告げた。

「仕事があることは良いことだ。問題ない。明日から頑張るよ」

「よろしく頼むわね」


 それからは三人で雑談を交えながら、未来の社会についていろいろと話し合った。

「楽しい時間が過ごせたわ」

「こちらこそ。また遊びに来てよ、サラ」

「私で良ければ」

 サラと別れた後、ジョンはマリーと一緒に久しぶりに料理を作り始めた。普段は機械が自動で料理――予め用意された食材を煮たり、炒めたりするだけだが――をしてくれるが。

 夕食後にジョンは読みかけの『ロボット社会』を読み始めた。20分後、ジョンはついにその本を読み終えた。


 “ロボットはやがて人を疎外する。人はロボット社会を受け入れてはならない”


 ジョンは忘れないうちにその本をマリーに返した。



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