第1話 エリーの誕生
2090年、某国にエリーは産声をあげた。青い瞳をしていて赤子ではあるが顔立ちが良く、両親はエリーの誕生を心から嬉しく思った。
「この子はきっと立派な女性に成長するわ」
「そうだな。もしかしたら、有名になるかもしれない」
「それじゃ、たくさん愛情を注がなきゃね」
両親はエリーを心より歓迎した。まだ泣きじゃくるエリーを抱き上げ、そして胸に抱き寄せ、額にキスをした。
母親はしばらく療養のために入院を強いられた。彼女自身は元気であると主張するが、医師は彼女に帰宅の許可を出さなかった。
(エリーは病院だ。何も心配はいらない……)
意外に難産だったため、側で彼女を励ましていた彼は心身ともに疲労を感じていた。長い時間つらかったのは彼女も同じ、いや、彼女の方が俺よりつらかっただろう。
「エリーが無事で良かった」
もしものことを考えると、背筋がゾッとする感じがした。
プルルル。プルルル。
そこに着信音が鳴った。上司からの着信。
「今すぐ会社に来てほしい。片付けなければいけない仕事が山積みなんだ。君も来れるか?」
「君も? 他にも誰か来ているのですか?」
「ああ、サラが来ている」
「サラがいれば十分だと思うのですが。わかりました、行きましょう」
「助かるよ」
携帯電話をしまうと車に乗り、彼は会社に向かった。
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