オーレリアン王子 2
一時間後に目を覚ましたリオンは、フィリエルを抱きしめていることに気が付いて大慌てで謝って来た。
どうやら寝付けなかったからフィリエルの顔を見に来て、そのまま眠くなって寝てしまったらしい。
寝付けなかったからフィリエルの顔を見に来た、というくだりはよくわからなかったが、彼が隣で眠っていたのはそういうことだったのだ。
でも、どうせ寝るならちゃんと布団の中にもぐりこめばいいのに、何故端っこ。
そう思っていたらその日の夜、リオンがとんでもないことを言い出した。
「あの~、陛下、本当にここで寝るんですか?」
フィリエルは途方に暮れた。
何故ならリオンが、フィリエルの部屋で、今朝と同じくベッドの端っこで眠ると言い出したからだ。
「むしろここがいい。どうやらここだと眠れるようだからな」
(なんで?)
わけがわからない。
「でも、そんな端っこじゃなくても……」
「端でないとダメなんだ」
(だから、なんで?)
眠れないからという理由で、フィリエルとリオンは生誕祭までの間別々の部屋で眠ることになっていたはずだ。
それなのに、リオンは何故かフィリエルのベッドの端っこで眠ることにしたらしい。
これなら一緒に寝ていたときと変わらない気がするのだが、リオンには違いがあるのだろうか。
(あ! もしかして端っこだったらわたしの寝相の悪さも影響しないのかしら⁉)
リオンはフィリエルの寝相の悪さに巻き込まれないように端で眠ると、そう言っているのかもしれない。
(でも、だったら別々の方が安心できると思うんだけど……)
フィリエルもリオンと一緒に眠ることに異論はない。むしろ嬉しい。
だが、これはちょっと、申し訳なさすぎる。
「だ、だったら、わたしが端っこで眠るので、陛下が真ん中で眠ったらどうですか?」
「いや、俺が端で眠るからフィリエルはいつも通り眠ってくれ」
(え~……)
お風呂に入ってガウン姿でやって来た夫は、意地でもフィリエルのベッドの端っこを使いたいらしい。
部屋に帰れとも言えないので、フィリエルは渋々リオンの要望を許可することにした。
(なんかこれ、わたしが陛下を端っこに追いやったみたいに見えないかしら? まあ、こんなこと、ポリーたち以外誰も知らないんだけど)
ポリーたちは部屋の準備を整えると早々に退出している。
彼女たちも、リオンが他人が部屋にいるのを嫌がることを知っているからだ。
ポリーたちもリオンの謎行動には首を傾げていたが、フィリエルと同じベッドを使うことには大賛成のようで、ぐっと親指を立てて去って行った。
さすがに今朝のようにブランケットを羽織っただけで眠りにつくと風邪をひくだろうから、布団だけは使ってくださいとお願いする。
リオンは最初それも渋ったが、フィリエルが譲らないとわかると掛布団を共有することは了承してくれた。
おやすみなさいと挨拶をして互いに横になるも、フィリエルは落ち着かなくてちらりとリオンを見やる。
(ほんとに端っこで寝てる……)
あんなに端で寝て、落っこちないのが逆にすごい。
しかし、端っこだと眠れるというのは本当だったようだ。
しばらくすると、リオンはすやすやと気持ちよさそうな寝息を立てはじめた。
(わたし、陛下のことをそれほど知っているわけじゃないけど……過去六年で、これが一番の謎かもしれないわ)
フィリエルは夫の寝顔を見ながら、うーん、と首をひねった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます