第5話マニュアル
私は三度、羽鶴警察署に向い刑事の言われた通りに受け付けに行った。
「あのう、妻を殺しました。自首します」
受け付けの男性職員は、
「既に、本警察署に届け出をされた事件でしょうか?」
「はい」
「では、少々お待ちを。その間にこの用紙に必要事項をご記入下さい」
私は、用紙に記入してパイプ椅子に座った。
15分程で名前が呼ばれた。
「先崎様、では9番の自首窓口へお向かい下さい」
よし、私はやっと逮捕される。
長かった。警察署もマニュアル化が進み、ここまで来ると、私は悪いことをしたのか?と疑問を持つ。否、私は妻を殺めたのだ。
9番窓口のきれいなお姉さんに、
「あのう、自首をしに来ました。逮捕して下さい」
お姉さんは、
「何の事件でしょうか?」
「今朝、妻を殺したのです」
「お名前は?」
「先崎純也です」
「お調べします。少々お待ち下さい」
「お願いします」
お姉さんはコンピューターを操作して言った。
「先崎様ですね。本件は、既に受理されています。ですが自首は受け付けられません」
「は?何で」
「あなたが奥様を殺害された証拠がありませんので、証拠を持参の上、5番窓口へお向かい下さい」
と、お姉さんはニコリとした。
「ちょ、ちょっとお待ちなさい。私は午前中5番窓口へ行きましたよ!事件は受理されたのですよ」
「お気持ちは分かりますが、マニュアルなので」
私は、公園でタバコを吸っていた。 結局、私は逮捕されるのを諦めた。
何がマニュアルだ!
喉が渇いたので、コンビニへ向かった。私は麦茶を買った。
「ようこそ、ヨンクスへ。麦茶1点ですね。揚げたての唐揚げはいかがでしょうか?」
「麦茶だけでいい」
「フランクフルトはいかがでしょうか?」
「だから、麦茶だけでいい」
「プライドポテトは……」
バキッ!
私は男性店員の顔面を殴った。店員は鼻血を流した。
「麦茶だけでいい」
終
超マニュアル警察署 羽弦トリス @September-0919
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