強い想い。
なぜか先輩を直視できなくなっていた。
いざ意識してしまうと以前のように話すことすら難しい。
顔を見ると心臓の鼓動が高鳴り、話す声は震えて、頬は真っ赤に染め上がる。
恋とは恐ろしい。
今までそんな経験がなかったせいか、自分ではどうもうまく抑えることができない。
いっそのこと気持ちを伝えてしまった方が楽になるのではないか。
そう思ったけど、実際にそうすることはできなかった。
恥ずかしさももちろんあったけど、何より怖かった。この関係が壊れてしまうのではないかと。
もし断られてしまったらどうしよう。拒絶されてしまったらどうしよう。
気まずくなって一緒にいられなくなるくらいなら、気持ちを押し込めてでも今のままの関係がいい。そう、思っていた。
そんな矢先、先輩が事故で亡くなった。
突然の出来事だった。
不思議とあまり涙は出なかった。ただ、心にぽっかりと穴が開いたような虚無感が全身を覆うような感覚だった。
最初はしばらく放心状態のまま抜け殻のように過ごしていた。
それから徐々に現実を実感していくにつれて、悲しさと後悔と寂しさが急激に私の心を蝕んだ。
もう会えなくなるなんて考えもしなかった。このままずっと楽しくて幸せな日々が続くと思っていた。こんなことになるならちゃんと気持ちを伝えていればよかった。
今さら想ったところでもう遅い。もう先輩はいないんだ。
だけどもしも、もしも神様というものが本当にいるのであれば、どうかお願いします。
もう一度だけ、ほんの少しでもかまいません。
どうか先輩に、会わせてください――。
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