移ろう心。

 私はあれから先輩のことが気になり始めていた。

 姿を見つけては用もないのに話しかけ、とりあえず自分の好きなことについてたくさん話した。


 先輩は私のことを変な子のように扱うことはなく、普通に話を聞いてくれた。

 避けられることも特になかった。


『なにそれ、意味わかんない』


 それからしばらくそんな日々が続いていくと、先輩はたまに笑うようになった。

 今までそんな表情を見たことがなかったから、なんだか少し嬉しかった。


『なんかいいな、こういうの』


 そう呟いた先輩の表情は、今までで一番優しくて、温かさを感じた。

 この時先輩の瞳には、私がどんな風に映っていたのだろう。

 そんなことも、時折考えるようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る