彼女の道。

「えっと、とりあえず――」


 それから俺は今までの俺と彼女のことと、今この状況について説明することにした。

 昔はよく一緒にいたこと。数年前に彼女が亡くなったこと。そして今。


「そういうことですか、なるほど。こっちの私はもういないんですね。そうですか……」


「ああ、まぁそうなるかな……。って、え? こっちの私?」


「はい、私はこことは別の世界線から来たので」


「あー、なるほど……」


 とは言ってみたが……、どういうことだ。

 ていうか何? 別の世界線? 訳が分からん。


 そんなやり取りをしながら、そういえば彼女は昔からこんな感じだったなぁとしみじみ思い出していた。


「ほら、昔話したじゃないですか。パラレルワールドの話、覚えてますか?」


「そういえばそんな話もしたなぁ」


「無数に分岐したそれぞれちょっとずつ違う世界、それがパラレルワールドです」


「で、お前はそのパラレルワールドってとこから来たってことなの?」


「その通りですっ」


 えっへん、と誇らしげに胸を張る姿は小さな子供のようでちょっと可愛らしい。


「どうやって?」


「神様にお願いしました」


「へー。神様すごいな」


「はい、さすが神様ですね」


「…………。ごめんちょっと何言ってるかわからない」


 流石に現実味のない話過ぎて脳の処理が追い付いていないようだ。

 というかそもそもなんで彼女はわざわざ別の世界にまで来て俺に会いに来たのだろうか。

 俺のことを知っているということは彼女のいた世界にも俺は存在していたはずだ。


「まぁなんでもいいじゃないですか」


 俺の思考を遮るように彼女が口を開いた。


「私は私の道を進むためにここに来たんですから」


 そう言って優しく微笑んだ彼女の表情は、どこか少しだけ、寂しそうだった。

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