想う度に。

 私は昔、交通事故に遭った。

 私は重症まま意識不明で眠り続けていたらしい。


 その時、近くには彼もいた。どうやら彼は記憶喪失になってしまったようだ。

 幸い二人とも生きてた。本当に良かった。


 私は意識だけが戻り、身体はほとんど言うことを聞かない。

 声を出すことすらままならない。できるのは少し瞼を開けることくらい。


 そうしてどのくらいの月日が経っただろう。

 彼は今、どこで何をしているのだろうか。

 新しい記憶に囲まれて幸せな人生を歩んでいるのだろうか。

 だとしたら少し寂しい。


 それならそれでもいい。だけど――。


「……ぁ……ぃょ……」


 彼に会いたい。

 次第に想いは、強まるばかりだった。

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