迫る時間。
その後も俺たちは、毎日顔を合わせては何かしらをしてその日その日を過ごしていった。
日が進むごとにだんだんお互いの距離は縮まっていった。
なのになぜだか遠ざかっていくようにも感じる。
それは多分、無意識に気づいていたから。
二人で一緒の時間を過ごせる時間は、もうそんなに長くはないということに。
◆
祭りを二日後に控えた今日。
この日も俺たちは砂浜で待ち合わせをしていた。
いつもどうり二人で海を見つめて、時折会話をしながら静かな時間を過ごす。
「もう少しで、キミともお別れなんだね」
不意にそんなことを言う彼女。
「うん、そうだね。祭りが終わったら帰らなきゃいけないし」
違う。そうじゃない。彼女はそんなことを言っているわけじゃない。
だけど、それをすんなり受け入れられるほど、今の俺には心の余裕がない。
俺はまだ彼女に自分の気持ちを伝えていない。
五年前のあの日からずっと、胸の奥にしまったまま。
もう一度チャンスがあったらと、そんな未練たらしいことを考えていた。
だけど、いざ彼女に再開してみるとどうしてもその勇気が出ない。
彼女の返事を聞くのが少し怖いというのはもちろんだが、それよりも後のことを考えてしまうと急に切なくなってくる。
「でも、せっかく会えたんだから、お祭り楽しもうね」
そんな彼女の作る笑顔に、どことなく陰りを感じた。
◆
この日は、帰ってから夕食と風呂を済ませるとすぐに布団に横になった。
気が付けば彼女のことを考えてしまう。
うまく言い表せないが、頭の中がごちゃごちゃしていて、胸がもやもやする。
このまま彼女との時間を過ごしたとして、最後はどうなっているのか。
なんとなく察しはついていた。
だとしたら、もうそれほど時間はない。
あの頃伝えられなかったことを、彼女に伝えたい。
たとえこの先にどんな結末が待ってようと、それだけは伝えておきたい。
決して悔いの残らないように。
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