芽生え。

『――今日も見てるの?』


『――うん。だって、きれいだから』


『――でも、そんなに毎日見てたら飽きちゃわない?』


『――全然。キミは海、好き?』


『――どうだろ。考えたことないな。でも、嫌いではないかな』


『――そっか』


 彼女はいつも一人だった。

 ただじっと海を見つめていた。

 そんな彼女の姿を、俺はときどき見かけていた。


 それから気づけば彼女と俺はよく話すようになっていた。

 なんの当たり障りもないようなごくごく普通の会話だが、彼女と会話をしている時間はすごくかけがえなないものに感じた。


 このときは確実に、俺は彼女に惚れていたんだ。

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