なんか勝手に増えたらしい
とりあえず暫く様子見を行った。
今の所ぐうの音も出ないくらい素晴らしい快適な生活を送れている。
どうしよう。
そう思ったのだが、とりあえず俺は提案をしてみようと思い、春と夏を呼んで話し合ってみようということになった。
『何か心変わりでもあったのですか?』
『駄目です』
「あまりにも拒否過ぎないか?」
我ながら二人は少々頑固なのでは?と思う。ここから出ようと提案しただけなのに。というかそもそも、ダンジョンからみんなを連れて出ることは出来るのだろうか?
気になるところではあるが、とりあえずこの二人の同意くらいは得てもいいだろう。
『このダンジョンの管理を父上がするのだとてっきり⋯⋯』
「いやいや!そんなつもりはないぞ?俺は普通に生活をする為だったんだけど、ちょっと色々あったせいでここからしばらく出れないっていう中、春と出会ったんだ」
『そうだったのですね⋯⋯。では父上の意向を汲みまして、作戦変更します』
「ごめんごめん。ちょっと今更ながらなんだけどさ?」
『『⋯⋯?』』
「二人とも随分喋るのが上手くなったよね?こうして今もこう⋯⋯なんていうの?やり取りが早いし」
『父上と会話を試みるにはこのやり方が一番早いのだと学びました』
『お父様と仲良くなる為にはこれが一番かと』
(そんなに俺と仲良くなる必要があるのだろうか?)
「俺と仲良くなる必要があるのか?」
『『⋯⋯え?』』
「⋯⋯え?」
三人は全員首を傾げて困惑。
『もう父上は私達の家族同然です!』
『父上が一番です!』
(ヤバイ、こう見ると滅茶苦茶健気じゃん⋯⋯!)
毎日必死にご飯を用意してくれて、至り尽くせりだと思ったら、父親の為に一生懸命なただの子供じゃないか。
⋯⋯え?こんな子どもたちを置いて、俺は一人で行動するの?
どうしよう。無理じゃん。
白狼は悩んだ末に、諦めて今後の方針を変えることにした。
「分かった。ひとまず俺の認識が間違っていた事を理解した。二人に理解して欲しいのはいくつかあるんだけど、まずはここに定住するつもりは全くない」
『『はい!』』
「次に無闇やたらに人間を殺してほしくはない。これは色々あるんだけど⋯⋯攻撃されたら勿論遠慮は必要ないけど、様子見をして欲しいというのが本音かな」
『『父上の仰せのままに!』』
「あと、俺は絶対って訳じゃないから、そこの所頼むよ?俺は絶対ではない。みんなの命あってのコロニーなんだから」
『『はいっ!』』
(本当に分かってるのかな?)
なんか盲信が凄いような⋯⋯。
「当分の間やる事は⋯⋯」
白狼がそう言いかけた時、ウインドウが出てくる。
[ミッション達成!]
[ダンジョンに居続けて生存せよ!を達成しました。ペナルティーを解除し外に出ることが可能になりました]
「おっ、マジで?」
『『⋯⋯?』』
「目標変更だ」
白狼はやっとかと深呼吸し、腰に手を当てて上を指差す。
「目標──このダンジョンから脱出、並びに新たな住処を見つけ⋯⋯⋯⋯」
白狼の言葉を遮り、壁が砕ける音がこの場を制する。
「⋯⋯え?何?」
『夏様〜!言われた通り⋯⋯あっ、父上!』
白狼の顔を見るなり働き蟻の1匹はすぐに頭を下げるが、白狼にそんなことはしなくていいとあしらわれる。
「それより、その上に乗ってるゴブリンは?」
『こ、こちらはアレです⋯⋯夏様、言ってもいいのでしょうか?』
『もちろん、私が今言ったことだから』
夏の許可を得ると、働き蟻が頭に乗っているゴブリン三体白狼の前に並べる。
『こ、こちら三匹の下等生物⋯⋯ゴブリン達のリーダーが並んでおります!どうぞお受け取り下さいませ!』
(待て待て、一体みんなは俺に隠れて何をしてんだ?)
『父上ご安心ください。私達は真っ白な事しかやっておりません』
(感情を読めるのがこうも強すぎる効力を発揮するとは⋯⋯)
「悪いが説明してもらえるか?俺には何がなんだかさっぱりだぞ?」
白狼の問いに、春が答える。
『こちらはこの階層の中で君臨していたゴブリンたちのリーダーでございます。私達の下層を侵略されないように最初に調教した者たちでして、父上のお力を使用するかは分かりませんが、ひとまず私の一声で何時でも彼らを葬り去ることができますので、御安心を』
(うん、全く安心なんか出来ないよね)
なんて物騒な話なんだ⋯⋯と通常なら思うんだけど、このダンジョン内⋯⋯まぁそもそもな話この異世界の荒れた環境下で暮らす為にはこれくらいの感覚は持っていないとまずいよな。
いかんいかん。自分の故郷感覚で話を聞いていたらまずいところだった。みんなの危機感に安心安心。
「そっか、安全の為にある程度話を聞いてくれるようにしてくれたんだよね?」
『はい!』
コールセンターのお姉さんのような爽やかな返事が返ってきたのだが、ゴブリン達が会話を聞いていたのか、「はっ?」みたいな表情で白狼をチラッと見たのを当人は見てしまった。
「なんかコブリンさんたちすげぇ引き攣ってるけど⋯⋯?」
『気のせいでございます』
「春⋯⋯大丈夫だよね?俺圧政なんて嫌だよ?」
『はいっ!問題は一切ありません!』
(あれ?なんかオペレーションのお姉さんが信用できなくなってきたぞ?全く安心できねぇんだが!?)
「な、なぁ⋯⋯ゴブリンさんたち」
『グケッ!グケケケケ!』
(うん、全く何を言ってるのか理解できない)
「えー⋯⋯⋯⋯」
白狼が言い淀んでいると両隣いる働き蟻達が軽く脇腹を小突く。
(そんなに急かさなくても⋯⋯)
『ケケケ!ケグケッ!ケケケ!』
『どうやらゴブリンたちも困っているようです』
『グケッグケッグケッグケッケケケケ』
『食料と定住できる場所を探しているようです』
「ねぇ、大丈夫?本当にそう言ってる?」
(明らかにゴブリン君たちの顔が悲しそうだよ?)
『はい、ゴブリンたちが労働力を対価に配下となって生活をともにしたいそうなんです!』
「本当?」
『本当だよね?』
『ケケケ⋯⋯』
「やっぱり嫌そうだよ?」
『問題ないそうです!』
「うん、ゴブリンくんたちが可哀想になったきた!俺達だけでいいんじゃないかな?」
『ケケケ!』
『食料と家があれば十分な働きをするとのことです!』
「本当かよ⋯⋯でもまぁ、とりあえず連れて行くか」
『ケケケ⋯⋯』
(可哀想だけど、とりあえずダンジョンから早く脱出しないとな)
「ではこれより、ダンジョン脱出後、新たな住処に向けて動こう!」
(と言っても、俺は全くやることがないんだろうけど)
白狼の指示があると、働き蟻たちも動き出し、すぐに行動が始まった。
当人の白狼は何が起こるのか全く理解できず、困惑していた事に蟻側たちは誰も気付いていなかったとさ。
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