マズイぞ、ダンジョンに行けない
寝ぼけて寝てを繰り返した日々でした。
ごめんなさい。
***
唐突だが、僕はユディ。
冒険者としての歴はもう5年になるのに、未だ19歳というと若いとばかり言われる悲しき者です。
一般的には、冒険者は一定の地域に定住などせず、一定間隔で場所を変え、ダンジョンの甘い蜜を吸いながら生活するのが一般的です。
⋯⋯まぁそんな事いいですかね。
白虎さんと会ってから1ヶ月が経とうとしている。未だ僕達はお返しに行けていないのが現状。
というのも、今アロイアダンジョンは今までにないほど荒れ狂っているようで、とてもじゃないが、俺達がどうにかなるものだと思っていない。
⋯⋯この間もギルドへ向かうと大量の死人が運び込まれていた。
チラッとダイと見に行ったこともあるんだけど、ヤバかった。あれはとても俺達なんかのレベルが入って行っていい所では到底なかった。
ありゃ最低でもシルバーパーティー。
もしかしたら、50名ほどの投入でもまずいかもしれない。
正確に何が起きているのかは分からないんだが、あのダンジョンはもうおしまいかと思う。白虎さんは外に出れないということを仰っていたけど、どういうことなんだろうか?まさか魔族?
いやいや⋯⋯魔族なら邪悪な魔力を感じるはずだからそんなことはないはずだ。
白虎さんも何か理由があるはずだろう。
そんなこんなで、今とりあえず今日も──こうして着替えを終えてみんなで下水清掃の依頼へと向かう前に集合場所に向かう最中だ。
「今日も天気が良い」
冒険者をやっていると、当たり前の日々が消えていく。やっぱりこうして普通の人らしく生活するというのが如何に大事かを感じる。
「ユディおっせーぞ!」
「ごめーん!」
⋯⋯今日も頑張ろう。
あー⋯⋯早くダンジョンの状況が落ち着くといいんだけど。白虎さんに勘違いされちゃうよ。
・
・
・
「終わったな!」
「うん、今日も報告に行こうよ」
大体依頼の報酬は一人辺り150コインから200コイン。
だけどほとんど130くらいがだいたい貰える金額だと思う。
下水の清掃は誰もやりたがらないから、少し高めの金額設定にされている。
⋯⋯競争も凄いんだけどね。
その為に早い内からうちのメンバーが待機している。やはり貧民街に住む人達も参加する者が多くて、結構取り合うことも多いってメンバーがよく嘆いている。
「そういえば、最近アロイアから少し離れた森でアントがよく出るって聞いた?」
「森?やめてよ、街の周り⋯⋯ほぼ森じゃないか」
「あぁ悪い悪い。東のドラウ森林。彼処で度々変なアントが大量に湧いて出るらしい」
「どういう事?」
「人間を攻撃しないアントがいるんだって。おもろくない?」
(そんなアントいるのか?)
「いるわけ無いだろ?魔物はみんな襲ってくるじゃないか」
「その件で学者が動いてるくらいだぜ?ギルドがその報告を受けて、すぐに依頼を正式に送ったくらいなんだから」
「どうなったか知ってんの?」
「なんか確か、知り合いの先輩冒険者によると、植物を養分にする事で他への攻撃をしないっていう結論に至ったって聞いた」
「でもこちらから攻撃したら?」
「誰でもそれは攻撃し返すだろ?」
「まぁそうか」
「それでギルドも大慌てだってよ?」
「またなんで?」
「凄まじい勢いでその異常個体が増えていってるから、生態系が変わらないか心配するレベルらしい」
「そこまでか?」
「あぁ。だから、今から間引いた方がいいんじゃないかって話になってる。その討伐隊募集の貼り紙を見てさ、一瞬迷ったよ」
「どれくらい儲かるの?」
「とりあえず1ヶ月滞在で1000から1400コインだってよ?加えて追加で功績を称えられるようなことがあればまた別途で出すって」
「それは良さそうだね」
「あぁ、だから俺も迷ったんだよね。ユディに聞くまでもなく、受けたほうが良さそうかなって」
(そうだよなー。1500くらい貰えれば、俺達レベルからしたら上々だもんな)
今でも困ってるくらいだから、もう少し貰えればと思うんだけど⋯⋯。
「他のみんなはどう?俺は行っても行かなくても問題ないって感じだし、確かパウは兄弟いたろ?」
『ユディに任せるよ!』
「そっか、ダイはどう?」
「まぁ悪くないし、行ってもいい感じかなーって感じ?」
「1500くらいならいいんだけど、迷うね」
「分かるわぁー。でも一ヶ月で1500以上もらえることもしばしばあるし、すげぇ迷うね」
「まぁ⋯⋯でも色々ありそうだしな⋯⋯行っとく?」
「良さそうだね!その間にダンジョンの音沙汰がもとに戻れば、白虎さんに会えるかもだし」
「たしかに!」
「そしたら早速討伐隊に声掛けてみようか」
ユディたちはそのまま帰り道をUターンして討伐隊の参加を確定させ、再びしばらく普通の生活を送る。
討伐当日、ユディたちはある意味地獄と呼べる事態になるだなんてこの時はまだ知る由もないが。
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