初心者殺し
「おいおい⋯⋯どういう事だよ」
(殺害?人を殺せって事か?)
「おい、なんとか言えよ。殺害ってどういうことだ?」
[ミッションの更新!]
<ミッション:初めての
【Lv1〜20ダンジョンにやってくる初心者冒険者たちを殺しましょう!】
最初からいきなり
【期間残り7日23:54】
※一人も殺害を確認できなかった場合、死亡または、その時に判断します
「遊びで人を殺せってか?」
(10から20ってことは、ここは特別難しいダンジョンではないってことだな?)
拓海を庇って正解だったな。殺す事を躊躇するなんてもんは数年前に置いてきた。
「なるほど、しっかり確認しろというのはこういうことか」
(ミッションシステム⋯⋯)
最悪な物を引いたかもしれんな。
失敗時に死亡と記載がある。意図的にやらない選択肢は無いわけだ。何故なら俺に死ぬ気なんて毛頭ないし。
「だが、初心者ってところは引っかかるがな」
(前途ある冒険者たちを殺さないといけないのか。結構な事だ)
さてとりあえず、地形の把握と今の自分の戦闘力を確認しないと。
・
・
・
アロイア森林。
メディックス領の北東の位置にある巨大な大森林である。
その規模は未開拓地とも呼ばれるほどの広大な土地だと言われていて、未だ用途をどうするか領主が迷ってしまうほどだという。
メディックス領では大森林から得た様々な物品が並び、交易や取引、商人たちが集まる街でありながら、冒険者達も集まる特別な街である。
というのもこの街では初心者ダンジョンから中級者向けのダンジョンまで多種多様な物が運良く配置されているからだ。
『最近知ってる?』
メディックス領で特に冒険者たちの活動が盛んなザガンの街。そこの大通りで会話をする数人の少年たちの声が偶然聞こえる。
『なんだよ、何かあったのか?』
『最近、アロイア森林の初心者ダンジョンに、殺人鬼が頻出しているらしい』
『殺人鬼だぁ⋯⋯?今時?』
一人の声に他の数人はゲラゲラ笑っていたのだが、彼らがギルドに到着するととても笑ってはいられなくなっていた。
ギルドの中央では数人の男たちが瀕死の状態で倒れており、その光景は悲惨という言葉以外見当たらない。
『おい!ヒーラーはいないか!?』
『こっちもだ!カネならある程度までだが出せる! ヒーラーが居たらすぐに言ってくれ!』
先程までゲラゲラ笑っていた少年たちの数人の顔からは現実という色を染め、顔面蒼白になっていた。
『お、おい⋯⋯あれまじかよ』
『ごめん、ちょっとキツイかも⋯⋯』
彼らは所謂、初心者パーティー。パーティー名はまだ決まってはいないらしい。
ソロで続けていた一人一人の彼らは、酒場で出会ったことをきっかけに⋯⋯パーティーをこうして組むことになったのだ。
『なぁユディ、暫くダンジョンに潜るのは止めとかねぇか?』
それから数分が経つと、ギルドの端っこで彼らの中の一人であるダイがそう小声で耳打ちした。
『ダイの言い分は分かるけど、本当なのか?最近悪徳パーティーなんかの動きも活発だし、殺人鬼とかじゃなくて⋯⋯ただの抗争だったりしたら⋯⋯』
『ユディ、俺達は命懸けだぜ?状況を読むのも⋯⋯俺達の仕事の内だぜ?』
ダイの言葉に他のメンツもウンウン頷いている。
『うーん。分からなくはないんだけど⋯⋯』
『まぁ、それだったら俺とユディで行ってみるか?』
ダイの提案に、
『それだったら意味ないじゃん』
『なら全員で行くよ。夢見が悪いし』
と他のパーティーメンバーも苦笑い。
『まぁ、そうか。今日の清掃の換金終わった?』
『うん』
ダイが聞くとパーティーメンバーの一人、ライオットが袋に入っているコインをメンバーに見せている。
『幾らだった?』
『まぁ700コインくらい』
『一人180コインくらいしかならないか』
***
『結局来ちまった⋯⋯』
彼らが来たのは、アロイア大森林にあるこの辺の冒険者ならば最初に来る初心者ダンジョン、アロイアダンジョン。
スライムやアントなどの初心者向けの魔物が多くがここに一通り揃っており、誰もがやってくるとても人気のあるダンジョンである。
かくいう彼らも例外ではない。
ここでゴブリンのレア素材を落とす事を狙って、毎日ダンジョンに潜っては⋯⋯ゴブリンを討伐して日銭を稼いでいる。
現在は第3層。ここはスライムがメインの階層。全部で20階層に及ぶ。
初心者の為に作ったと言っても過言ではないこのダンジョン。未だに発生原因が分かってはいない。
『とりあえずこのまま下に降りるか?』
『まぁ⋯⋯そうだな』
ユディの問いに頷くダイ。
そのままメンバーを引き連れて下へ。
『特に殺人鬼がいる感じなんてしないけどなぁー』
『やめとけ、そういう時が一番良くねぇときなんだから』
『まっ、そうか!』
そうして彼らは下の階層⋯⋯ゴブリン達がいる10階層まで降りていった。
これから殺人鬼と殺人鬼がいるのを知らずに。
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