ミッション更新

 そこは謎の洞窟内。


 暗闇に包まれたこの中で、低い何かを破る音と共に⋯⋯白狼が光の発光と同時ドスンと現れ、地面に思い切りぶつけた。


 「いった!!!」


 あまりに痛かったのか、白狼はそこからしばらく蹲ったまま「ひぃひぃふぅ⋯⋯」と死んだように深呼吸をして時間経過による回復を計った。



***



 「やっと持ち直した。ふざけんなよ?あの高さから脱力した状態で落下は死ぬだろ?普通」


 (てかここ何処なんだ?でたよ、またおんなじ流れか?)


 立ち上がった白狼は土埃が付いた服を手で払い、松明に火をつける。


 デジャヴ感を感じながらも松明に火をつけて周囲を照らし様子を見た。


 「洞窟っぽいな⋯⋯てことは、ここは別の場所と考えて良さそうだ」


 (あっちはなんか洞窟というよりも、砂場みたいな感じだったな。あれは何だったんだろうか)


 「まぁいいや、さて⋯⋯」


 そこで白狼は先程のやり取りを思い出し、ウインドウの存在を呼んでみることにした。


 「おい!いきなり地震を起こしたと思ったら、こんな変なところに連れてきて⋯⋯一体どういうつもりだ!? 俺に何をさせたいっつーんだよ!」

 

 返事はない。だが、その数秒後。


 (⋯⋯おん?)


 ウインドウが白狼の前に飛び出すように出てくる。


 そこには先程出たアナウンスの履歴のようなものが残っていた。


 「えーなになに?」


 書かれているメッセージを読み通した白狼は、信じられないという様子で途切れ途切れに叫んだ。


 「ハァァァァァ!? なんだこれ!?」




 [スキル?,クラス:運命の放浪者を継承しました]


 [世界"アルトネ"に存在するレベルシステム、並びにレベルアップによる攻撃力などの能力値を"全て"失います]


 [代わりに新たにステータスシステム、運命粒デスティニーパーティクルを獲得しました]


 [ミッションシステムに変更します]


 [全ての力は所有者に帰属されます]




 「⋯⋯おい、ふざけんなって!レベルアップ出来ねぇってカス以下だろ!?ここじゃあ!」


 (しかもなんだって? ミッション?ステータス?なんだよそれ)


 「やべぇ、拓海が口酸っぱくステータスがどうのって言ってたんだよな。やべ、あんま話を聞いてなかったことが悔やまれる」


 白狼はラノベを始めとしたアニメ、ゲームの類いは若者の中では珍しく知識としては薄すぎた。 中学では地下格闘技場で金になるからと戦わされたり、暫くしたら変なヤクザたちに絡まれて依頼を頼まれたりと、厄介な事ばかりで時間を消費していたからだ。


 彼には色々なことが足りていない。


 女も、年頃のような若い会話も、遠慮気味な拓海以外の友達もいない。


 頭の中で浮かぶ知識は異世界ではなんの路線も活かせず、白狼は頭が痛かった。

 

 こめかみを指先で揉む白狼は、小刻みに頷いて現状をダルそうに呟き出す。


 「まぁ⋯⋯分かるぞ。嘆いていても、解決なんてしないのは」


 (昔だってそうだ。いきなり連れて行かれたときも、泣き喚いて大人達に泣きついた時も、誰も助けてくれなかった)


 その時、深呼吸と共に瞳を閉じると、白狼の瞳は抑制が掛かる。

 一気に瞳が座り、仕事モードに切り替わったかのように。


 「ふぅ⋯⋯」


 (まずは、色々この状況を打破しないといけない。整理しよう)



 ・レベルシステムによる力は全て破棄。


 ・代わりに貰ったのは拓海の言っていたステータスシステムが導入されたのと、運命粒デスティニーパーティクルとかいう謎単語。


 ・それからミッションシステム?とかいう制度の情報。



 ⋯⋯おん。まるで意味がわからん。


 「まぁ、要するステータスが導入され、運命粒デスティニーパーティクルという謎能力?のようなものが一旦あると」


 これの使い方はまるで分からないが、これは一旦後だろうな。


 「さて、あとは当面の食事と現在地⋯⋯」


 (いや、というか俺、そもそもちゃんと地理を把握してないんだから、場所なんて最悪どうでもいいのか。余裕ないんだし)


 「よし、一先ずこの洞窟から出るとするか⋯⋯」


 ピコン。


 と、動き出そうとする白狼と同時に、通知音とウインドウが白狼の目下辺りに出現した。


 「⋯⋯⋯⋯なんだよ、これ」


 ウインドウを見た白狼の表情は、何処か青ざめていて、思わず冷や汗を垂らしていた。


 そこに書かれていたのは⋯⋯。
























 [ミッションの更新!]


 <ミッション:初めての殺害・・>

 

 【Lv1〜20ダンジョンにやってくる初心者冒険者たちを殺しましょう!】

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