9、絶対に襲いかかりたくない転生者ゴブリンと、それはプライドが許さない残念女騎士の不毛な攻防
「グゲギャアアーーーッ!(女騎士、エロいんじゃああーーッ!)」
「グギャアアアーーーッ!(おっぱいぷるんぷるんで、俺に包帯替えさせるんじゃねぇーッ!)」
「ガギャアアアーーーッ!(襲うぞコラーッ!)」 いや嘘ですごめんなさい、俺は負けないんだからな!?
森の奧で、一匹のゴブリンが荒ぶってしまう。むろん、転生者ゴブリンであった。
「はぁっ、はぁっ、ゲギャアッ!」
しゃオラっ! とばかりに槍を振るえば、鹿型の魔物が横たわる。この程度の魔物ならば、ゴブリンの身ながらもはや槍一本で事足りた。
彼は慣れた手つきで解体を始めるのである。
「ゲギャア(んじゃあ、解体して持っていきますかね。ゴブリンの躰は小さいからあんまり一度に運べないのが難点だよな……)」
とは言え魔物であるから力自体はそれなりにあった。女一人を攫うなどはワケないほどには。
そうして解体した獲物を持って洞窟へと戻ると、
「ゲギャアー(よっしゃ、ただいまーっとぉ)」――ま、言葉は通じないけどな。
「――あ、」
「グギャアっ!?」
女騎士のシルヴィアが毛皮の布団を外して胸を丸出しにしていたではないか。
もう何度も見ているのに彼は慌てて顔を逸らす。シルヴィアにはそれがだんだん……、
――貴方が私の躰に興味を持っていないことはないことはもう分かっていますよ。何せ、あ……、あんなに股間を膨らませていらっしゃったのですから……。
本来ならば自分の肌を触ったゴブリンの股間が膨らんでいれば、嫌悪感や恐怖を抱いて当然だ。しかし彼がその性欲を我慢して自分を甲斐甲斐しく世話をしてくれることを想えば、
――ゴブリンなのに年下の初心な男の子の反応のようにも想えて来ますね。――ゴブリンなのに。
大事なことだから二回言った。
シルヴィアお嬢様は拗らせはじめていた。――はじめっからからも知れないが。
「グギャアッ!(おまっ、なんでっ! 俺が襲いかからないのを良いことに、無防備になってんじゃねぇよ! 俺ゴブリン、女襲う、だぞ!? 後俺の中身は人間だからな!? グギャアアアッ!)」
「どうかしましたか? まさか私の魅力に抗えなくなってきましたか?(ワクワク)」
「ゲギャッ!(なんかワクテカしてるっぽいのは気のせいだよなぁ!? それでって言うかおっぱい仕舞えーっ!)」
はぁっ、はぁっ、と息を荒ぶらせるゴブリンであったが、シルヴィアは婀娜っぽい視線を寄越してくる。
まるで年下の初心な少年のよう。
その考えに気が付いてしまった――気が付いてはいけなかった――お嬢様は、怒濤の攻勢に出るのである。
「あぁー、そう言えば、私、なんだか汗っぽいですね。汗を拭きたいですねー、何せ乙女ですから」チラッチラッ。
「ゲギャ……?」――だから何言ってるのか分からねぇけど、ロクなことじゃねぇ気がする……。
シルヴィアお嬢様はチラチラとゴブリンの方に視線をやりつつ、おっぱい丸出しの上半身を曝すと躰を拭う仕草を魅せる。
チラッチラッ🖤
――くそぉッ、誘惑してんのかこの女騎士はぁっ!
――ふふっ、腰布が盛り上がってますね🖤 やはり興味がないワケではなく、必死で我慢しておられる……何というか、熱が入ってしまいます。いえ、決してゴブリンに抱かれたいワケではありませんが。「あぁー、汗を拭きたいのですがー?」
彼はシルヴィアが何かを要求しているらしいことが分かった。だからその意図をくみ取る為には丸出しのおっぱいを見てもセーフなのである。
――……って、まさかこの女騎士、汗を拭けっているんじゃあ……。
まさかと思って布を持って汗を拭くジェスチャーをすれば、それっと、ズビシっと指を指された。
はしたないですよ、お嬢様。
――あー、マジかよー、この女騎士、俺に汗を拭けってか? ……たぶん貴族なんだよな? 使用人にやらせてるから、恥ずかしくないってか? 俺は使用人じゃあなくて女の敵のゴブリンだぞ? ――痴女か、この女。
お嬢様痴女認定。
ゴブリンはそう思ったのだと言う。
◇◇◇
「あっ、ぅんっ……」
「ゲギャア……(変な声出すんじゃねぇよ!)」――襲うぞ! ……いや襲わないけど!
包帯と湿布を外して濡れた布でシルヴィアお嬢様のお肌を拭いた。騎士として筋肉はついていたが、男とは違う柔らかで良い匂いのする女の肌である。
「ゲギャ……」――ぐぅうッ、こいつは、やべぇぜぇ……
「ふふっ」――そんなに股間を膨らませて、それほどまでに魅力的な私が魅力的なのですね。ふふっ。
引き締まってはいても出るところは出ている女の肉体だ。しかもゴブリンの膨らんだ箇所を見て淡く微笑みを浮かべている。
――痴女め、この痴女め……。ってか、良いのか? ええのんか? ……いや駄目だよなぁ……。
ゴブリンの本能でも人間の理性だから襲わない。
そうであったが今は理由が少し異なってきている。
――この女、絶対に貴族だろ? ぶっちゃけこの世界の人間のスタンダードを知らないから絶対とは言えないんだけど、この美貌と所作で平民だったらこの世界の文化とか洗練されすぎだから。
あのゴブリンの物置部屋に置かれた装備や、時折連れてこられる女たち、殺された男たちを見れば彼女が上澄みであることが良く分かる。
――こうして助かったんだから動けるようになったら出て行くだろ? そこでもしも俺がヤっちまってたらこの女騎士さんの待遇は悪いに決まってるし、俺だって、たとえ彼女が止めたとしても、問答無用でぶっ殺されるんじゃね? すげぇ勢いで探しにくんじゃね? そもそもこの洞窟の場所も彼女にはバレるだろうし……。
手を出したらヤバい!
今はゴブリンの本能に負けない、と言うだけではなく、保身のために絶対に手は出さないぞと決めていた。
――手を出しちゃ駄目だ、手を出しちゃ駄目だ。たとえ今拭いているおっぱいがすっげぇ柔らかくて変な声を出されていたとしても! ……乳首も硬くなってきてんだよなぁ……。後、おっぱいの裏を拭くと、おっぱいが重いことが良く分かるんだよなぁ……。
おっぱいおっぱい!
おっぱいのゲシュタルト崩壊だ。
ゴブリンの目も心なしかおっぱいのカタチになっていた。
――ってか、背中は俺じゃないと拭けないとして、おっぱいは自分で拭けるんじゃあ……ああ、デカいからですかそうですか。……ホントかなぁ?
疑問を覚えつつも耐え難きを耐え柔らかきを拭き、
「ゲギャアっ!」――ぜはぁっ! ふっ、拭き終わったぞ、どうだぁ! ……腰布、濡れちゃってるよ……。俺、良く我慢できてるなぁ……。
「ゲギャッ!」――下は無理だからな! そっちは流石に自分でやってくれ! お願いだからッ!
ちなみにトイレは隣に壷を置いていた。
気絶しているうちに漏らされなくって本当に良かった。
「もう、いけずですね。仕方がありません、下は自分で拭きましょう」――……って、あれ? 私は彼に魅力を感じて欲しいからであって、別に拭いてもらいたかったワケでは……あれ? あれれ?
ゴブリンだけではなく、シルヴィアの方も、気持ちに変化があるようなのだった。
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