8、絶対に襲いかかりたくないゴブリンと許せない女騎士

 ――はぁー……、女騎士、ぷるんぷるんおっぱいエロいわー……。はぁ……。


 一匹のゴブリンがごそごそと蠢いていた。ナニをシているかは敢えて言うまい。


 ――まあ兎に角、言葉は通じないけど食べてくれて良かったなぁ……ふぅ(意味深)。


 転生者ゴブリンである彼は、ホブラックゴブリンの魔の手からシルヴィアを救い出し、彼女の介抱をしていた。が、そこは理性があるとは言ってもゴブリンである。

 転生者の理性を持ってしてもゴブリンの本能には抗い難かった。

 だからこそこうして事ある度に自家発電に勤しみ、狩りをし、走り込みをして発散させていたのであったが。


「ゲギャア」――ってか、やっぱゴブリンの精力、性欲ってハンパねぇわ。これだけヤってもあの人としばらく一緒にいるとすぐムラムラしてくんだもん……はぁ、ふぅ(意味深)。――扠、そろそろ戻ろうかな。




「あ」――帰って来ました。やはり何故か頬が痩けていて……、どうしてこっちを見ないのですかッ!? 貴方ゴブリンでしょう? ちゃんと付いているのですかっ!?


 ――なんだろう……、なんかすっげぇ睨まれてる気がするんだけど……。ああ、やっぱり俺がゴブリンだから、料理は食べても油断はしないぞってことか? 俺、悪いゴブリンじゃないよ?


 ゲギャア……、と笑って見せようとしても、水瓶で優しい笑顔になっているか確認してみてからは笑わないことにした。だって邪悪なゴブリン貌だもの。


 ――……んで、そろそろ包帯を替えた方が良いんだけど……、おっぱいぷるんぷるんだしもう起きてるんだよなー……。いやいや寝ている間にじっくり見たいとか不可抗力で触りたいとかじゃねぇし? ホントだし? ……まあ、頑張ってみるか。


 と、彼は包帯と薬を取ってくると、おもむろに女騎士に近づいてゆく。


「むっ」――とうとう私を襲いに来たのですか? そうでしょうそうでしょう、やはりゴブリンが私の魅力に勝てる筈がなかったのですね。ただ私は王子様に助けられ、王子様に貞操を捧げる貴族子女の身分。流石に貴方に股を開くわけには参りませんが、……お、おっぱい一揉み……いえっ、二揉みくらいならば許してあげることとしましょう!


 ……ドキドキ。

 と、シルヴィアは期待――身構えていたのだったが、


「ゲギャア(俺、悪いゴブリンじゃないよ。これ、良く効く薬草で作った湿布だから、それを張って包帯を巻き直したいんだけど……、お、おっぱいとか見えたり触ったりしちゃいそうだから、自分で出来る? 出来るよな?)」


 ちなみに包帯は、以前の巣穴の物置部屋から綺麗なものを失敬していた。


「――え?」恐る恐る湿布らしきものや包帯を見せ、何か伝えようとするゴブリンに、シルヴィアは戸惑い、がっかり――拍子抜けした。


 ――薬草のようなものもありますし、これで作った湿布だと……凄いですね、このゴブリン……え?


 とまで思って、シルヴィアはようやく気が付くのである。


 ――……真逆とは思いますが、私を助けてくださったのはゴブリン……? 魅力的な私を前にしても、私の魅力に魅了されずに襲いかかってこないほどの理性があるなら……この包帯も?


 ドキッ☆ 私の王子様はゴブリン?


「ッッッッッ!」


 ねぇ、どんな気持ち? 今どんな気持ち?

 と訊けば、


『くっ、殺せ……』


 と返って来たに違いないだろう。


 ――いえいえいえいえ、真逆まさか流石に……え?


 女騎士シルヴィアを転生者ゴブリンの優しさが襲う!


 ――そんな……、私の王子様がゴブリンだっただなんて……。


 がっくり。


「ゲッ、ゲギャア……?(ど、どうしたんだ? ぽんぽん(お腹)痛いのか?)」

「はっ、あはははは……、もしかしなくても私を心配してくださってるのですよね……? うぅっ……」

「ゲギャア……(いやマジでどうしたんだよ。お姉さん、情緒不安定?)」――ま、まあ、こんな状況じゃあ仕方がないとは思うけど……。

「ゲギャ(兎に角、包帯と湿布を替えよう)」――後、そろそろ俺の股間の封印が解けそうでヤバいから、自分で替えてくれると助かるんだけど……。

「あ、ああ、包帯と湿布を替えるのですね……」


 彼の言いたいことが分かったシルヴィアであったが、


 ――ですが、もしも本当に湿布や包帯を巻いて私を介抱してくださったのが彼だとするのならば、もう見られてる筈ですよね、色々と……。でしたら、また見られても変わらないのでは? たとえ雄でも、ゴブリンならば物の数には入りません!


 ノーカン。ゴブリンだから恥ずかしくないモン。

 それは如何な物でしょうかお嬢様。


 ――それに相変わらず私の躰に興味がなさそうで……。それは屈辱です! ……それに、皆私がホブラックゴブリンに攫われたことは知っています。と言うことは、たとえ戻っても貴族女性としては致命的……。それならば私に興味がなさそうなゴブリンを誘惑したところで……いえっ、抱かれたいワケではありません! ゴブリンの子供なんて御免です。ですが、

 ――興味なさそうなのは許せません!


「…………………」

「ゲギャア……?(どうした?)」


 首を傾げたゴブリンの前でシルヴィアお嬢様は、


「あっ、痛たたた……」

「ゲギャ!?」

「ど、どうやら痛くて自分では出来ないようです。ですので、湿布と包帯を替えるのはお願いしてもよろしいでしょうか……」

「ゲギャアっ!?(ちょぉおおいっ!?)」


 彼女は自分から毛皮の布団を外すと、

 おぱーいがぽろーんした。


「ゲギャアっ……」――うぉおっ、やっぱデッケぇっ! それに先っぽのピンクも綺麗で、エロいぃ……まっ、待てっ! 話し合おう、股間のゴブリンよ、今膨らんだらこの女騎士さんに去勢されてしまうぞ!?

「ゲッ、ギャギャゲ……」


 ――む? この反応、私に興味がないワケでは……。


「ゲギャッ!」ぷぃっ。

「なぁっ!? 顔を背けるなんてなんて失礼なゴブリンですか! 騎士団員たちも咄嗟の時には思わず私の胸を見るのですよ!? ほら、生おっぱい、生おっぱいですよ!」


 もぞもぞと動いて揺らしてみた。

 はしたないですよ、お嬢様。


「ゲギャアっ!」――うぉおっ、視界の端でぷるんぷるんしてやがるぜぇっ。駄目だ、俺のゴブリンがゴブリンしちまうぅっ。なんだよこの女騎士、まさかゴブリンに襲われないからって、プライドが刺激されたとかかぁ!? ……いや、流石にそれはないよな。だってゴブリンだぜ?


 ゴブリンそれ正解。


「くっ、うぅうっ……」――お、生おっぱいを揺らしてて自分でも恥ずかしくなってきました。ですがそれでも顔を逸らさないなんて……。


 屈辱と羞恥で顔が染まった。

 が、


「む? ……ふふっ、ふふふふっ」――その股間の膨らみ、興味がないわけではないのですね。……ですが、ゴブリンというものはそういうものなのでしょうか? ……こ、子供くらいの体格なのに、その盛り上がりは……ごくり。――はっ、私は今ナニを? 私は欲求不満を持て余した熟女令嬢ではありませんっ!

「ゲギャアっ!(だっ、だからぁ! ゴブリンには目に毒なんだってぇ! 俺がゴブリンになっちまうからぁ! こ、これ、さっさと受け取ってくれぇっ! って、どうして押し返すんだよッ! まさか俺に替えろって……)」

「あ、あ痛たたたた……、駄目です、自分では替えられません……。ですので、貴方が替えてください。最初に巻いたのも貴方なのでしょう?」

「グッ、ゲギャギャギャギャギャギャ……(ぐぬぬぬぬぬ……)」――しゃあないな……。


「ふふっ、はじめからそうしていれば良いのです」

「ゲギャア……?」――この女騎士、痴女なのか? さっきもおっぱい揺らしたりして……。いや、痛かっただけ? 本当に痛くて自分では出来なかった? 分かんねぇよぉ……。


 ゴブリンは苦悩した。

 だが、


「ゲギャ……(分かった。だけど色々見ちゃったり触っちゃったりしても不可抗力だからな? ゴブリンのゴブリンを潰したりちょん切ったり、首絞めたりしないでくれよ?)」

「むっ、何か言われのない疑いを持たれているような気がします……」

「ゲギャ……(――はぁ)」

「今、溜め息吐きませんでした? ――アッ🖤」

「ゲギャアッ!(色っぽい声を出すんじゃねぇよ!)」


 ゴブリンは、裡なるゴブリンといっぱい戦いながら、シルヴィアの湿布を替え、包帯を巻き直した。


 ――はぁっ、はぁっ、ぜぇーっ、ぜぇーっ。やった、やりきったぞ……。


「お、お疲れ様でした……。ですがどうして何度も外に行かれたのでしょうか……?」


 彼女は汗もかいていて、むしろとても良い匂いがして、温かくて柔らかくて大きかった。そうとだけ言っておくことにするのである。

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